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おすすめノンフィクション

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毎月掲載「気になる来月のノンフィクション」をはじめ、本を紹介した記事をこちらにまとめています。
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#ノンフィクション

ピケティ、潜入取材の手法、エリート過剰生産…9月の気になるノンフィクション

古幡 瑞穂 ノンフィクションレビューサイト『HONZ』で連載していた「これから出る本」がお引っ越ししました。本の中でも“ノンフィクション”は非常に範囲が広く、書店店頭で探すのも難しいジャンルになります。しかし、発売されている本を眺めているだけでも、今の世の中やこれからの世の中が見えてきます。9月はどんな本が発売されてくるのでしょうか。 今年はバーツラフ・シュミルの当たり年のようです。3月には『Invention and Innovation』、6月には『SIZE(サイズ

大阪社会部から傑作ノンフィクションを連続して生み出した敏腕デスクの記事に最後でひっくり返った

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 バズり記事の裏側は? ダメ出し続けたデスクの真意すごいデスクがいるものです。 ここ数年、共同通信の記者が書いた本が立て続けに話題になっています。 『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社) 『ある行旅死亡人の物語』(毎日新聞出版) が、それです。

朝ドラ『虎に翼』は調査報道がベース!『家庭裁判所物語』に描かれたまるでスタートアップばりの理想とその後

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 『家庭裁判所物語』あす4月1日から放送が始まるNHKの連続テレビ小説『虎に翼』には、ベースになった本があることをご存じでしょうか。 それがNHKの記者で解説委員の清永聡さんが著した『家庭裁判所物語』です。「物語」とありますが小説ではなく、あくまで史実に基

「世界最強の男」井上尚弥と闘い、敗れた者たちを描くノンフィクション

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。きょうのおすすめはこちら。 怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ世界最強の男と闘うということは、どういうことなのか。 世界のボクシング界を席巻する井上尚弥と戦い、負けた男たちにリングで体感した「怪物」の強さを語ってもらう。拳を交えた者にしかわからないことを聞き、最強ボクサーの姿を

イラクに残された「謎の巨大湿地帯」とそこに住む人々に挑んだ「傑作」ノンフィクション

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 『イラク水滸伝』(高野 秀行著) クルマはもちろん、馬もラクダも、そして戦車も使えない。 イラク南部の巨大な湿地帯「アフワール」は、権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込むカオスそのものの土地です。 その謎の地に、冒険ノンフィクション作家

「押せるボタンをすべて押せ」 漁船沈没の謎をつきつめる調査報道『黒い海』をなぜ書くことができたのか

ノンフィクション作家 伊澤理江 「その漁船の事故、ほとんど誰も知りませんよね? そんな事故の本をいったい誰が読むんですか?」 今から2年前,2021年5月、講談社の編集者と会ったときに言われた言葉です。「誰も知らない事故」「無名の書き手」では、書籍化に難色を示すのも無理はありません。それでも私は諦めることができませんでした。 千葉県沖での漁船沈没事故の謎を追った『黒い海 船は突然、深海へ消えた』(講談社)が話題になっています。第54回大宅壮一ノンフィクション賞、第71回

『さよなら、野口健』元マネージャーが全てを明かした前代未聞の人物ルポ

愛憎の果てにたどり着いた次世代ノンフィクションの作法「野口健との縁が切れますように」  最強の「縁切り神社」と呼び声高い京都にある安井金毘羅宮への参拝から始まる人物ノンフィクション『さよなら、野口健』。アルピニストの野口健さんの元マネージャー小林元喜さんが綴った愛憎劇を読み終えた時、自分の近くにいる恫喝上司も、ライバルのマウンティング野郎もなぜか許せる気持ちになっている…。長らく小説家を目指していた著者の小林さんが人生をかけて取り組んだノンフィクションは、いかにして完成した

