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諸永裕司のPFASウオッチ

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「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)。調査報道スクープや最新の自治体や企業の動き、取材の経過などをこちらで発信していきます。(取材:諸永裕司)
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#PFAS汚染

「弾薬庫で泡消火剤を使用したことはない」はウソだった! 汚染の調査を求める東広島市と広島県の異例の要望に米軍は応じるのか

前回の記事では広島県東広島市の井戸水汚染の現状を明らかにした。汚染域に隣接する米軍・川上弾薬庫は大量の泡消火剤を処分していたが、関係はあるのか。行政が情報公開請求に応じない背景を明らかにする。 米軍が回答を全面撤回「泡消火剤を使用したことがない」はウソだった!9月6日、PFAS汚染をめぐる米軍からの二度目の回答が公表された。東広島市と広島県による再三の要請にようやく応えた。 米軍は、周辺できわめて高濃度のPFAS汚染が見つかった川上弾薬庫の過去の記録を調べたところ、以下の

東広島市で飲まれていた井戸水はなぜ汚染されたのか? 「大量の泡消火剤を処分した」米軍・川上弾薬庫との関係は?

環境省が公表していない「目標値超えの汚染」とは環境省は11月末、全国の水道水に含まれるPFAS濃度についての調査報告をまとめ、「現時点で目標値を超えるところはない」と発表した。これを受けて、あたかもPFAS汚染は収束したかのようにも受け取れる報道が相次いだ。 しかし、環境省が「集計中」という理由で公表していない数字がある。飲用に使われていた井戸の濃度だ。 PFAS汚染列島のなかでこれまでにもっとも高い濃度が出たのは、広島県東広島市の米軍・川上弾薬庫から約200メートル圏内

PFAS汚染除去の特許を取得していたダイキン工業。実験に使った活性炭の製造元をたどっていくと、思わぬつながりが…これは偶然なのか

取り除き切れていない地下水汚染「空気で答えをだす会社」 そんなキャッチコピーを掲げるダイキン工業の淀川製作所(大阪府摂津市)。 PFOAの使用をやめて10年以上たついまも、工場周辺の地下水から高濃度で検出されている。地下水の汚染を取り除くのは、空気をきれいにするようにはいかないようだ。 同社はこれまで、工場内の井戸から地下水を汲み上げてPFOAを除去しようと、試行錯誤を重ねてきた。そのひとつとして「活性炭による汚染処理方法」の特許も取っていた。 内容に触れる前に、工場

四日市・キオクシア工場の排水から製造・使用が禁じられたPFOAを高濃度で検出…京大の調査で判明

三重県四日市市にあるキオクシア(旧東芝)の半導体工場から川や海へ放出されている水から、製造・使用が禁じられているPFOAが国の指針値を超える高濃度で検出されたことがわかった。原田浩二・京大准教授が調べた。 取材に対してキオクシアは「工場周辺の河川・海域でPFOAが検出されていることに対して、調査および対策を進めています」などと回答した。 フリーランス 諸永裕司 「PFOAはすでに使用していない」はずなのになぜ汚染がキオクシアの四日市工場は、東京ドーム約15個分にあたる敷

京都・綾部市や三重・四日市市でも、岡山や大阪と同じ「特殊なPFAS」を検出! 「同一汚染源からの可能性も」と専門家

深刻なPFAS(有機フッ素化合物の総称)による汚染が見つかった岡山県吉備中央町。汚染源となった「使用済み活性炭」から検出された「特殊な4種類のPFAS」が、かつてPFOA(PFASの一種)を製造していた大阪府摂津市にあるダイキン工業淀川製作所近くの地下水からも検出されたことは前回伝えた。 その「特殊なPFAS」が、新たに京都府綾部市や、三重県四日市市でも検出されたことが判明した。果たしてこれらはどこから持ち込まれたものなのか。その共通点とは――。 フリーランス 諸永裕司

汚染源がなかったはずの岡山と200キロ離れた工場周辺で特殊なPFASを検出! 「偶然とは考えづらい」汚染が拡散したのか

汚染源がないはずの場所が、PFOA(PFASの一種である有機フッ素化合物)に汚染されたのはなぜなのか。 これまで汚染源は、PFOAを含む泡消火剤を使っていた基地やフッ素樹脂などを製造していた工場と考えられてきた。 それがいま、まったくの死角だった汚染の「拡散ルート」が浮かびつつある。 死角だった「活性炭」という汚染拡散ルート突然のメッセージが送られてきたのは、昨年10月31日朝のことだった。 <はじめまして。私は岡山県吉備中央町で牛を飼いチーズを作って暮らしている者で

米軍・横須賀基地でPFAS汚染の原因となる泡消火剤の漏出が多発していたことが内部文書で判明!水質検査の結果は非公表に

在日米軍司令部は14日、泡消火剤についての声明を発表した。 <米国政府は在日米軍施設における全ての旧式水成膜泡消火薬剤(AFFF)の廃棄を完了しました。米国政府は(略)PFOS及びPFOAを含まない新式組成の水成膜泡消火薬剤に交換しました> ホームページには、PFOS・PFOAを含んだ泡消火剤はすでに日本国内にある処分場で焼却処分したと記されているが、記録や証拠が示されているわけではない。 むしろ、意図的な廃棄が行われてきたのではないか、という疑いは消えない。 集中し

