災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑥クロノロジーと「報告書」の重要性
スローニュース 熊田安伸
今回は、発災直後から作っておくべき「クロノロジー」の重要性と、のちの検証に大きな役割を果たす「報告書」について、実例を交えて解説します。
必ず作っておくべき「クロノロ」
災害が発生したその瞬間から作っておくべきものが「クロノロジー」です。略して「クロノロ」と呼ばれています。時系列でその災害についてのすべての事象を記録していくもので、例えば、
いつどこでどこでどんな被害が確認されたか
国や自治体は被災地の住民にいつどんな警告を発したか
災害対応のためにいつどんな態勢が取られたのか
被災地の住民からいつどんな声が上がっていたか
被災地の住民はいつどのように避難したか
救助はいつどこで始まったか
支援のためにいつ何がどう動いたか
こうした事柄をとにかく何でも書き留めておくのです。できれば「分野別」「地域(自治体)別」でまとめておきたいところですが、最初はとにかく何でも「時間」「場所」「事象」を記録しておくことが肝要です。
2015年、鹿児島県の口永良部島で新岳が噴火し、初の噴火警戒レベル5となって、全住民約140人に避難勧告が出されました。
その時のクロノロが手元に残っていたので、以下に一部を転記してみます。
一刻を争う全島避難の緊迫感が伝わってくるようですね。気になるのは、いったん、避難勧告を出しておいて、わずか5分後に避難指示に切り替えて広報しているところ。ここでどんな判断があったのか。また、住民には何時の段階でどう情報が伝わっていたのかなど、後に検証するのに役立ちます。
私はNHK時代、大災害の被災地にチームで応援に行くことが数多くありましたが、メンバーのうち必ず1人を「クロノロ班」に任命して、とにかく情報をまとめさせていました。それほど役に立つし、必須のものなのです。