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おすすめノンフィクション

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毎月掲載「気になる来月のノンフィクション」をはじめ、本を紹介した記事をこちらにまとめています。
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#SlowNews

「内部告発は組織への裏切りではなく、公益のため必要なこと」今の時代にこそ読みたい、組織と告発者を取材したルポルタージュ

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 「ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか」広島県警、鹿児島県警、そして兵庫県など。いま、組織の不正を「内部告発」する動きが相次いでいます。 しかしスローニュースでも何度もお伝えしているように、「公益通報制度」がその趣旨の通りに理解されているのかと、首をかし

天安門事件から35年、歴史の分水嶺で日本外交は何を決断し、何を誤ったのか、外交機密文書から読み解く

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょう6月4日のおすすめはこちら。 天安門ファイル 極秘記録から読み解く日本外交の「失敗」35年前の6月4日に起きたのが、今の強権的な中国のルーツにもなったと言われる「天安門事件」です。 民主化要求運動に対し、人民解放軍を投入した武力による流血の鎮圧が行われた天安門事件。現場で何が

パーティー券を利用した裏金作りが6年前の本で指摘されていた!特捜検事と国会議員、両方を経験した著者だから書けたこと

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめは少し前の本ですが、いまこそぜひ紹介したいと取り上げました。 若狭は見た! 議事堂内の「清濁政治」驚きました。自民党を揺るがしているパーティー券の裏金化問題、それが6年前、2018年の本で指摘されていたのです。 その本、『若狭は見た! 議事堂内の「清濁政治」』を書い

朝ドラ『虎に翼』は調査報道がベース!『家庭裁判所物語』に描かれたまるでスタートアップばりの理想とその後

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 『家庭裁判所物語』あす4月1日から放送が始まるNHKの連続テレビ小説『虎に翼』には、ベースになった本があることをご存じでしょうか。 それがNHKの記者で解説委員の清永聡さんが著した『家庭裁判所物語』です。「物語」とありますが小説ではなく、あくまで史実に基

『親ガチャ』をどうやって乗り越えるのか?遺伝子がいかに社会的不平等を生み出すかを学ぶ

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 『遺伝と平等 人生の成り行きは変えられる』「今日の必読」は今年最後ということで、この1年出会ったノンフィクションの中からおすすめの一冊を紹介します。 『遺伝と平等 人生の成り行きは変えられる』(キャスリン・ペイジ・ハーデン著、青木薫訳、新潮社刊)が、その

「世界最強の男」井上尚弥と闘い、敗れた者たちを描くノンフィクション

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。きょうのおすすめはこちら。 怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ世界最強の男と闘うということは、どういうことなのか。 世界のボクシング界を席巻する井上尚弥と戦い、負けた男たちにリングで体感した「怪物」の強さを語ってもらう。拳を交えた者にしかわからないことを聞き、最強ボクサーの姿を

原爆を落とした後、アメリカ軍が隠したかったものとは何か 膨大な資料からその実態を読み解く

膨大なニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、長い時間をかけて国内外の資料を調べ、証言者に当たった調査報道などをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 原爆初動調査 隠された真実広島・長崎に投下された原爆。未だに解明されていない謎がいくつもあります。 「残留放射線は、どう影響したのか」 「低線量被ばくの人体への影響は」 「被爆2世への影響はあったのか」 「行方不明となっている、原爆投下2日

イラクに残された「謎の巨大湿地帯」とそこに住む人々に挑んだ「傑作」ノンフィクション

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 『イラク水滸伝』(高野 秀行著) クルマはもちろん、馬もラクダも、そして戦車も使えない。 イラク南部の巨大な湿地帯「アフワール」は、権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込むカオスそのものの土地です。 その謎の地に、冒険ノンフィクション作家

「押せるボタンをすべて押せ」 漁船沈没の謎をつきつめる調査報道『黒い海』をなぜ書くことができたのか

ノンフィクション作家 伊澤理江 「その漁船の事故、ほとんど誰も知りませんよね? そんな事故の本をいったい誰が読むんですか?」 今から2年前,2021年5月、講談社の編集者と会ったときに言われた言葉です。「誰も知らない事故」「無名の書き手」では、書籍化に難色を示すのも無理はありません。それでも私は諦めることができませんでした。 千葉県沖での漁船沈没事故の謎を追った『黒い海 船は突然、深海へ消えた』(講談社)が話題になっています。第54回大宅壮一ノンフィクション賞、第71回

調査報道のプロは、いかにして事件の深層にたどり着くのか

あのバブルはなぜ崩壊し、失われた時代を招いたのか。戦後最大のマネー敗戦となったバブルの検証のために、克明な記録を残そうと二人の新聞記者が挑んだのが『バブル経済事件の深層』(岩波新書 2019年)です。 著者の一人で朝日新聞編集委員(インタビュー時、現在は上智大学教授)の奥山俊宏さんは、調査報道で優れた実績を残してきた記者です。奥山さんに「バブルの実態」と、長年培ってきた彼ならではの取材手法などついてお聞きしました。 (聞き手:SlowNews 熊田安伸) 「バブル」をライフ

『さよなら、野口健』元マネージャーが全てを明かした前代未聞の人物ルポ

愛憎の果てにたどり着いた次世代ノンフィクションの作法「野口健との縁が切れますように」  最強の「縁切り神社」と呼び声高い京都にある安井金毘羅宮への参拝から始まる人物ノンフィクション『さよなら、野口健』。アルピニストの野口健さんの元マネージャー小林元喜さんが綴った愛憎劇を読み終えた時、自分の近くにいる恫喝上司も、ライバルのマウンティング野郎もなぜか許せる気持ちになっている…。長らく小説家を目指していた著者の小林さんが人生をかけて取り組んだノンフィクションは、いかにして完成した

分断する社会に、ノンフィクションは「人のやさしさ」に気づかせてくれた 壇蜜流 “事情マニア型” のスローニュース活用術

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 29歳でグラビアデビュー後、圧倒的な存在感で、ドラマやバラエティで活躍されてきた壇蜜さん。エッセイや小説も発表を続ける多彩な才能はどのように培われているのでしょうか。 2019年には漫画家の清野とおるさんと結婚。「互いに自立と自活をしながら、精神面でつながっている」という壇蜜さんたちは、ひとつのニュースの裏側にまで思いを巡らす事情マニアを実践されているとのこと。そこから得ら

土屋敏男さんと柳澤大輔さんが語りつくした!電波少年的ドキュメンタリーとノンフィクションの近未来

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。  日テレの名物プロデューサーとして一世を風靡し、新たな挑戦を続けている土屋敏男さん、話題になる企画・運営やバズるWEB制作を手がける「面白法人カヤック」を経営する柳澤大輔さん。二人はノンフィクションやドキュメンタリーが大好きとのこと。今回、お二人にSlowNewsを使っていただいたうえで、対談をしていただきました。 ノンフィクションを友達とシェアする価値司会 今回、我々スロ

NewsPicks副編集長・須田桃子が選ぶ「この科学ノンフィクションが面白い!」

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 現在、NewsPicks副編集長として活躍する科学ジャーナリストの須田桃子さん。新聞記者時代には世を騒然とさせた科学スキャンダルを徹底取材した『捏造の科学者 STAP細胞事件』で、第46回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞、最先端科学から科学技術政策のあり方まで、サイエンス分野を幅広く取材し続ける記者の一人です。そんな須田さんがスローニュースで読んだ、イチオシの科学ノンフィクシ