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諸永裕司のPFASウオッチ

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「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)。調査報道スクープや最新の自治体や企業の動き、取材の経過などをこちらで発信していきます。(取材:諸永裕司)
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【諸永裕司のPFASウオッチ】「分からないけど、なにか数値を」と本音を漏らした座長と、新たな数値への疑念とは

「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)の最新情報を伝えているジャーナリスト、諸永裕司さんの「PFASウオッチ」。前回の記事では、食品安全委員会のもとに設けられた専門家会議「PFASワーキンググループ」がとりまとめた、PFASによる食品健康影響評価書(案)について伝えました。 そこで初めて示された「許容摂取量(耐容一日摂取量)」は、アメリカ環境保護庁(EPA)が現在提案中の値と比べると、PFOSで200倍、PFOAで666倍も大きく、欧州食品安全

【諸永裕司のPFASウオッチ】米基準案の数百倍を摂取しても「健康への影響はない」とした専門家会議、なぜ逆行する結論に?

フリーランス 諸永裕司 米基準案の200~666倍、欧州基準の60倍以上でも「影響ない」まるで世界の潮流に背を向けるような数字が示された。 体重1キロあたり20ナノグラム。 PFAS(有機フッ素化合物)の一種であるPFOSとPFOAについて、ヒトが水や食べものを通して体内に取り込んでも健康への影響がない、とする値のことだ。 食品安全委員会のもとに設けられた専門家会議「PFASワーキンググループ(WG)」は1月末、PFASによる食品健康影響評価書(案)をとりまとめ、初め

【諸永裕司のPFASウオッチ】岐阜基地問題で見えた防衛省の閉鎖体質…情報公開請求を放置し、開示まで1年超も「当たり前」

決して、汚染源と認めさせない。その意向が強くにじんでいた。 先週3回にわたって報じた、航空自衛隊・岐阜基地でのPFAS汚染をめぐる対応のことだ。 防衛省は、基地内で検出された数値の公表を拒んだうえ、各務原市が要望書に記した「土壌調査」から「土壌」の文字を削るように求めていた。市が作成した汚染等高線図もお蔵入りとなった。 土壌を調べて汚染源だと証明されれば、地下水を通じて市民の飲み水を汚した責任を問われ、浄化費用の負担も迫られる。また、さらなる地下水汚染を防ぐために土壌を

【スクープ】各務原市が用意していたPFAS汚染の「土壌調査」要請文、防衛省側が「土壌」の文字削除を求めた工作を明らかにする

フリーランス 諸永裕司 発がん性が指摘される有機フッ素化合物のPFAS。航空自衛隊・岐阜基地が、基地内の井戸水から目標値を超える値を検出しながら公表せず、国への報告もしていなかったことが独自の取材で判明した。 前回の記事では防衛省が記者会見に潜入しようとするなど、異様なまでに警戒をしていたことや、PFAS濃度ごとの分布図が握り潰された実態を明らかにしたが、それだけではなかった。汚染の原因を明らかにするために市が求めた「基地内での土壌調査」を封じ込めようとしていたのだ。

【証拠メールを公開】記者会見「潜入」を画策した防衛省と封印された『各務原市PFAS汚染マップ』

フリーランス 諸永裕司 飲み水から発がん性が指摘される有機フッ素化合物のPFOS・PFOAが高濃度で検出された岐阜県各務原市。数値を公表しなかった市の水道部長ら7人が昨年12月に処分を受けている。 前回は、その汚染源と疑われる航空自衛隊・岐阜基地でも、基地内の井戸水から目標値を超えるPFASが検出されながら公表せず、国への報告もしていなかったことを独自取材で伝えた。 今回入手した防衛省と市との間で交わされたメールによって、基地内で水質検査が行われて以来、防衛省が記者会見

【内部文書入手】7万人市民の飲み水を汚した「犯人」は誰か?航空自衛隊が封印した「岐阜基地のPFAS汚染」

フリーランス 諸永裕司 岐阜県各務原市で、飲み水に発がん性が指摘される有機フッ素化合物のPFOS・PFOAが高濃度で含まれていたことが昨年、明らかになった。 市民から不安の声が上がるなか、汚染源と疑われる航空自衛隊・岐阜基地で、基地内の井戸水から目標値を超えるPFASが検出されていたことが、独自に入手した内部資料から新たに判明した。 一般には公表されておらず、求められている厚生労働省への報告も行われていなかった。 7万人が汚染された水を飲んでいた各務原市編隊を組んだ6

【Photoルポ】鈴木萌「泡の記憶」 目に見えず、味も匂いもない。その物質はなにをしたのだろうか

目に見えず、味も、匂いもない。 初めて目撃したのはテレビのニュース映像だった。 4年前の春、大きな綿菓子のような白い泡のかたまりがふわふわと川の上を流れ、風に舞っていた。 それは、航空機の火災事故が起きたときに使う泡消火剤で、沖縄の普天間基地から誤って漏れでたものだ、とアナウンサーは言った。 揺れるように流れる白い泡はどこか現実離れしていて、怖さも恐ろしさも感じさせない。 空中を舞う泡消火剤の白い泡を目にしたとき、保育園児たちは近くでよく見かける街路樹の「トックリキ

