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「災害前線報道ハンドブック」と災害関連リポート

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大災害は突然にやってきます。その時、何を取材するべきでしょうか。記者たちに的確な指示が出せるでしょうか。ありそうで存在していなかった「災害時の取材マニュアル」ジャーナリストのプレ…
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2024年3月の記事一覧

災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑦施設の損壊の「本当の原因」を検証する

スローニュース 熊田安伸 前回、第4章の復興フェイズに移るとお伝えしましたが、検証フェイズでまだやるべき話が残っていました。地震や津波で被災した施設や建造物がなぜ壊れたのか、その「本当の原因」を調べることも重要です。今回も実例をもとに解説します。 なぜ地震のたびに天井は落下するのか災害で被災した施設は、なぜ壊れたのか。いやいや、あれだけ大きな揺れや津波に襲われたら被害を受けて当然、などと思っていないでしょうか。しかしそこで思考停止に陥ってしまうと、本当に検証すべき大切なこ

能登半島地震のニュースは読者に届いていたのか、求められていた情報は何だったのか、徹底分析してみると……

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 被災地で求められる情報とは? ——能登半島地震から1ヶ月、東京との読まれ方の違いを分析考えてみれば当たり前ではあるのですが、実際に突き付けられると、やはりそこまで考えていなかったという驚きのデータ分析を目にしました。特にメディア関係者は必読ではないでしょう

避難所暮らしで気づいた「寄り添う」より「役割を与える」ことの大切さ。カタリバはなぜ「居場所」を作るのか

能登半島地震で、被災した子ども一人ひとりのニーズに合わせて支援の品を送り届ける「MY Boxプロジェクト」という取り組みを実現したNPO法人「カタリバ」。国や自治体でもできていなかった取り組みだ。 カタリバの主要な活動の一つが、「子どもの居場所を作ること」。今回はその活動の意義と、原点となった「被災地での気づき」について、代表の今村久美さんに聞いた。(2回連載その2) 聞き手:スローニュース 熊田安伸 被災地に子どもの「居場所」をカタリバは能登半島地震の発災後、1月3日

「支援のミスマッチ」「ボランティア批判」…能登半島で支援を続けるNPOが見た課題と希望

いま、災害の被災地ではNPOの果たす役割が年々大きくなっている。子どもの支援に取り組んでいる認定NPO法人「カタリバ」もその一つだ。能登半島地震でも発災直後から、現地で被災した子どもたちの居場所づくりなどの支援活動を行ってきた。 特に注目されるのが、子どもたち一人ひとりのニーズに合わせて支援の品を送り届ける「MY Boxプロジェクト」という取り組みだ。今回の被災地でも「支援のミスマッチ」が起きる中で、行政でさえ実現が難しいミッションをなぜ実現することができたのか。被災地支援

【東日本大震災13年】メディアはどのように伝えているか、注目のコンテンツを紹介・後編

東日本大震災の発生から13年目。メディア各社はどのように報じているのか。後編は「定番」の発信方法によるものを中心に取り上げます。 スローニュース 熊田安伸 「定点観測」コンテンツ震災直後と現在の被災地を比較できる「定点観測」の記事、これは各社ともそれぞれ映像・画像を蓄積し、重要なコンテンツとして節目ごとに発信しています。 朝日新聞の発信はシンプルなフォトスライダー(写真の中央部にあるバーを左右に動かすことで変化がみられる)です。きれいに復興したように見えるところでも、当

【東日本大震災13年】メディアはどのように伝えているか、注目のコンテンツを紹介・前編

あの日から13年、ことしも3月11日がやってきました。 年月の経過とともに伝えるべきことは変化し、メディアも何をどう発信すべきかを模索しています。一方で、「伝えることができない類の悲しみ」(ルポライター・三浦英之氏)にも、変わらず向き合っていかなければなりません。 13年目の報道で、注目したものをまとめました。 スローニュース 熊田安伸 被災者の実情を伝える調査報道など被災した中小企業を救うために創設されたのが「グループ補助金」です。その名の通り、企業がグループで再建

災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑥クロノロジーと「報告書」の重要性

スローニュース 熊田安伸 今回は、発災直後から作っておくべき「クロノロジー」の重要性と、のちの検証に大きな役割を果たす「報告書」について、実例を交えて解説します。 必ず作っておくべき「クロノロ」災害が発生したその瞬間から作っておくべきものが「クロノロジー」です。略して「クロノロ」と呼ばれています。時系列でその災害についてのすべての事象を記録していくもので、例えば、 いつどこでどこでどんな被害が確認されたか 国や自治体は被災地の住民にいつどんな警告を発したか 災害対応

【ルポ能登半島地震】「ボランティアには本当に助かった」復旧進まぬ新潟「忘れられた被災地」からの報告

スローニュース 熊田安伸 その地区に足を踏み入れた瞬間、ぐらっと景色全体が歪んでいるように見えた。 道路には、いまも液状化で噴き出した土砂のあとが残っている。滑っている場所も残ってはいるが、歩くと乾いた土埃が舞い上がる。地震の発生から1カ月以上たったというのに、大きく傾いた電柱もそこかしこに見られる。 写真でも一見わかりにくいのだが、家々の塀はことごとく大きく傾いている。いまにも塀が内側に倒れ込みそうなこの家は、玄関に板が打ち付けられている。 まるで遠近法の描画を間違