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諸永裕司のPFASウオッチ

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「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)。調査報道スクープや最新の自治体や企業の動き、取材の経過などをこちらで発信していきます。(取材:諸永裕司)
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#PFAS

化学メーカーがひた隠しにする静岡の下請け作業員の検査結果を独自入手! 米指標の43倍ものPFOA血中濃度が検出されていた【デュポン・ファイル第5部④】

化学工場でPFOAを取り扱う「危険な作業」をしていた孫請けの「協力会社」の社員らが、次々とがんで亡くなっていました。PFOAとの因果関係はないのか。集中連載4回の最終回では、化学メーカーが一切公表していない下請け作業員の血液検査の数値などを明らかにします。 フリーランス 諸永裕司 やはり白血病で亡くなった夫の上司孫請け会社の社長として40年近く、三井ケマーズフロロプロダクツ(MCF)の清水工場で働いていた夫は2年前、肺がんで亡くなった。58歳だった。 それから9カ月後の

「まさか毎日の洗濯で!?」死産と超未熟児の出産を重ねた“妊娠高血圧症”の妻が、疑わざるを得ない理由とは【デュポン・ファイル第5部③】

化学工場でPFOAを取り扱う「危険な作業」をしていた孫請けの「協力会社」の社員らが、次々とがんで亡くなっていました。PFOAとの因果関係はないのか。集中連載4回の第3回では、がんで亡くなった下請けの協力会社社長の妻にも、出産に影響するある症状が出ていたことについてお伝えします。 フリーランス 諸永裕司 顔も見られず、亡くなった娘顔を見ることのできなかった娘の墓にはいまも、折を見て足を運ぶ。 <平成4年6月1日 美有 1才> 墓石にはそう彫られているが、実際には8カ月の

【スクープ静岡発】化学工場の下請け作業員は「PFOAに殺された」のか…夫の死を目の当たりした妻の苦悩【デュポン・ファイル第5部①】

国際機関から発がん性を指摘されている有機フッ素化合物、PFAS(ピーファス)。ジャーナリストの諸永裕司氏は、静岡市の化学メーカー、三井・ケマーズフロロプロダクツ(当時は三井・デュポンフロロケミカル)の工場での汚染の実態を明らかにする大量の極秘データを入手し、4月にSlowNewsでスクープとして15回にわたり報じました。 果たして汚染による被害は出ていないのか。それから半年、諸永氏は工場内でPFASの一種、PFOAを取り扱っていた、孫請けの「協力会社」の家族や工場関係者との

「これでは死んだほうが楽だとマジで思う」静岡の化学工場で“危険な作業”に従事、がんで逝った夫が残した日記【デュポン・ファイル第5部②】

化学工場でPFOAを取り扱う「危険な作業」をしていた孫請けの「協力会社」の社員らが、次々とがんで亡くなっていました。PFOAとの因果関係はないのか。集中連載4回の第2回では、協力会社の社長が残した日記から、最期の日々の言葉をお伝えします。 フリーランス 諸永裕司 肺がんを告知されてから1年の記録2年前の春、夫は58歳で逝った。肺がんだった。 直前まで、製造プラントの業務を担う協力会社の社長として、静岡市にある三井・ケマーズフロロプロダクツ(略称MCF、元三井・デュポンフ

「PFAS汚染は3年で解決できる」重要なのは国や企業トップの姿勢と訴える注目の発言

持続可能な社会へ向けて環境汚染や災害への対策を探る「地盤技術フォーラム2024」。東京・有明の東京ビックサイトで開かれた展示会には、3日間で1万人近くが足を運んだ。 そのなかに、立ち見の聴衆であふれる会場があった。 「国内外のPFAS対策最新技術について」と題された特別セミナー(9月18日)。汚染除去に向き合う一線の研究者6人が報告した。 企画に協力したのは、「PFAS対策技術コンソーシアム」。技術と海外の最新研究成果を国内の産業界や地方自治体などに普及させ、国内でPF

【重大証言】岡山での飲み水汚染の原因と指摘された企業、「推奨温度より低温で焼却」で大気汚染も拡散のおそれ

岡山県吉備中央町で発生しているPFOA(国際機関が発がん性を指摘する有機フッ素化合物の一種)による深刻な飲み水の汚染。それを引き起こした企業が、実はPFOAを含んだ活性炭を再生する際に、環境省の推奨する温度より低い温度で焼却し、PFOAが分解されないまま大気中に放出されていたおそれがあることが、元従業員など関係者の証言で明らかになった。 フリーランス 諸永裕司 飲み水の汚染源は「使用済み活性炭」9月5日、吉備中央町が委嘱した飲み水汚染の「原因究明委員会」は、汚染源について

