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諸永裕司のPFASウオッチ

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「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)。調査報道スクープや最新の自治体や企業の動き、取材の経過などをこちらで発信していきます。(取材:諸永裕司)
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2024年8月の記事一覧

発がん性が指摘されるPFASの除去技術を実用化へ、静岡市が企業と提携!でも費用はだれが負担する?

PFASを除去する技術とは8月21日、東京・品川にあるホテルで記者会見が開かれた。そこで流れたプレゼンテーション動画で、次のようなメカニズムが紹介された。 PFAS(有機フッ素化合物)に汚染された水が入った水槽で、薬品を入れて、加圧と減圧を繰り返す。やがて微細な泡(ナノバブル)ができ、PFASを分離させる。まもなく、PFASを吸着した泡が水面に浮かび上がる。その泡をかき集めて取り除く。こうして約80パーセントのPFASを除去することができたという。 実験は、「ウォーターア

広がる「PFAS汚染列島」…行政が動かない中、市民が独自の調査で解明も

PFAS汚染地域の代表が一堂に「PFAS汚染列島」の現実をあらためて印象づけられた。 8月17日に開かれた「PFASオンライン全国交流集会」。 南は沖縄から北は青森まで、PFAS汚染が確認された場所のうち、17地域の代表が汚染の現状や取り組みの内容などについて報告した。大規模な血液検査を実施するなどしてきた「多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS) 汚染を明らかにする会」が主催した。 汚染源は全国各地で見つかっているが、「PFOS」が高濃度で検出されていれば基地(米軍また

データ不足が問題なのに「血液検査はかえって不安を」と後ろ向きな環境省。PFAS対策の「戦略」はどこへ

水道水のデータは3年前、川や地下水は2年前21世紀型の公害である有機フッ素化合物(PFAS)汚染をめぐっては、飲み水に含まれる基準を決めるにあたっても、体内に摂取できる量を設けるにあたっても再三、データ不足が指摘されている。 全国的な汚染の広まりを受けて、環境省がPFAS対策の司令塔となる組織を立ち上げたのは昨年1月。「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」には、16人の専門家が名を連ねている。 8月1日に開かれた会議で、環境省はこの1年半の取り組みについて説明した。一

原爆製造にも使われていた「テフロン」開発した科学者は36年前に初来日した際、何を語ったのか

二つの原爆が投下されてから79年になる。 長崎に落とされた原爆の製造に関わっていたのが、いまやPFAS汚染の代名詞ともいえる米大手化学メーカーのデュポンだった。その過程では、直前に発見されたフッ素樹脂の「テフロン」も使われたという。 戦後、民生品に欠かせない物質としてデュポンの経営を支える生命線となったテフロンは、のちに深刻な健康被害や環境汚染を引き起こすことが明らかになり、21世紀には経営を脅かす爆弾へと変わった。 日本を訪れていた「テフロン」開発者「魔法の物質」の発

工場から出る「白い煙」の正体とは!?「あまりの高濃度」で封印された大気汚染データが発覚!【スクープ連載『デュポン・ファイル』動画編③】

静岡市の化学メーカーの工場の周辺で、排水が流れるはずがない場所がなぜ“毒の水”とも呼ばれるPFASに汚染されていたのか。住民が目撃した工場から上がる「白い煙」の正体は何だったのか――。 入手した膨大なデータ『デュポン・ファイル』を分析したところ、その背景が浮かび上がってきました。 専門家は、「排水」だけでなく、「排気」でも周囲に影響を与えていたことを指摘しています。 さらに会社はPFASを取り除くための対策を施したものの、失敗が相次いでいたことが資料から明らかになりまし