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在日クルド人への反感を引き起こした投稿、実はトルコ人のなりすましだった

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越境した憎悪、拡散瞬く間 在日クルド人装い、1人で180件投稿

このところ、クルド人への差別的な書き込みを妙によくSNSで見かけるようになりました。外国人が増えてくればトラブルだってあるでしょう。しかし人種の違いを理由にした、人を人とも思わないような差別はあってはならないものです。

「在日クルド人の投稿」とされた、日本人の反感を誘うような書き込みが7カ月前にあり、話題になりました。それを見て怒りや恐怖を掻き立てられた人たちが「クルド人怖い」「追い出そう」と次々と投稿。排外的な主張が拡散してしまいました。

そこで元になった書き込みを朝日新聞が調べたところ、実はクルド人を装ったトルコ人によるものだったというのです。投稿した当人が取材に応じ、少なくとも180件もの投稿をしていたと認めました。

有料記事なので詳しくは書けませんが、「ブランドウォッチ」というXの投稿を調べられるツールで分析したところ、「クルド」に言及したXの投稿は去年から事あるごとに急増。なりすまし投稿の時にも、ぐんと伸びていました。以前はここまでの誹謗中傷はなかったのに、この1年で広まって広まってしまった形です。

実際、クルド人がいる埼玉県の川口市ではどのような状況になっているのでしょうか。現場を丁寧に取材した記事をNHKが発信していました。外国人との共生には摩擦が生じることはあるでしょうし、制度面でも解決しなければ問題はあります。ただ現実としていまの状況があるのであれば、とにかく排斥するということではなく、まずはお互いのコミュニケーションを高めるにはどうすべきかを考えてはどうかと呼び掛けています。

それにしても、ヘイトの拡散に一役買っているのは、Xです。プラットフォーマーとしてヘイトの拡散に対しての責任をどう考えているのでしょうか。公共性があることを自認するならば、対応策などを含めて透明化してほしいですよね。

そして問題のなりすまし投稿をした人物に「日本人は無邪気だから何でも信じる」と言われるこの状況。こんなふうに「ちょろい」と思われるのは悔しくありませんか。「自分にはメディアリテラシーがあるから関係ない」といわず、本当に冷静に情報と向き合えているのかどうか、改めて一時の感情に任せた投稿をしていないよう、肝に銘じたいと思いました。(熊)

(朝日新聞 2024/5/1)
(NHK 2024/2/2)