がんで逝ったのは汚染された水を飲み続けたせいなのか…岡山県吉備中央町、全国初の自治体による血液検査を前に

8月31日午前4時すぎ、あたりはまだ薄暗かった。 和室に敷いた布団の中で、池本睦子さん(65)は目を覚ました。襖をはずして隣り合う八畳間のベッドには、末期がんの夫、武志さん(65)が横になっている。おはようと声をかけたが、反応がない。 あわてて2階にいる息子(42)を呼び、夫の手首に血圧計を巻いた。「E」。エラーを示す文字が出て、計測不能という。もう一度試すが、変わらない。口元に耳を近づけると、もう息づかいは聞こえなかった。 1カ月前、がんの進行度を示す腫瘍マーカーは正

実は絞り込まれていた千葉、神奈川の「汚染源」…自治体研究所のPFAS調査はなぜ黙殺されたのか

「汚染源の99%はわからない」 環境省がこうした見解を示すなか、興味深い動きがあった。 千葉県が7月末、周辺の川や井戸から高濃度のPFAS(有機フッ素化合物)が検出されている海上自衛隊・下総航空基地(千葉県柏市)に立ち入り検査をした。 県環境生活部は「PFOS・PFOAの使用履歴があるかどうかを、流域にあるすべての事業所に聞いている」と言い、対象となる約50カ所の一つと説明するが、基地が汚染源である可能性はきわめて高い。 「汚染源」は17年前から絞り込まれていたじつは、

発がん性が指摘されるPFASの除去技術を実用化へ、静岡市が企業と提携!でも費用はだれが負担する?

PFASを除去する技術とは8月21日、東京・品川にあるホテルで記者会見が開かれた。そこで流れたプレゼンテーション動画で、次のようなメカニズムが紹介された。 PFAS(有機フッ素化合物)に汚染された水が入った水槽で、薬品を入れて、加圧と減圧を繰り返す。やがて微細な泡(ナノバブル)ができ、PFASを分離させる。まもなく、PFASを吸着した泡が水面に浮かび上がる。その泡をかき集めて取り除く。こうして約80パーセントのPFASを除去することができたという。 実験は、「ウォーターア

広がる「PFAS汚染列島」…行政が動かない中、市民が独自の調査で解明も

PFAS汚染地域の代表が一堂に「PFAS汚染列島」の現実をあらためて印象づけられた。 8月17日に開かれた「PFASオンライン全国交流集会」。 南は沖縄から北は青森まで、PFAS汚染が確認された場所のうち、17地域の代表が汚染の現状や取り組みの内容などについて報告した。大規模な血液検査を実施するなどしてきた「多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS) 汚染を明らかにする会」が主催した。 汚染源は全国各地で見つかっているが、「PFOS」が高濃度で検出されていれば基地(米軍また

データ不足が問題なのに「血液検査はかえって不安を」と後ろ向きな環境省。PFAS対策の「戦略」はどこへ

水道水のデータは3年前、川や地下水は2年前21世紀型の公害である有機フッ素化合物(PFAS)汚染をめぐっては、飲み水に含まれる基準を決めるにあたっても、体内に摂取できる量を設けるにあたっても再三、データ不足が指摘されている。 全国的な汚染の広まりを受けて、環境省がPFAS対策の司令塔となる組織を立ち上げたのは昨年1月。「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」には、16人の専門家が名を連ねている。 8月1日に開かれた会議で、環境省はこの1年半の取り組みについて説明した。一

原爆製造にも使われていた「テフロン」開発した科学者は36年前に初来日した際、何を語ったのか

二つの原爆が投下されてから79年になる。 長崎に落とされた原爆の製造に関わっていたのが、いまやPFAS汚染の代名詞ともいえる米大手化学メーカーのデュポンだった。その過程では、直前に発見されたフッ素樹脂の「テフロン」も使われたという。 戦後、民生品に欠かせない物質としてデュポンの経営を支える生命線となったテフロンは、のちに深刻な健康被害や環境汚染を引き起こすことが明らかになり、21世紀には経営を脅かす爆弾へと変わった。 日本を訪れていた「テフロン」開発者「魔法の物質」の発

自衛隊基地の専用水道のPFAS汚染、厚労省が報告求めるよう通知。知られざる実態が今秋にも判明へ

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あの自衛隊基地の専用水道から高濃度PFASを検出、隊員にペットボトル配布の異例事態に!防衛省が全国の基地で水質検査へ

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