【諸永裕司のPFASウオッチ】沖縄の渇水危機の背景に基地が原因とされるPFAS汚染、このままでは飲み水の水質に影響も

「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)の最新情報を伝えているジャーナリスト、諸永裕司さんの「PFASウオッチ」。11回目の舞台は沖縄県。いま渇水が問題になっていますが、その背景にあったのは――。 沖縄のPFAS汚染を扱ったテレビドキュメンタリーの秀作がふたつある。 「命(ぬち)ぬ水(みじ)~映し出された沖縄の50年」(琉球朝日放送) そして「水(みじ)どぅ宝」(沖縄テレビ)だ。 いずれも優れた番組に送られるギャラクシー賞(2022年度)を

【諸永裕司のPFASウオッチ】飲み水の目標値、なぜ根拠となる指標を変えるのか

「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)の最新情報を伝えているジャーナリスト、諸永裕司さんの「PFASウオッチ」。新年も注目の情報をお伝えしていきます。 新しい年のはじまりに能登半島を襲った地震では、発生から10日になるいまもライフラインの確保がままならないという。支援金を送るくらいしかできないのがもどかしい。 そして、暖をとり、情報をつなぐための電気とともに、生きるための水の重要さをあらためて思い知らされている。 その飲み水に含まれるPFA

【諸永裕司のPFASウオッチ】「規制は被害のあとにくる」汚染地域の住民と環境省の埋まらない溝 

彼女は2002年、米大手化学メーカー「3M」の工場がある米ミネソタ州に生まれた。3Mがその危険性から突然、PFOSの製造停止を宣言した2年後のことだ。そして、21歳になる2日前に生涯を閉じた。 肝細胞がんと診断されたのは15歳のときだった。彼女が通っていた高校の近くには、3Mが廃棄物を捨てたとされる場所があり、地域の14万人あまりが飲んでいた水からのちにPFASが検出された。 この高校では、2015年までの10年間で少なくとも5人の生徒ががんで亡くなった、という教師の証言

水質汚染の異常値は「隠蔽」されたのか、 岡山・吉備中央町で疑惑の関係者を直撃した

フリーランス 諸永裕司 異例の補正予算案が12月20日、岡山県吉備中央町の議会で可決された。 <特別損失 115,710(千円)> 同町では少なくとも3年あまりにわたり、きわめて高い濃度のPFOAを含んだ飲み水を522世帯(約1千人)に送っていた。発がん性のある化学物質が入った水を飲ませていたことから、町は支払われた水道代(合計1億1571万円)を住民に返すというのだ。 なぜ、前代未聞の事態は起きたのか。 元水道課長が証言した「PFOA見落とし」の経緯「PFOAとか

【スクープ】発がん性あるPFOA汚染水で健康不安が広がる岡山・吉備中央町、血中濃度の衝撃データを明らかにする

フリーランス 諸永裕司 国際機関で発がん性が認められた化学物質PFOA。岡山県吉備中央町で少なくとも3年間、PFOAに汚染された飲み水が供給されていた。その濃度は、国の暫定目標値の16~28倍だった。しかも、目標値が設けられた2020年より前は測定していないため、飲み水の汚染がいつから続いていたのかはわからない。 いったい、どれだけのPFOAを体の中に取り込んでしまったのか。 円城浄水場管内の約1000人の住民のうち27人が、11月末、京大の小泉昭夫・名誉教授と原田浩二

「ここの水は飲めません」突然の知らせが、私を不安に突き落とした……流産との関係はあるのだろうかと

祈るような思いでうつむいていると、医者が言った。 「心音が聞こえませんね」 恐れていたセリフがまた耳に響いた。3度目の流産を告げられたのだ。 東京で産んだ長男は元気なのに、自然豊かなこの町に移り住んだ後、流産を繰り返した。 3度とも妊娠初期だった。「不育症」ではとも考えたが、「理由はわからない」と医者は言った。 一家3人で東京を離れたのは、2011年の東日本大震災の直後だった。憧れていた自然の中で暮らそうと、知人のいる岡山の吉備中央町に引っ越した。人の優しさに触れ、ここ

【諸永裕司のPFASウオッチ】「悪夢」と呼ばれたかつての数値より厳しいか?注目される米当局の水質新基準

「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)の最新情報を伝えているジャーナリスト、諸永裕司さんの「PFASウオッチ」。第7回は、関係者が固唾をのんで見守っている、飲み水に含まれるPFASの新基準についてです。 どうなる米当局の打ち出す新基準このところ、毎日のようにアメリカ環境保護庁(EPA)のホームページをのぞいている。 EPAは、飲み水に含まれるPFASについての新たな基準を「2023年秋」に設けるとしているからだ。 注目度は比べようもないが、