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「災害前線報道ハンドブック」と災害関連リポート

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大災害は突然にやってきます。その時、何を取材するべきでしょうか。記者たちに的確な指示が出せるでしょうか。ありそうで存在していなかった「災害時の取材マニュアル」ジャーナリストのプレ…
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2024年2月の記事一覧

【能登半島地震 忘れられた被災地】「自宅には住めない」「水道もまだ」…新潟被災者が苦しむ『支援格差』

スローニュース 熊田安伸 頭上を覆う一面の雲。いまの季節に限らない、いつも通りの新潟の曇天だ。 時折、霰(あられ)がパラパラと舞い落ちる。寒い。思わずジャンパーの襟を合わせ直す。 新潟市の中心街から西に10キロほどの場所に、西区の「寺尾東」地区はある。そのあたりが「能登半島地震」で大きな被害を受けたと聞いた。 最寄りのJR寺尾駅からは下り坂だ。被害を受けている様子は……見当たらない。それほどでもないのか。住民の姿もほとんど見かけない。 気づくと、目の前の道路におかし

災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑤危険な場所での住宅再建をどう調べる?

スローニュース 熊田安伸 前回はハザードマップなどのオープンデータで、「避難弱者」のはずの高齢者や子どものための施設が危険に晒されている実態などを伝える手段を紹介しましたが、今回はこうした津波の浸水想定区域に住宅が再建されてしまったケースなどを検証する方法について解説します。 基本ツールは「建築計画概要書」津波の浸水などが予想される危険な場所に住宅が再建されてしまっていないか。それを調べることができるツールが「建築計画概要書」です。 建物を建てるとき、建築主は「建築確認

津波が迫るなか、人々はどう動いたか。人流データで避難行動を可視化した日経【能登半島地震コンテンツ⑧】

スローニュース 熊田安伸 元日に発生した「令和6年能登半島地震」に関するコンテンツ。「サービス・ジャーナリズム」「公共性」「可視化」などの観点から、メディアなどの発信で注目したものを、これまで7回にわたって取り上げました。 ビジュアル表現といえば、近年、際立ったコンテンツを発信してきたのが日本経済新聞。今回の震災をめぐっては、当初は目立ったものがなかったのですが、ここにきて一気に発信してきました。 漁港の「陸地化」を可視化、600枚の写真で3Dモデルも今回の特徴的な被害

地震への初動や復旧の対応は「遅れた」のか、検証した報道【能登半島地震コンテンツまとめ⑦】

スローニュース 熊田安伸 元日に発生した「令和6年能登半島地震」に関するコンテンツ。「サービス・ジャーナリズム」「公共性」「可視化」などの観点から、メディアなどの発信で注目したものを、これまで6回にわたって取り上げました。 発災から1カ月が経過し、各メディアとも初期の対応や、復旧の進捗について検証する報道が見られました。今回はそうしたコンテンツを取り上げてまとめます。 復旧の遅れを可視化した朝日新聞の報道水道や道路などの復旧が伝えられる今回の能登半島地震。では過去の災害

災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ④オープンデータで危険な場所を検証する

スローニュース 熊田安伸 津波の浸水域や土砂災害の危険区域など、いざ発災した時に危険な場所を示した「ハザードマップ」。これを使うことによって、「避難弱者である高齢者や子どもがいる施設が危険な場所にある」などが浮き彫りになってきます。今回は災害「前線」ではありませんが、未来の「前線」になる場所を事前に検証した報道の実例をご紹介します。 ハザードマップ、実は未完成洪水や土砂崩れ、津波などが発生した場合、被害が出る場所はどこか。それを地図で示したのが「ハザードマップ」です。まず

雪に弱い東京の積雪を『3つのシナリオ』で予想したウェザーニュースのグラフがわかりやすい

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 月曜午後〜火曜午前は関東で積雪 リモートワーク等の活用を今日(2月4日)現在の天気予報では、明日2月5日夜から6日朝にかけて、関東を含む広い範囲での大雪が予想されています。 特に、日頃、積雪の少ない東京は、雪が積もれば、交通の混乱が予想されるだけに、天気

被害を伝えるのに有効な可視化の方法とは。そして記録を残すことも重要【能登半島地震コンテンツ⑥】

スローニュース 熊田安伸 元日に発生した「令和6年能登半島地震」に関するコンテンツ。「サービス・ジャーナリズム」「公共性」「可視化」などの観点から、メディアなどの発信で注目したものを、これまで5回にわたって取り上げました。 今回は「サービス・ジャーナリズム」とは言えないものの、被害を可視化することによって被災地だけでなく多くの人に被災地の実情を理解してもらおうと取り組んでいるコンテンツを取り上げ、効果と課題を探りました。 どこでどんな被害が起きているか、地図に動画を連動