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災害前線報道ハンドブック

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大災害は突然にやってきます。その時、何を取材するべきでしょうか。記者たちに的確な指示が出せるでしょうか。ありそうで存在していなかった「災害時の取材マニュアル」ジャーナリストのプレ… もっと読む
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災害前線報道ハンドブック【第1章】発災フェイズ⑥テレビ局の現場リポート、それでいいの?

スローニュース 熊田安伸 今回はテレビ関係者に向けての提言的なコラムです。なので、読み飛ばしていただいて結構、ただ教訓になる話だと思ったので、書いてみました。 災害が起きると現場から記者が中継リポートをやりますよね。本当にそれ、いいんでしょうか。演出上の問題というより、もっと根本的な「記者は何をするべきか」というエピソードから考えます。 まずは私の大失敗を告白しますここで私がやらかした大失敗を一つご披露します。先にも書いた新潟県中越地震の際に、デスクとして初めて取材指揮

災害前線報道ハンドブック【第1章】発災フェイズ⑤災害の「顔」に気づけるか

歴史に残る事件・事故・災害は、必ず「新しい顔」を持って現れます。逆にいえば、従来とは違う新たな課題を社会に突き付けるからこそ、歴史に残るのかもしれません。早い段階にそれに気づけるかどうかで、その後の取材が大きく変わってきます。今回はその実例と、気づくための手法について述べます。 誰も何が起きているか分かっていない2004年の新潟県中越地震は、10月23日の本震の後も、マグニチュード6を超える余震が長く続いたのが特徴でした。それが従来の災害とは違う、思わぬ事態をもたらすことに

災害前線報道ハンドブック【第1章】発災フェイズ④犠牲者の情報特定と避難指示が出ている場所での取材

スローニュース 熊田安伸 災害の犠牲者についての情報をいち早く特定するためにはどこから情報を入手したらいいでしょうか。また、避難指示などが出た場所での取材の可否はどう判断したらいいでしょうか、今回はそれらについて説明します。 死者数の確定では「病院→警察」が重要いよいよ警察の情報が役に立つタイミングがやってきました。それは「死者の数を確定する取材」です。 以下の図は、内閣府防災情報のホームページにある資料で、災害の際の死者数報告の流れを示しています。

災害前線報道ハンドブック【第1章】発災フェイズ③限られた取材リソースをどこに配置すべきか

スローニュース 熊田安伸 「発災フェイズ」の続きです。災害発生の直後に記者やカメラマンなどをどこに送ればいいのか、とっさに判断ができるでしょうか。事前にシミュレーションしておくことが肝要です。最小限で最大の効果を生む方法をまとめました。 最初動で限られた記者をどこに配置するか潤沢な取材リソースがあれば、可能な限り多くの場所に記者を配置したいものですが、地方局などではそうもいきません。ここでは動かせる記者が5人いたと想定します。 結論から言うと、私なら……

災害前線報道ハンドブック【第1章】発災フェイズ②SNSの分析もいまや必須

スローニュース 熊田安伸 大災害が発生した直後に何をするべきなのか。「発災フェイズ」の取材の続きです。実は誰にも分らない「いま何が起きているのが」。それを割り出すために有効な手法、SNSでの分析について説明します。 SNSの分析は「コタツ取材」ではない今や、マッピングと並んで重要なのが、SNSの分析です。消防や行政にも届いていない被災者の声に耳を傾けることは、現場の実情を知るために今や不可欠です。よく「マスコミはネットで情報とるのではなく、自分で現場に行けよ」なんてネット

災害前線報道ハンドブック【第1章】発災フェイズ①マッピングで“空白地帯”を割り出せ

スローニュース 熊田安伸 まずは「発災フェイズ」の取材について有効な手法をまとめます。大災害が発生した直後に何をするべきなのか。「いま起きているのがどんな災害なのか」は、誰も教えてくれません。それをつかむ方法です。 災害の規模が大きいほど、実は「どこで被害が出ているか」が分からない地震の最大震度は「7」です。日本の観測史上、震度7を記録したのはたったの5回。実はそのいずれでも共通していたのが、「どこで大きな被害が発生しているか、当初はわからなかった」ということなのです。当

災害前線報道ハンドブック【はじめに】大災害発生!その時、あなたは何を取材しますか

スローニュース 熊田安伸 災害前線報道の「ハンドブック」始めます大地震、台風、豪雨、豪雪、そして火山噴火。この日本という国では決して避けられないものです。だからこそ、多くの人の命と財産を守るために必要な情報を提供するのは、本来その役割を担う行政だけでなく、メディアにとっても重要なことです。 とはいえ、大災害に遭遇する確率が、記者人生で何回あるでしょうか。いきなり襲ってきても、何をどう取材したらいいのか、記者たちにどう指示を出したらいいのか、わからないという人も多いのではな