ドイツでは米軍が基地の汚染浄化を進めていた!なぜ日本では放置されているのか…

沖縄での汚染対策は止まったまま国内で初めてPFAS(国際機関が発がん性を指摘している有機フッ素化合物)による汚染が確認された沖縄で、汚染対策の時計は8年前から止まったままだ。 この間、米軍の嘉手納基地(嘉手納町ほか)だけでなく、キャンプ・ハンセン(金武町)などの基地周辺で次々と汚染が見つかり、普天間基地(宜野湾市)では米軍が汚染水を一方的に下水道に放流する事件も起きた。 沖縄県による調査では、普天間基地や嘉手納基地の周辺など46地点のうち33地点で国の目標値を超え、普天間

トランプ氏再選でPFAS政策の行方は? 前回の任期中には飲み水の規制値を「先送り」していたが…

5日に投開票された米大統領選で、共和党のトランプ氏が大統領に返り咲くことが決まった。大幅な政策転換が進められるなかで、PFAS(国際機関が発がん性を指摘する有機フッ素化合物)対策も例外ではなさそうだ。 それが象徴的に現れるとすればEPA(米環境保護庁)の動きではないか。なぜなら、EPAは大統領直属の機関だからだ。EPA関係者と親交を重ねてきた科学者はそう指摘して、つづける。 「EPAが大統領のもとにあるのは、アメリカ大統領が米軍最高司令官の立場にあるためと言えます。もっと

衝撃の調査結果!PFASが子どもの「染色体異常」に関連する可能性を初めて指摘…信州大学が発表

環境省による「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の一環で、信州大学が興味深い研究成果を発表した。 妊娠中の母親の血液中のPFAS(有機フッ素化合物)濃度が上がると、生まれてくるこどもの染色体異常が増える傾向がある――。 染色体異常は流産を引き起こすほか、ダウン症候群の原因にもなるものだ。 エコチル調査ではさまざまな化学物質による健康への影響を調べており、PFASとの関連についての結果が明らかになるのは3例目となる。 これまでに発表されたのは「喘息」と

基地汚染の度に「通報遅れ」が繰り返される理由とは…日米協定に仕込まれた、基地に立ち入り調査させない「抜け道」

米軍が初めて横田基地外へのPFAS漏出を認めたのは10月3日。大量のPFAS汚染水が貯水池からあふれ、雨水溝から基地外へ流れ出たとされる日から34日後のことだった。 再三、指摘されてきた「通報の遅れ」がなぜ、繰り返されるのか。 基地による汚染が起きたときの対応について定めているのが、日米地位協定のもとに2015年に結ばれた環境補足協定だ。日本側の基地への立ち入りについて初めて、法的拘束力のある約束が結ばれたとして、当時の岸田文雄外相は「歴史的意義がある」と胸を張った。

公害工場からの大気汚染…静岡と同じように汚染が発覚したオランダでは、なぜこうも対応が違うのか

テフロン製品で知られる、米大手化学メーカー・デュポン(現ケマーズ)はかつて、主要な生産拠点を世界3カ所にかまえていた。 まず、米ウェストバージニア州にあるワシントン工場。製造過程で使ったPFOAを廃棄し、周辺の飲み水などに深刻な汚染を引き起こした。映画「ダーク・ウォーターズ」で描かれた舞台として知られる。 ほかに、スローニュースで報じてきた日本の清水工場(静岡市)がある。そしてもう一つが、オランダのドルドレヒト工場だ。 独自に入手したデュポンの内部文書によると、2004

化学メーカーがひた隠しにする静岡の下請け作業員の検査結果を独自入手! 米指標の43倍ものPFOA血中濃度が検出されていた【デュポン・ファイル第5部④】

化学工場でPFOAを取り扱う「危険な作業」をしていた孫請けの「協力会社」の社員らが、次々とがんで亡くなっていました。PFOAとの因果関係はないのか。集中連載4回の最終回では、化学メーカーが一切公表していない下請け作業員の血液検査の数値などを明らかにします。 フリーランス 諸永裕司 やはり白血病で亡くなった夫の上司孫請け会社の社長として40年近く、三井ケマーズフロロプロダクツ(MCF)の清水工場で働いていた夫は2年前、肺がんで亡くなった。58歳だった。 それから9カ月後の

「まさか毎日の洗濯で!?」死産と超未熟児の出産を重ねた“妊娠高血圧症”の妻が、疑わざるを得ない理由とは【デュポン・ファイル第5部③】

化学工場でPFOAを取り扱う「危険な作業」をしていた孫請けの「協力会社」の社員らが、次々とがんで亡くなっていました。PFOAとの因果関係はないのか。集中連載4回の第3回では、がんで亡くなった下請けの協力会社社長の妻にも、出産に影響するある症状が出ていたことについてお伝えします。 フリーランス 諸永裕司 顔も見られず、亡くなった娘顔を見ることのできなかった娘の墓にはいまも、折を見て足を運ぶ。 <平成4年6月1日 美有 1才> 墓石にはそう彫られているが、実際には8カ月の