マガジンのカバー画像

おすすめノンフィクション

35
毎月掲載「気になる来月のノンフィクション」をはじめ、本を紹介した記事をこちらにまとめています。
運営しているクリエイター

#ジャーナリズム

調査報道のプロは、いかにして事件の深層にたどり着くのか

あのバブルはなぜ崩壊し、失われた時代を招いたのか。戦後最大のマネー敗戦となったバブルの検証のために、克明な記録を残そうと二人の新聞記者が挑んだのが『バブル経済事件の深層』(岩波新書 2019年)です。 著者の一人で朝日新聞編集委員(インタビュー時、現在は上智大学教授)の奥山俊宏さんは、調査報道で優れた実績を残してきた記者です。奥山さんに「バブルの実態」と、長年培ってきた彼ならではの取材手法などついてお聞きしました。 (聞き手:SlowNews 熊田安伸) 「バブル」をライフ

『さよなら、野口健』元マネージャーが全てを明かした前代未聞の人物ルポ

愛憎の果てにたどり着いた次世代ノンフィクションの作法「野口健との縁が切れますように」  最強の「縁切り神社」と呼び声高い京都にある安井金毘羅宮への参拝から始まる人物ノンフィクション『さよなら、野口健』。アルピニストの野口健さんの元マネージャー小林元喜さんが綴った愛憎劇を読み終えた時、自分の近くにいる恫喝上司も、ライバルのマウンティング野郎もなぜか許せる気持ちになっている…。長らく小説家を目指していた著者の小林さんが人生をかけて取り組んだノンフィクションは、いかにして完成した

分断する社会に、ノンフィクションは「人のやさしさ」に気づかせてくれた 壇蜜流 “事情マニア型” のスローニュース活用術

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 29歳でグラビアデビュー後、圧倒的な存在感で、ドラマやバラエティで活躍されてきた壇蜜さん。エッセイや小説も発表を続ける多彩な才能はどのように培われているのでしょうか。 2019年には漫画家の清野とおるさんと結婚。「互いに自立と自活をしながら、精神面でつながっている」という壇蜜さんたちは、ひとつのニュースの裏側にまで思いを巡らす事情マニアを実践されているとのこと。そこから得ら

メルカリCEO山田進太郎さんに聞く「経営者はなぜノンフィクションを読むのか」

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 メルカリ創業者でCEOの山田進太郎さんは読書好きな経営者としても知られている。実はローンチ以来、SlowNewsを愛用しているという山田さんに、ノンフィクションの魅力や調査報道への関心、SlowNewsへの期待などをお聞きした。(聞き手:スローニュース 瀬尾傑) 本はコスパがめちゃくちゃいい瀬尾 山田さんは一日一冊ペースで本を買う読書家として知られています。お忙しい中、どの

立花さんの親心 /緑慎也

 立花さんはしばしば人前で涙ぐんだ。  筆者がはじめて見たのは、NHK教育で1996年9月9日に放送された「NHK人間大学 立花隆 知の現在 第11回」の中だ。同番組で立花さんは講義形式で、角栄研究、宇宙、サル学、脳死、臨死体験などそれまでの仕事を紹介したが、第11回では長期のインタビューで深い仲にあった現代音楽家、武満徹さんを取りあげた。  立花さんが突如、沈黙したのは無名時代の武満さんについて説明している途中だった。数十秒後、目に涙を溜めながら、声を絞り出すように再び

慰霊の日に「知らなかった沖縄」について考える本

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 書き手:瀬尾傑 明仁上皇陛下が「忘れてはならない日」としてあげている6月23日が何の日か、すぐに答えられる日本人が沖縄県民以外にどれほどいるのだろうか。 1981年8月、当時皇太子だった明仁上皇陛下は、「日本では、どうしても記憶しなければならないことが4つはあると思います。終戦記念日、広島の原爆の日、長崎の原爆の日、そして6月23日の沖縄の戦いの終結の日です」と語っている

知らない本、いつか読みたい本に出会える愉しさ

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 SlowNewsを愉しんでくださっているユーザーは、どんな使い方をしているのでしょうか。東洋経済新報社で、東洋経済オンラインや週刊東洋経済の編集長を歴任した山田俊浩・会社四季報センター長に聞いてみました。第一線で活躍する経済ジャーナリストは、いろんなジャンルのノンフィクションを同時に読み進めているといいます。その秘訣とは。 トップの写真は、メディアのドン、渡邉恒雄・読売新聞

イラクで亡くなった小川功太郎さんについて

※旧SlowNewsのサービス終了前の記事です。文中のリンクは現在は使えませんのでご了承ください。 書き手:瀬尾傑 ちょうど17年前、2004年5月27日、ジャーナリストの小川功太郎さんが33歳の若さで取材中のイラクで殺害された。今回、その遺稿「ファルージャ突入記 憎悪と殺意と悲しみの街 」をSlowNewsに掲載をした。 なぜ、いまこの作品を読んでほしいのか。ちょっと長い話だけれど、つきあってもらえるとうれしい。 その日、功太郎さんは叔父であるベテラン戦場カメラマン