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「災害前線報道ハンドブック」と災害関連リポート

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大災害は突然にやってきます。その時、何を取材するべきでしょうか。記者たちに的確な指示が出せるでしょうか。ありそうで存在していなかった「災害時の取材マニュアル」ジャーナリストのプレ…
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地震の予知ではありません!「南海トラフ地震臨時情報」の正しい意味が伝わっていない

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら 「丁寧に説明しないと地震予知と聞こえる」 存在や意味が伝わっていない「南海トラフ地震臨時情報」8月8日、宮崎県で最大震度6弱の強い揺れを観測したことをうけて、気象庁は南海トラフ地震の「巨大地震注意」情報を発表しました。 この「南海トラフ地震臨時情報」の運用

「半数以上の市民が自宅に戻れず」「猛暑の中で汗だくの車中泊」能登半島の被災者の過酷な現状を伝える

今年の元日に発生した能登半島地震。現地の状況を伝える報道によって、半年以上が経過しているというのに、被災地の過酷な実情が見えてきています。今回はそうした報道をまとめてみました。 能登半島地震から半年 ビッグデータからみる能登半島地震の避難状況7月24日に発表されるや、すぐにいくつかのメディアが取り上げたのでご覧になった方もいるでしょう。LINEヤフーによる位置情報のビッグデータ分析レポートです。 一番に目を引いたのはやはり「輪島市・珠洲市居住推定者の自宅復帰率」でしょう。

【フォトルポ】そこには今も言葉を失う景色があった…何も知らない自分が情けなくて、何度も立ち尽くした

「現地で食事をとれないと思うので、今日明日の食糧を調達しましょう」 その言葉に、はっとさせられた。 そうだ、半年たったとはいえ、被災地に向かうのだ。輪島や珠洲では、まだ水もままならない場所もあり、コンビニだって、食堂だって、ほとんど営業再開できていない。自分たちの食糧ぐらい調達していかないと。現地で迷惑をかけてしまうことにだってなりかねない。 そこまで思いがいたらなかった。自分の想像力のなさを恥じた――。 たったの1泊2日で撮った写真は数百枚にのぼった。なぜ撮ったのか、

能登半島地震の発生から半年、「未来の災害で孤立する場所はどこだ?」を可視化した中日新聞の報道

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 あなたの地元は大丈夫? 災害時の孤立予想3659集落マップ 愛知、岐阜、三重、静岡、長野、福井、滋賀、石川、富山県能登半島地震の発生から7月1日で半年です。カレンダージャーナリズムというなかれ、この前後の時期に各メディアがどんな発信するのかと注目して見てい

ようやくできた仮設住宅が大雨が降ったら最大3メートル浸水する危険があると指摘するショッキングなNHKの調査

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 仮設住宅の42%に浸水や土砂災害のリスク 能登半島地震 被災地能登半島地震の被災地からは、半年たった今も「仮設住宅に入れない」「抽選から外れた」「避難所での生活は辛い」という声が聞こえてきます。みなし仮設住宅を含めても、まだ十分に供給できていない状態です。

災害前線報道ハンドブック【第4章】復興フェイズ⑤復旧・復興工事に携わる業者の調べ方

スローニュース 熊田安伸 前回は復旧・復興事業をめぐって談合が起きていないか、公共工事の入札をどう調べるかといった手法をご紹介しました。今回は復旧・復興のための工事に携わる業者をより具体的に詳しく調べる方法をご紹介します。 入札調書では分からない、関係業者を引きずり出す方法公共工事については前回説明した通り、自治体のホームページなどに入札情報などが掲載されます。しかし、受注した企業が下請けに出した場合、その先をたどることはできません。 そんな時に非常に役に立つツールがあ

災害前線報道ハンドブック【第4章】復興フェイズ④必ず起きてしまう談合の調べ方

スローニュース 熊田安伸 巨額の予算が投入される復興事業では、必ずといっていいほど談合事件が起きてしまいます。どのように取材すればいいのか、当局の情報に頼ることなく報じることはできるのか。そしてどんな視点で報じるといいのかなどについて解説します。 なぜ復興事業では不正が起きやすいのか大きな災害の後には、巨額の復興特別予算が組まれます。多くが壊れた公共施設の復旧や、地域の暮らしの復興おために使われますが、過去の大災害では必ずといっていいほど、復興事業・復旧工事をめぐる不正が

