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諸永裕司のPFASウオッチ

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「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)。調査報道スクープや最新の自治体や企業の動き、取材の経過などをこちらで発信していきます。(取材:諸永裕司)
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2024年2月の記事一覧

【諸永裕司のPFASウオッチ】「言い訳」「矛盾」議事録から浮かび上がる専門家会議の混乱ぶり

「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)の最新情報を伝えているジャーナリスト、諸永裕司さんの「PFASウオッチ」。食品安全委員会のもとに設けられた専門家会議「PFASワーキンググループ」がなぜ欧米よりも大幅に高い「許容摂取量(耐容一日摂取量)」を設定したのか。前回に続いて今回もその背景についてお伝えします。 ヒトが水を含めた食品からどれくらいまで摂取しても健康への影響はないか。 PFASの「許容摂取量(1日耐容摂取量)」を盛り込んだ評価書案をめ

【諸永裕司のPFASウオッチ】「分からないけど、なにか数値を」と本音を漏らした座長と、新たな数値への疑念とは

「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)の最新情報を伝えているジャーナリスト、諸永裕司さんの「PFASウオッチ」。前回の記事では、食品安全委員会のもとに設けられた専門家会議「PFASワーキンググループ」がとりまとめた、PFASによる食品健康影響評価書(案)について伝えました。 そこで初めて示された「許容摂取量(耐容一日摂取量)」は、アメリカ環境保護庁(EPA)が現在提案中の値と比べると、PFOSで200倍、PFOAで666倍も大きく、欧州食品安全

【諸永裕司のPFASウオッチ】米基準案の数百倍を摂取しても「健康への影響はない」とした専門家会議、なぜ逆行する結論に?

フリーランス 諸永裕司 米基準案の200~666倍、欧州基準の60倍以上でも「影響ない」まるで世界の潮流に背を向けるような数字が示された。 体重1キロあたり20ナノグラム。 PFAS(有機フッ素化合物)の一種であるPFOSとPFOAについて、ヒトが水や食べものを通して体内に取り込んでも健康への影響がない、とする値のことだ。 食品安全委員会のもとに設けられた専門家会議「PFASワーキンググループ(WG)」は1月末、PFASによる食品健康影響評価書(案)をとりまとめ、初め

【諸永裕司のPFASウオッチ】岐阜基地問題で見えた防衛省の閉鎖体質…情報公開請求を放置し、開示まで1年超も「当たり前」

決して、汚染源と認めさせない。その意向が強くにじんでいた。 先週3回にわたって報じた、航空自衛隊・岐阜基地でのPFAS汚染をめぐる対応のことだ。 防衛省は、基地内で検出された数値の公表を拒んだうえ、各務原市が要望書に記した「土壌調査」から「土壌」の文字を削るように求めていた。市が作成した汚染等高線図もお蔵入りとなった。 土壌を調べて汚染源だと証明されれば、地下水を通じて市民の飲み水を汚した責任を問われ、浄化費用の負担も迫られる。また、さらなる地下水汚染を防ぐために土壌を

【スクープ】各務原市が用意していたPFAS汚染の「土壌調査」要請文、防衛省側が「土壌」の文字削除を求めた工作を明らかにする

フリーランス 諸永裕司 発がん性が指摘される有機フッ素化合物のPFAS。航空自衛隊・岐阜基地が、基地内の井戸水から目標値を超える値を検出しながら公表せず、国への報告もしていなかったことが独自の取材で判明した。 前回の記事では防衛省が記者会見に潜入しようとするなど、異様なまでに警戒をしていたことや、PFAS濃度ごとの分布図が握り潰された実態を明らかにしたが、それだけではなかった。汚染の原因を明らかにするために市が求めた「基地内での土壌調査」を封じ込めようとしていたのだ。

【証拠メールを公開】記者会見「潜入」を画策した防衛省と封印された『各務原市PFAS汚染マップ』

フリーランス 諸永裕司 飲み水から発がん性が指摘される有機フッ素化合物のPFOS・PFOAが高濃度で検出された岐阜県各務原市。数値を公表しなかった市の水道部長ら7人が昨年12月に処分を受けている。 前回は、その汚染源と疑われる航空自衛隊・岐阜基地でも、基地内の井戸水から目標値を超えるPFASが検出されながら公表せず、国への報告もしていなかったことを独自取材で伝えた。 今回入手した防衛省と市との間で交わされたメールによって、基地内で水質検査が行われて以来、防衛省が記者会見