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2024年、スローニュースはこんなスクープを出してきました!PFAS汚染と健康問題編【年末特集③】

2024年の調査報道の振り返り。3回目は深刻な問題になっている「PFAS汚染」をめぐる記事と、医療や健康問題に関する記事をご紹介します。

【内部文書入手】7万人市民の飲み水を汚した「犯人」は誰か?航空自衛隊が封印した「岐阜基地のPFAS汚染」

岐阜県各務原市で、飲み水に発がん性が指摘される有機フッ素化合物のPFOS・PFOAが高濃度で含まれていたことが昨年、明らかに。市民から不安の声が上がるなか、汚染源と疑われる航空自衛隊・岐阜基地で、基地内の井戸水から目標値を超えるPFASが検出されていたことが、独自に入手した内部資料から新たに判明しました。一般には公表されておらず、求められている厚生労働省への報告も行われていませんでした。(記事はこちらから)

封印された極秘資料入手!「デュポン・ファイル」が明かす地下水汚染・大気汚染・体内汚染の実態【大型スクープ連載開始】

静岡市の化学メーカー、三井・ケマーズフロロプロダクツ(当時は三井・デュポンフロロケミカル)の工場ではPFASが長年使われ、密かに行われた従業員の血液検査で極めて高い濃度が検出していました。その過程で、ジャーナリストの諸永裕司氏は工場内部の膨大な極秘データを手に入れたのです。分量は実に50ギガバイト(5万ファイル分)。社内での通達文書や汚染物質のデータをまとめたExcelファイル、デュポン本社や社員同士で交わされたメール、そして画像や動画などが含まれています。

半年近くをかけて内容を詳細に分析し、関係者の証言で裏付けをとった結果、「地下水汚染」「大気汚染」といった深刻な汚染を引き起こしていた実態や、今も工場周辺で続く汚染の原因も浮かびあがりました。1カ月に及ぶ集中連載でお届けしました。(記事はこちらから)

【スクープ静岡発】化学工場の下請け作業員は「PFOAに殺された」のか…夫の死を目の当たりした妻の苦悩

「デュポン・ファイル」の連載から半年、諸永氏は工場内でPFASの一種、PFOAを取り扱っていた、孫請けの「協力会社」の家族や工場関係者との接触についに成功。すると、次々とがんで亡くなっている実態が判明しました。PFOAとの因果関係はないのか。「デュポン・ファイル第5部 下請け作業員編」として、家族の証言や残された記録の内容を集中連載しました。(記事はこちらから)

あの自衛隊基地の専用水道から高濃度PFASを検出、隊員にペットボトル配布の異例事態に!防衛省が全国の基地で水質検査へ

話題になったドラマ「VIVANT」で、自衛隊の秘密部隊として描かれた「別班」。そのモデルとなった部隊の隊員を養成する施設があるとされるのが、東京・多摩地区にある陸上自衛隊・小平駐屯地です。そこで、「専用水道」と呼ばれる大型の飲用井戸から、なんと目標値の5倍を超える260ナノグラムのPFAS(有機フッ化化合物の総称)が検出されていたことがわかりました。

基地では、隊員の安全を考慮して地下水からの取水を止め、一時はペットボトルを配布するなど異例の措置を取ったといいます。(記事はこちらから)

汚染源がなかったはずの岡山と200キロ離れた工場周辺で特殊なPFASを検出! 「偶然とは考えづらい」汚染が拡散したのか

汚染源がないはずの場所が、PFOA(PFASの一種である有機フッ素化合物)に汚染されたのはなぜなのか。これまで汚染源は、PFOAを含む泡消火剤を使っていた基地やフッ素樹脂などを製造していた工場と考えられてきました。それがいま、まったくの死角だった汚染の「拡散ルート」が浮かびつつあります。(記事はこちらから)

無呼吸症などの医療機器、素材の「欠陥」は日本で見つかっていた…重要文書を入手【フィリップス元社員が衝撃の証言】

日本で900万人が悩んでいるとされる「睡眠時無呼吸症候群」。その治療に使うCPAP(シーパップ)装置など、米フィリップスが製造した呼吸器系の医療機器が2021年6月、発がん作用などの深刻な健康被害を患者にもたらす恐れがあるとしてリコール(自主回収)となり、世界で550万台もの回収が続いています。

スローニュースでこの問題の報道を始めてから、ちょうど1年。フィリップス・ジャパン(東京都港区)で働いていた元社員から今回、驚くべき証言が飛び出しました。リコール発表より6年も前の2015年ごろ、防音材の劣化が原因と疑われる「黒い粉」が発生しているのを現場で確認し、「これはもっと起きるぞ」と直感。本社や製造元の米フィリップスとも情報を共有していた、というのです。(記事はこちらから)

※一連の報道は「国際文化会館ジャーナリズム大賞」の特別賞ファイナリストに選出されました。

【スクープ】命を救う人工呼吸器でトラブル100件以上か!窒息状態で救急搬送されたケースも…フィリップス・ジャパンの複数の元社員が証言

患者の命をつなぐはずの人工呼吸器。しかしその機器の不具合が原因で、患者が相次いで窒息状態に陥っていたことが明らかになった。

問題の人工呼吸器は、米フィリップスが製造したものだ。呼吸器系の別の種類の医療機器も合わせ、世界で550万台もの自主回収が進んでいる。ところが、交換器具として新たに配られた「改修器」が突然、十分な空気を送らなくなり、患者が窒息状態に陥るトラブルが主に日本で多発していたのだ。フィリップス・ジャパン(東京都港区)の複数の元社員の証言や関係資料からわかった。

