スポーツ新聞記者を徹底的に抱き込んだジャニーズの「メディアコントロール」戦略
新聞は、テレビや出版社と比べれば、ジャニーズ事務所との関係はそこまで深くはないと世間的には思われがちだ。
しかし連載第1回「朝日新聞社内でジャニーズ報道を仕切る『ジャニ担』の影響力」、第2回「『嵐』大型企画で深まった朝日新聞とジャニーズの『広告ビジネス』」で明らかにしたように、実情は違う。
「ジャニ担」のベテラン記者が「忖度」記事を書いてジャニーズに配慮を重ねる一方で、新聞広告で人気グループの大型広告企画が組まれたり、系列出版社の週刊誌でジャニタレを表紙グラビアに起用して売り上げアップに繋げたりすることで、新聞社のビジネスとしても多大な恩恵を受けている実態が見えてきた。
スポーツ紙とジャニーズの「癒着」関係
そんな新聞メディアの中でも、これまで見てきた朝日新聞などの全国紙と比べると、もっと露骨な形で、時に「ジャニーズ広報」と言っても過言ではない機能を果たしてきた媒体がある。スポーツ新聞だ。
ジャニーズとの関係は、「はっきり『癒着』と言えるレベル」とスポーツ紙の関係者たちは口を揃える。それは具体的にどんなものだったのか。
ジャニーズ取材歴がある元スポーツ紙記者が取材に応じた。
「スポーツ各紙でやっているジャニーズ関連の連載はどうなるだろうとか言われています。しかし、まず打ち切られることはなさそうです。忖度しますから」
国連人権理事会の「ビジネスと人権の作業部会」も調査に乗り出すなど、ジャニー喜多川氏による性加害は社会問題化している。しかし、スポーツ紙では相変わらず、ジャニーズタレントの公演やイベントなどを紹介する通常記事は変わらず日々掲載されている。
「ジャニ担」と「B担」
たとえば、7月時点では、スポーツニッポンで「ベストショットJr.」(月2回連載)、日刊スポーツで「Saturday ジャニーズ」(毎週土曜)、デイリースポーツでは関西ジャニーズの関ジャニ∞、ジャニーズWEST、なにわ男子などを取り上げる「関西ジャニーズ 未来万博」(月1回連載)などがある。
各紙ともウェブ版では、芸能ページの中にジャニーズ特集ページをつくっている。熱心なファンが多い宝塚などと並んでジャニーズ記事を有力コンテンツと位置付けているのが一目でわかる。
「今後もスポーツ紙のジャニーズ事務所との向き合い方にほとんど変わりはなさそうです」と、さきの記者は指摘する。
スポーツ紙にとってジャニーズが振りまく話題は欠かせない要素であり続けてきた。別の元スポーツ紙記者が解説する。
「スポーツ紙では、芸能界で最も政治力がある大手事務所のバーニングを担当する記者(通称B担)と並び、ジャニ担の記者を最重要ポジションと位置付けてきました。バーニング、ジャニーズ、どちらも記事となるネタを提供してくれる得意先だからです」
副社長が「デスク」のように記者に指示
この記者には「忘れられない光景がある」と、12年前の出来事を振り返る。
東日本大震災に見舞われた直後、2011年3月29日にジャニーズが立ち上げた復興支援プロジェクト「Marching J」でのことだ。「あなたと一緒に歩いていく」という意味の行進(March)と震災発生の3月(March)を掛け、ジャニーズ(Johnny's)とJapanの頭文字を取り、ジャニー氏が命名したものだ。
会場の東京・代々木第一体育館前の広場で4月1日から3日間にわたってジャニーズタレント全員が参加する形で、被災地への募金イベントを行った。ジャニー氏も姿を見せる中、現場を仕切っていたのは広報責任者で現在はジャニーズ副社長も務める白波瀬傑氏だったという。
当時は芸能記者としての経験が浅かったという記者は、現場で驚いたという。
「イベント規模の大きさにも圧倒されたのですが、何よりショックを受けたのは、白波瀬氏の号令下で動き回る記者やカメラマンの姿でした」