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災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑧避難行動を検証する

スローニュース 熊田安伸

第3章「検証フェイズ」の最後は、発災時の「避難行動」の検証です。証言を集める方法と、テクノロジーを使う方法。それぞれ報道の実例とともに紹介します。


避難行動は適切におこなわれていたのか

大災害での避難行動の検証は、非常に重要です。東日本大震災で特に大きな被害が出た宮城県石巻市の大川小学校や、岩手県釜石市の鵜住居地区防災センターについては、当時のいきさつを自治体や各メディアが詳しく検証してきました。

そもそもの避難計画や防災計画が適切だったかどうか検証する方法については、この章の第1回の「防災計画の検証」や、第3回の「大川小の悲劇はなぜ『人災』といえるのか」で取り上げた通りです。

ただ、どうしても当時の行動そのものを検証するとなると、生き残った人らの証言がベースとならざるを得ないので、地道な取材を続けるしかありません。

「正常性バイアス」の恐ろしさを検証

同じ東日本大震災で、避難行動を徹底的に検証した報道があります。

人口5600人だった宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区。ここも、津波で700人が犠牲になる大きな被害が出ました。しかし地震の発生から津波の到達までは1時間10分あったのです。避難する時間はあったはずなのに、なぜこれほどの被害が出たのか。

ここから先は会員限定です。避難行動を検証したいくつかの実例を紹介します。

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