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メディアの現在地

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存亡を賭けた事態に直面している伝統的メディアと、プラットフォーマーなどの新興メディア。それぞれが抱える様々な問題や、新たな取り組みについての報道をまとめています。(ジャニーズとメ…
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#ノンフィクション

大阪社会部から傑作ノンフィクションを連続して生み出した敏腕デスクの記事に最後でひっくり返った

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 バズり記事の裏側は? ダメ出し続けたデスクの真意すごいデスクがいるものです。 ここ数年、共同通信の記者が書いた本が立て続けに話題になっています。 『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社) 『ある行旅死亡人の物語』(毎日新聞出版) が、それです。

「ミステリー小説のよう」「学術作品として読める」満場一致で受賞の『黒い海』はどのように生まれたのか

大宅壮一ノンフィクション賞など4つの賞に輝き、今年のノンフィクション界の話題を席捲している『黒い海 船は突然、深海へ消えた』(2021年2月~4月SlowNewsで『沈没』として連載)。9月14日に、第45回講談社 本田靖春ノンフィクション賞の授賞式が行われ、著者の伊澤理江さんが受賞のスピーチをしました。今回は授賞式の様子をお伝えします。 賞の贈呈にあたって挨拶したのは、講談社の野間省伸社長。このところのコロナ禍もあって3年ぶりに贈呈式を開けた喜びを述べたうえで、作品につい

「押せるボタンをすべて押せ」 漁船沈没の謎をつきつめる調査報道『黒い海』をなぜ書くことができたのか

ノンフィクション作家 伊澤理江 「その漁船の事故、ほとんど誰も知りませんよね? そんな事故の本をいったい誰が読むんですか?」 今から2年前,2021年5月、講談社の編集者と会ったときに言われた言葉です。「誰も知らない事故」「無名の書き手」では、書籍化に難色を示すのも無理はありません。それでも私は諦めることができませんでした。 千葉県沖での漁船沈没事故の謎を追った『黒い海 船は突然、深海へ消えた』(講談社)が話題になっています。第54回大宅壮一ノンフィクション賞、第71回

井上副会長様、「公共メディア」を担う気がないのならば、NHKはもう解体すべきです

井上樹彦様、ご無沙汰しています。 先ごろ、NHK幹部に返り咲き、副会長に就任されたことで、どんなふうにNHKを公共メディアに変革してくれるのかと大いに期待しておりました。 しかしながら、29日夜に配信された日本経済新聞の記事を読んで、驚愕いたしました。それによると、テキストによるニュースのネット配信を縮小する可能性を示唆したとのこと。 これが事実であれば、大変残念で、強い失望を感じます。NHKの理事を退任後、「NHKアイテック」「放送衛星システム」の社長などを務められて

べリングキャット創設者エリオット・ヒギンズと池上彰が語る「ウクライナ情勢とデジタル調査報道」

ウクライナ情勢とデジタル調査報道いま、ウクライナ侵攻で注目を集める調査報道グループ「ベリングキャット」。その記事が、2022年3月4日からSlowNewsで日本語で読めるようになりました。第一弾は、ウクライナでクラスター爆弾が使用されている実態を暴いた記事です。 これに合わせて、ベリングキャットの創設者であるエリオット・ヒギンズ氏と、彼を以前から知るジャーナリストの池上彰氏がオンラインで対談するイベントを開きました。池上氏の鋭い切り込みと、惜しみなく手法を明かすヒギンズ氏の

謎の調査集団べリングキャットの正体と「OSINT」とは NHK敏腕プロデューサーが語る

執筆:高木 徹 ベリングキャットをはじめとする世界各地のOSINT(オープンソース・インテリジェンス)を追ったNHKのドキュメンタリー、BS1スペシャル「デジタルハンター ~謎のネット調査集団を追う~」のオリジナル版としての英語版をプロデューサーとして制作し、放送したのが2020年の4月、今思えばコロナ禍の最初の波が日本を襲った頃だった。この番組はBS1や総合でも10回近く再放送されてきたので、ご覧になられた方も多いと思う。 その初回放送から2年、ベリングキャットは今回の