分断する社会に、ノンフィクションは「人のやさしさ」に気づかせてくれた 壇蜜流 “事情マニア型” のスローニュース活用術

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 29歳でグラビアデビュー後、圧倒的な存在感で、ドラマやバラエティで活躍されてきた壇蜜さん。エッセイや小説も発表を続ける多彩な才能はどのように培われているのでしょうか。 2019年には漫画家の清野とおるさんと結婚。「互いに自立と自活をしながら、精神面でつながっている」という壇蜜さんたちは、ひとつのニュースの裏側にまで思いを巡らす事情マニアを実践されているとのこと。そこから得ら

土屋敏男さんと柳澤大輔さんが語りつくした!電波少年的ドキュメンタリーとノンフィクションの近未来

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。  日テレの名物プロデューサーとして一世を風靡し、新たな挑戦を続けている土屋敏男さん、話題になる企画・運営やバズるWEB制作を手がける「面白法人カヤック」を経営する柳澤大輔さん。二人はノンフィクションやドキュメンタリーが大好きとのこと。今回、お二人にSlowNewsを使っていただいたうえで、対談をしていただきました。 ノンフィクションを友達とシェアする価値司会 今回、我々スロ

NewsPicks副編集長・須田桃子が選ぶ「この科学ノンフィクションが面白い!」

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 現在、NewsPicks副編集長として活躍する科学ジャーナリストの須田桃子さん。新聞記者時代には世を騒然とさせた科学スキャンダルを徹底取材した『捏造の科学者 STAP細胞事件』で、第46回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞、最先端科学から科学技術政策のあり方まで、サイエンス分野を幅広く取材し続ける記者の一人です。そんな須田さんがスローニュースで読んだ、イチオシの科学ノンフィクシ

夢眠ねむが語る「食べるノンフィクションが面白い!」

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 アイドルグループ「でんぱ組.inc」メンバーとして活動した夢眠ねむさん。芸能界引退後の現在は予約制の書店「夢眠書店」、そして出版社「夢眠舎」の経営者として、自分が好きな「本」や「雑誌」に囲まれながら活躍の幅を広げています。ファンタジーやライトノベルが好きな夢眠さんがSlowNewsで気になったノンフィクションとは。 (聞き手=ライター・姫乃たま) ――今日は夢眠書店にお邪魔

TBSニュースエディター・久保田智子さんが選ぶ「この複雑な社会を通訳してくれている」SlowNews9作品

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 2000年にTBSに入社し、アナウンサーとして活躍した久保田智子さん。2016年に退職後、アメリカのコロンビア大学大学院でオーラルヒストリーを専攻し、 “人の話を聞く”取材の原点をあらためて学びました。 現在は報道記者としてTBSに復職。孫世代が祖父母に戦争体験を聞きSNSで発信する「#きおくをつなごう」プロジェクトを立ち上げるなど、取材と表現の方法を考え続けています。

監督・松居大悟が語る 「ここまでやる!」人物ルポ「現代の肖像」と「バイプレイヤーズ」の共通点

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 話題作『バイプレイヤーズ』シリーズや、今年の東京国際映画祭観客賞を受賞した『ちょっと思い出しただけ』(来年2月公開)を手掛ける映画監督の松居大悟さん。実はSlowNewsでも読める週刊誌『AERA』の人物ルポ「現代の肖像」の大ファン。2019年にはご自身も「肖像」として登場しています。SlowNewsでも読める「現代の肖像」、その魅力を語っていただきました。 松居 今日、

棋士・中村太地が語る「AI将棋の時代だからこそ読みたい『聖の青春』の魅力」

藤井聡太四冠が誕生し「藤井フィーバー」の止まらない将棋界。そして将棋ノンフィクション『聖の青春』(大崎善生・著)もSlowNewsで多くの読者を持つ大人気作品です。羽生善治と死闘を繰り広げた天才・村山聖の生涯を描いたこの作品を、中学時代以来、久しぶりにSlowNewsで読み返したという中村太地七段。その色褪せない魅力を語っていただきました。 ――9月に藤井聡太さんが叡王を獲得して「史上最年少三冠」に輝いた翌日、大崎善生さんの『聖の青春』をSlowNewsでおすすめしたところ