災害前線報道ハンドブック【第4章】復興フェイズ③復興予算の調べ方

スローニュース 熊田安伸 前回は東日本大震災の復興予算問題に気づくまでの取材経緯をご紹介しました。今回はいよいよ具体的な調べ方とその結果について解説します。 役に立ったのは「事業仕分け」のための道具復興予算の分析は、以前ならかなり難しかったかもしれません。それが可能になったのは、当時の民主党政権が「事業仕分け」を始めたからでした。 「事業仕分け」こと行政事業レビューは、国の約5000の事業すべてについて各府省が点検・見直しを行うもので、予算を無駄遣いしていないか、事業が

普段は意識しない、どの川の流域で生活しているかを知ることができる「流域地図」アプリで思わぬ水害に備える

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 市区町村とは違う「自然の住所」を知っていますか?「流域」を3D地図化 5/13公開スマホ用登山アプリ「YAMAP」で知られるヤマップ社が日本全国の「流域」が簡単にわかる3Dデジタルの「YAMAP 流域地図」をリリースしました。 流域とは、地形により降った

災害前線報道ハンドブック【第4章】復興フェイズ②復興予算問題に気づくまで

スローニュース 熊田安伸 前回も紹介した通り、復興事業では「タテ割り」が必ずといっていいほど弊害として浮かび上がります。中でも大きな話題を呼んだ東日本大震災の復興予算問題は記憶に新しいところではないでしょうか。今回はその問題に気づくまでの取材の経緯をご紹介します。 当時の政権を揺るがせた復興予算問題東日本大震災が発生した翌年、2012年に放送された「NHKスペシャル シリーズ東日本大震災『追跡 復興予算19兆円』」は、増税によって賄われた復興予算が被災地とは直接的には関係

災害前線報道ハンドブック【第4章】復興フェイズ①復興の「空白地帯」を見つける

スローニュース 熊田安伸 今回から第4章「復興フェイズ」です。復興計画・復興事業のチェックは、まさに「調査報道」そのもの。拙著『記者のためのオープンデータ活用ハンドブック』とかぶるテクニックやツールも多いですが、災害報道に特化した形でご紹介していこうと思います。 復興の現場を何度も歩くと…新潟県中越地震の発生から1年が経過した2005年の小千谷市。復興予算の規模は350億円で、本来なら既にかなりの復旧工事が進んでいるはずでした。 しかし小千谷市を担当しているNHK新潟放

災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑧避難行動を検証する

スローニュース 熊田安伸 第3章「検証フェイズ」の最後は、発災時の「避難行動」の検証です。証言を集める方法と、テクノロジーを使う方法。それぞれ報道の実例とともに紹介します。 避難行動は適切におこなわれていたのか大災害での避難行動の検証は、非常に重要です。東日本大震災で特に大きな被害が出た宮城県石巻市の大川小学校や、岩手県釜石市の鵜住居地区防災センターについては、当時のいきさつを自治体や各メディアが詳しく検証してきました。 そもそもの避難計画や防災計画が適切だったかどうか

災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑦施設の損壊の「本当の原因」を検証する

スローニュース 熊田安伸 前回、第4章の復興フェイズに移るとお伝えしましたが、検証フェイズでまだやるべき話が残っていました。地震や津波で被災した施設や建造物がなぜ壊れたのか、その「本当の原因」を調べることも重要です。今回も実例をもとに解説します。 なぜ地震のたびに天井は落下するのか災害で被災した施設は、なぜ壊れたのか。いやいや、あれだけ大きな揺れや津波に襲われたら被害を受けて当然、などと思っていないでしょうか。しかしそこで思考停止に陥ってしまうと、本当に検証すべき大切なこ

能登半島地震のニュースは読者に届いていたのか、求められていた情報は何だったのか、徹底分析してみると……

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 被災地で求められる情報とは? ——能登半島地震から1ヶ月、東京との読まれ方の違いを分析考えてみれば当たり前ではあるのですが、実際に突き付けられると、やはりそこまで考えていなかったという驚きのデータ分析を目にしました。特にメディア関係者は必読ではないでしょう