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終わらない戦争

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この世界から戦争が消えることはないのか。過去の戦争の今も残る傷痕や、現在も進行中の戦争に関する記事をこちらにまとめています。
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戦時下でも政権に忖度しない、ウクライナの調査報道メディアの戦いとは

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 当局による盗撮、犯人は報道で明らかに 記者の「民主主義守る戦い」「ウクライナ警察の副長官がロシアの犯罪組織のトップと強いつながりを持ち、便宜をはかられていた疑いを特報し、辞任に追い込んだ」などの調査報道を手掛けてきた、ウクライナのメディア「ビフス・インフォ

アナウンサーの言葉は時に「熱狂」を生む。それが戦時であっても…

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 アナウンサーたちの戦争アナウンサーの仕事とは、言葉によって人々に情報を伝えるものですが、その力は時に熱狂を生み、感涙させ、怒りさえ呼び起こします。そして熱狂を生んだ実況は、「名実況」として人々の記憶に長く残り、「名アナウンサー」の名が語り継がれます。 し

【接触】ロシアの極秘チームのメンバーとは何者なのか

遠隔操作で殺人をしたのは誰なのかGVCで働いている軍事エンジニアたちのバックグラウンドは多様だ。卒業後すぐ陸軍もしくは海軍で働きはじめ、後に軍事エンジニアリングの専門教育を受けた者もいれば、ITやコンピューター科学系の民間企業に勤めていてリクルートされた者もいる。 GVCでミサイルの飛翔経路プラニングを担当するチームの直接的な指揮官は、イゴール・バグニューク中佐と思われる。これはロシアの闇市場で入手した、バグニューク自身のものも含む11名のエンジニアたちの電話データの分析に

【解明】知られざるロシアの組織GVCとミサイル攻撃の関係とは

GVCとは何かロシア連邦軍の主要計算センターと、巡航ミサイルのプログラミングを結びつける公式の情報はない。 GVCの機能について、軍事関連の刊行物にはロシア軍に「ITサービス」「自動化」を提供する、という漠然とした説明しかない。歴史は古いが(ロシア連邦軍傘下のテレビ局ズヴェズダによると1963年に設立された)、現代ロシアのメディアにおいてこの部署に言及した報道はほとんどない。 珍しい例としては、2018年に軍音楽団のメンバーに授与された賞が、「ロシア連邦軍主要計算センター

【追跡】ウクライナへのミサイル攻撃を遠隔操作していたのは誰か

ロシアの攻撃は民間施設を破壊10月10日の早朝、ロシアはウクライナの複数の主要都市に激しいミサイル攻撃を行なった。ウクライナ非常事態省によると、少なくとも20人が死亡、100人超が負傷した。 わが国の巡航ミサイルは高精度だと豪語するロシア。10日の攻撃はウクライナの軍事施設・司令部および電力系統を標的にしたと主張した。 しかし、オープンソースから得られる証拠を見ると、複数のミサイルが民間施設に撃ち込まれ、住宅や幼稚園、児童公園を破壊したとわかる。 ロシアにとって侵攻開始

ロシアのQアノン、ウクライナ侵攻で内部分裂か

取材・執筆:アイガニシュ・アイダルベコヴァ 翻訳:谷川真弓 2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した数時間後、ロシアのSNSテレグラムの人気チャンネルに、平和への祈りのような、励まされるメッセージが投稿された(訳注:テレグラムのチャンネルとは、管理者が登録者に対して一方的にテキストや画像、映像などの情報を発信できる機能)。 「神よ、ロシアとウクライナをお守りください」と投稿は言う。「我々は互いに神のご加護がありますようにと祈っています。我々の罪をお許しください」

ウクライナ侵攻の口実 車両爆破は「捏造」べリングキャットが専門家と解明

ロシアのウクライナ侵攻が進行中の今となっては、真偽の疑わしい挑発行為や、やらせのような事件が開戦前に次々と報告されたことはもう忘れられているかもしれない。どれもウクライナ軍の関与をほのめかし、軍事侵略の必要性を煽り立てる意図があったようだった。たとえば、ウクライナ軍が国境を越えているところを撮影したという映像に、下水処理場の塩素消毒設備を爆破しようとするサボタージュ(妨害工作)グループの様子とされる映像など――どちらも実際にはそういうものは映っていなかった。 取材・執筆:ニ

慰霊の日に「知らなかった沖縄」について考える本

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 書き手:瀬尾傑 明仁上皇陛下が「忘れてはならない日」としてあげている6月23日が何の日か、すぐに答えられる日本人が沖縄県民以外にどれほどいるのだろうか。 1981年8月、当時皇太子だった明仁上皇陛下は、「日本では、どうしても記憶しなければならないことが4つはあると思います。終戦記念日、広島の原爆の日、長崎の原爆の日、そして6月23日の沖縄の戦いの終結の日です」と語っている

イラクで亡くなった小川功太郎さんについて

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 書き手:瀬尾傑 ちょうど17年前、2004年5月27日、ジャーナリストの小川功太郎さんが33歳の若さで取材中のイラクで殺害された。今回、その遺稿「ファルージャ突入記 憎悪と殺意と悲しみの街 」をSlowNewsに掲載をした。 なぜ、いまこの作品を読んでほしいのか。ちょっと長い話だけれど、つきあってもらえるとうれしい。 その日、功太郎さんは叔父であるベテラン戦場カメラマン