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「官製ファクトチェック」への懸念とフェイクニュース

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いま政府が「偽情報対策」を急いでいます。総務省は、2023年11月に「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」を設置。災害のたびに虚偽情報がSNSに流れる…
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「デモ参加で報酬」はウソか真実か!?SNS時代の虚実不明の情報に、足で挑んだ調査報道

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 「デモ参加に1万円」“サクラ募集”に数千人が殺到 報酬受け取った参加者も…若者に広まった情報はデマか本当か何が本当で何がウソなのか、にわかには分からない。デマというのは大抵、「いかにもありそうなこと」だからです。 そんな虚実が入り混じったSNSの情報が現

Facebookが放置する詐欺広告の実態を裏付ける日経の調査報道

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 「証券会社」かたる偽広告、フェイスブック上に1万件メタが運営するFacebookは詐欺広告が横行し、社会問題にまで発展しています。それでは実態はどうなのか。 日本経済新聞はメタが公開している配信済み広告のデータベースを使い、証券会社の名前を第三者がかたっ

官製ファクトチェックより国が喫緊に取り組むべきは「認知戦」対策だと強く感じさせるNHKスペシャルの調査報道

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 NHKスペシャル 調査報道新世紀 File6 中国・流出文書を追う世界中のサイバーセキュリティーに関わる組織がいまざわついている問題、それが、「i-SOON文書」です。 中国のサイバーセキュリティー企業「i-SOON」から流出したとされるその内部文書には

陰謀論者を説得することは不可能なのか?「AIとの対話で信念が揺らぐ」という研究成果

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 Durably reducing conspiracy beliefs through dialogues with AI(AIとの対話で陰謀論を永続的に減らす)ひとたび陰謀論にはまってしまうと、そこから抜け出すのは容易ではありませんよね。実は私自身、身近

「ファクトチェックを担う団体の透明性をどう確保するのか」総務省検討会の座長・宍戸教授に聞く(後編)

政府が「偽情報対策」を急いでいる。総務省の「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」は7月に中間的な結論として「とりまとめ(案)」を公表し、8月20日を締め切りとするパブリックコメントの募集中だ。 政府の動きに対しては「官製ファクトチェックにつながるのではないか」との批判も強いが、総務省検討会の座長を務める宍戸常寿・東京大学大学院法学政治学研究科教授(憲法学)はその問題をどう考えているのか。宍戸氏へのインタビュー後編は、ファクトチェックを軸に話を聞い

「官製ファクトチェックにつながる懸念」にどう答えるのか、総務省検討会の座長・宍戸教授に聞く(前編)

政府が「偽情報対策」を急いでいる。 その中心にいる総務省は、2023年11月に「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」を設置すると、毎月2回という速いペースで会合を開催。2024年7月の会合では、とりまとめ(案)を公表し、8月20日を締め切りとするパブリックコメントの募集を開始した。 災害のたびに虚偽情報がSNSに流れることなどを理由とし、偽情報対策の法制化を目指しているとみられるが、政府が言論空間に介入することについては、「政府やその意を受けた

英国全土に暴力・騒乱を巻き起こしたフェイクニュースの仕組みを検証したBBCの「ファクトチェック」

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら 【検証】 英騒乱のきっかけは……偽情報を投稿したのはどういう人たちか英イングランドの小さな町サウスポートで7月29日、ダンス教室で3人の女の子が刺されて亡くなった事件は、イギリス全土の町や都市への騒乱に広がりました。 事件直後に、犯人がイギリスに到着した亡

あえて問いかける「偽情報は民主主義に深刻な脅威を与えている」という前提への疑問

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 偽情報の社会的影響を巡って政府が偽情報対策に本格的に乗り出しています。 オンライン上のフェイクニュース対策という立場から総務省、感染症対策という観点から厚生労働省にくわえて、最近では安全保障を理由に官邸がリードし、内閣府にプロパガンダ対策などにとりくむ部

ファクトチェックの「検証手法」を検証する…公的機関のオープンソースに頼る手法の限界

日本最大のファクトチェック機関、「日本ファクトチェックセンター」(JFC)が、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)に加盟してから、この5月末でちょうど1年になる。IFCNの認証は、当初は1年ごとに更新することになっており、JFCも現在、更新審査が進行中だ。 IFCNの事情に詳しい関係者によれば、更新では、これまでのファクトチェックの内容が審査の重要なポイントになるという。 フロントラインプレス ファクトチェックに求められるポイントとはIFCNの審査基準によれば、

ファクトチェック団体をチェックする…独立性と資金の透明性は担保されているのか

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独立性は保たれるのか…「官製フェイク対策」の下請け化要請にファクトチェック団体が反発

インターネット上の偽情報・誤情報をどうするか。その対応策をめぐる官民の動きが急ピッチで進んでいる。中心となっている総務省の「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」は今月24日にファクトチェックを手掛けている民間団体から一斉に意見を聴き、今夏をめどに具体的な対応策をまとめ、公表する方針だ。 ただ、ファクトチェックの仕組みが政府主導で整えられたり、実際のファクトチェックに政府が関与したりすることには慎重であるべきだ、との意見も専門家の間で根強い。日本国

在日クルド人への反感を引き起こした投稿、実はトルコ人のなりすましだった

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「フェイクニュース法」が危ない。定義があやふやで運用する側が決めつけて投獄も…政府批判の封じ込めに利用

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 最長で禁固20年「フェイクニュース法」がニュースを脅かす、その本当の理由とは?2024年はアメリカの大統領選挙をはじめ、世界60カ国以上で国政選挙が行われる「選挙の年」だそうですね。 偽情報や誤情報への対策が叫ばれているなか、アメリカの研究機関「ニュース

フェイク対策のはずが「国家による情報空間への介入」という危険な議論に…総務省の有識者会議を注視しよう

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 フェイクニュースと偽・誤情報対策は、ニュースとコンテンツと広告に分けて検討をトンデモなく恐ろしい議論が進んでしまっているので、唖然としました。総務省の「デジタル空間における情報流通の健全性確保のあり方に関する検討会」という有識者会議のことです。 なぜそん