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災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ③大川小の悲劇はなぜ「人災」といえるのか

スローニュース 熊田安伸

いざという時にどう逃げるのか、事前に避難の手順を決めておく「避難マニュアル」は様々なレベルで存在しています。前々回、「防災計画」を調べることについて述べましたが、その一部になっているケースも。「避難計画」も検証すべきもので、調査報道によって問題を明らかにした事例をご紹介します。


大川小学校は、そもそも「避難マニュアル」に問題があった

児童74人、教職員10人が津波の犠牲となった宮城県石巻市の大川小学校。東日本大震災で「悲劇の小学校」と言われた場所です。

石巻市と宮城県を相手取って、遺族19人が責任を追及した裁判では、行政の「組織的な過失」を認める画期的な判決が出ました。「学校は事前に避難場所や経路などを定める義務を怠った」としています。

では、事前にどのような避難マニュアルが用意されていたのでしょうか。大川小学校が作成した「地震(津波)発生時の危機管理マニュアル」には、津波の際の「第二次避難」の場所として「近隣の空き地・公園」と書かれていました。しかし周辺にはそれに該当する場所はなかったのです。

大川小学校の避難マニュアル

保護者への説明会で校長も、「津波の際の避難場所を把握していなかった」と述べています。

ここまでは、各社とも大きく報じました。しかしそもそも、なぜこんなマニュアルが作られることになったのか。大川小学校だけの問題としてもいいのか。そんな問題意識から、徹底的に調べようと考えた記者がいました。

ここからは会員限定です。存在しない避難場所が書かれたマニュアル、なぜそんなものが作られたのか。その原因を徹底的に調べたところ、やはり大川小だけの問題ではありませんでした。その取材手法と結果をご紹介します。

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