パーティー券を利用した裏金作りが6年前の本で指摘されていた!特捜検事と国会議員、両方を経験した著者だから書けたこと
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
きょうのおすすめは少し前の本ですが、いまこそぜひ紹介したいと取り上げました。
若狭は見た! 議事堂内の「清濁政治」
驚きました。自民党を揺るがしているパーティー券の裏金化問題、それが6年前、2018年の本で指摘されていたのです。
その本、『若狭は見た! 議事堂内の「清濁政治」』を書いたのが、東京地検で特捜部副部長や公安部長などを歴任し、2014年から17年にかけて衆議院議員も務めた若狭勝さんです。ご本人から話を聞いてこの事実を知りました。
お許しを得たので著書の中の「国会議員の裏金・不正はここにある」というパートから該当部分を引用します。
「政治資金パーティを巡って裏金が作られることが多い。政治資金パーティ自体、裏金を作りやすい土壌・条件がある。(中略)
その一つのパターンとしては、都道府県単位の支部や派閥主催に係る政治資金パーティである。その場合、そこに所属する議員等に販売ノルマを課した上でパーティ券を販売した議員には、販売手数料ないし功労金の名目で、主催者側から、パーティ券販売価格の一定割合額の現金がバックで渡される。パーティ券の代金授受は現金の場合があり、議員へのバックも現金で授受される。領収書のやりとりもなく、現金の授受についてはほとんど表には出ない。それが裏金として蓄積されていく」
なんと、今回の事件の構図そのままではないですか。より詳しい内容を知りたい方は、ぜひ本をお読みください。43ページ以降がこのパートです。
それにしても、一時は自民党にも所属し、Legislation(議員の立法)とLawyer(法律家)との「L字交差点」で政治を俯瞰していたという若狭さんならではの指摘ですね。こうした「驚愕実態」は、第3章に37項目にわたってつづられています。
そうであれば、指摘の中にはまだ表面化してはいないものの、今後、事件化してもおかくしない内容が含まれているのではないか。そんな視点で読み進めたところ、おっ!……お察しください。
特殊一班の七つ道具
著書の半分以上は上記の第3章で占められているのですが、第2章では若狭さんが8年間在籍した特捜部の話などもつづられています。若狭さんは政治家の汚職を主に追及する「特殊一班」に所属していました。
特殊一班は、常に政治家や国会の動向を把握する必要があり、そのための七つ道具があったといいます。
それが「国会便覧」「政治資金収支報告書」「国会議事録」「雑誌」「ネット情報」「投書」などだそうです。
なんと、「投書」を除けば全てオープンソース。特捜部もやはりOSINT(Open Source Intelligence=公開情報での調査)をやっていたということなんですね。オープンソース、大事です。そして特捜部あてに投書をすれば、目を通してくれるということです。公益通報(内部告発)を考えている方は検討してみてもいいのではないでしょうか。
それにしても七つ道具のあと一つ、「など」が何なのか、今度お会いした時に聞いてみたいと思います。(熊)
(ブイツーソリューション 2018/6/20)