自発呼吸が困難な難病患者も多く使う人工呼吸器で、いつ起きるかもわからない不測の事態だ。多くの患者が窒息のリスクにさらされ、米国では「重篤な健康被害や死亡を引き起こす恐れがある」として危険度が最も高いクラスⅠに分類された。だが、米国よりはるかに多くのトラブルが起きていた日本では、重篤な健康被害につながるおそれは「ない」として、報道発表のないクラスⅡの扱いとなっていた。

患者の安全を優先する米国の対応とは対照的に、日本における医療機器規制がこれほどまでに緩く、企業に甘いのは、なぜなのか。その内幕を上下2回の連載でお伝えする。(記事はこちらから)

【内部資料入手】院内関係者が証言する品川美容外科が「危険なエクソソームがん治療」にのめり込んだ理由

《がんの「痛み」やその他の症状でお悩みの方へ:モニター追加募集のご案内》

新たにスローニュースが入手した2023年3月17日付けの品川美容外科の職員向けの「お知らせ文」は、そんなタイトルで始まっていました。(記事はこちらから)

「まるで動物園の檻」精神科病院の隔離室の映像を入手。のどを詰まらせた男性が気づかれることなく亡くなった経緯が明らかに

日本の精神科病院では隔離・身体拘束の措置が頻繁に取られています。患者が亡くなる事例は後を絶たず、兵庫県明石市の精神科病院「明石土山病院」でも悲劇が起きてしまいました。約2年にわたって隔離室生活を強いられてきた初田竹重さん(当時50歳)は、朝食のパンをのどに詰まらせて死亡。その5日前、両親に電話をかけ「このままでは足が立たなくなる」と漏らし、50歳の若さで嚥下機能が低下していた可能性が浮上しています。

関係者から隔離室の映像を独自に入手。わずか3畳ほどの部屋には寝具と洋式トイレがあり、トイレットペーパーが無造作に転がっているだけ。食事は小さな窓から差し入れ。竹重さんの父は「まるで動物園の檻のような部屋」と怒りをにじませています。(記事はこちらから)

統合失調症の姉を家に閉じ込めて20年以上 治療を拒んだ高学歴両親、説得し続けた弟がカメラでありのままを記録

よく分からないことをわめきながら家中を歩き回る、自室で大声を出しひとりごとを言う。そんな家族がいたらどうしらいいのか──。

映画『どうすればよかったか?』は、統合失調症の女性と、その家族との20年以上にわたる日々を記録したドキュメンタリーです。藤野知明監督は女性の弟。「我が家は統合失調症の対応としては失敗例でした」と、自問しながらカメラを回し続けた藤野監督。
そして、精神障害当事者や家族を支援する団体にも映画への受け止めを聞きました。(記事はこちらから)

「不安な人にこそ読んでほしい」 鈴木エイトが傍聴した『HPVワクチン被害』裁判レポート

「接種後に重篤な副反応を引き起こし、薬害として集団訴訟が提起されている危険なワクチン」

そんな認識をいまだに持つ人も少なくない子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)。ですが、HPVワクチンについては国内外で有効性と安全性を担保するエビデンスが積み上がっています。国内での大規模な疫学調査によって接種群と非接種群に有意差(症状のオッズ比で有意に1を超えるもの)がなかったことも確認されているのです。

「HPVワクチン薬害訴訟」を継続的に取材しているジャーナリスト・鈴木エイト氏がHPVワクチンと「薬害訴訟」についてレポートしました。(記事はこちらから)

開頭した患者を覚醒させ、がんを切除。「究極の手術」からドラマは始まる!

6月17日に発売になったノンフィクション作家下山進の新作『がん征服』は、「覚醒下手術」という想像を絶する手術のシーンからいきなり始まります。全身麻酔をして開頭手術をした後に、脳がむきだしになった患者を覚醒させる。電極で刺激をして腫瘍がとれるぎりぎりの位置を確かめるためです。「膠芽腫(こうがしゅ)」というもっとも予後の悪いがんを主人公にして、標準療法以降のがんの治療開発史を描いたこの本を下山進はいかに書きしか、全4回のうちの第1回。(記事はこちらから)

加熱式たばこでハームリダクション…二者択一を迫らない依存症との向き合い方

薬物やアルコール、たばこへの依存に対して、私たちの社会はどのように向き合えばいいのでしょうか──。

解決策の1つになり得るのが「ハームリダクション」。一定の害があるものを完全に断つのではなく、害をなるべく減らしながら上手に付き合っていこうとする考え方です。

スローニュースが11月20日に開催したオンラインセミナーでは、このハームリダクションをテーマに、経済学者の安田洋祐さん、医療記者の岩永直子さん、ジャーナリストの堀潤さんがそれぞれの立場から議論を展開。経済学、医療政策、ジャーナリズムという異なる視点が交差する中で、依存症や社会的孤立といった社会課題の解決のための新たな道筋が見えてきました。(記事はこちらから)

↓↓前回までの年末特集記事はこちらから↓↓
2024年、スローニュースはこんなスクープを出してきました!

【年末特集①】政治とカネ&選挙のデータ編:https://slownews.com/n/nddf7e153d491

【年末特集②】内部告発と捜査当局の問題編:https://slownews.com/n/n671175883582