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戦時下でも政権に忖度しない、ウクライナの調査報道メディアの戦いとは

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

きょうのおすすめはこちら。

当局による盗撮、犯人は報道で明らかに 記者の「民主主義守る戦い」

「ウクライナ警察の副長官がロシアの犯罪組織のトップと強いつながりを持ち、便宜をはかられていた疑いを特報し、辞任に追い込んだ」などの調査報道を手掛けてきた、ウクライナのメディア「ビフス・インフォ」。代表のデニス・ビフスさんが、自らの名前を冠して2013年に立ち上げました。

そのビフスに衝撃が。複数のスタッフが違法薬物を使用している動画がSNSで拡散したのです。すぐにスタッフは解雇されましたが、ビフスさんはその後も対応に追われました。

しかし調査報道メディアは黙ってはいません。誰が隠しカメラを仕掛けたのか。ビフスはついに、隠しカメラを仕掛けた人物の映像を入手、テロや組織犯罪を取り締まる「ウクライナ保安局」(SBU)の職員たちであることを明らかにします。なんという取材力とジャーナリスト魂でしょうか。

ウクライナのメディアによると、SBUは盗撮に関与した職員や幹部らを解任したとのことです。

朝日新聞の記事では、このビフスのエピソードを入り口に、戦時下のウクライナにおけるメディアの状況を明らかにしています。

監視が強まり、「完全な報道の自由を保つことが難しくなっている」と訴えるジャーナリスト。

ロシアの偽情報やプロパガンダに対抗するため、ウクライナの民放4局と公営放送2局が同じ内容のニュースを流す「テレマラソン」の取り組みに対して「現政権寄りの視点しか提供していない」という批判や、メディアの多元性を失わせていると問題視する声も。

ウクライナにおいての政権とメディアの関係について、詳しくは記事をお読みいただくとして、戦時下という究極的な状況にあっても、過去の戦時下の日本のように「翼賛的」な報道一色にならず、政権に対する態度を変えず、「民主主義に貢献する」というその一点で活動するメディアが存在するというのはとても頼もしいです。

もちろん、権力監視だけがメディアの役割ではないことは言うまでもありませんが、翻って今の平和な日本にあっての私たちメディアの姿勢がどうであるのか、改めて考えさせられました。(熊)