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【スクープ】沖縄の自民国会議員5人の政党支部が、国と契約関係にある企業から選挙直前の献金発覚、公選法違反の疑い

【10秒要点チェック】

  • 沖縄の自民党国会議員5人(1人は比例代表)が代表の政党支部が、国政選挙の直前に国と契約関係にある企業から献金を受けていた

  • 2021年までの10年で少なくとも35社から計68件。総額は2040万5000円に

  • 国と契約関係にある者が国政選挙に関する寄付(特定寄付)をすることは、公職選挙法で禁じられている

取材・執筆 フロントラインプレス


防衛省などと契約の企業が「特定寄付」の疑い

公選法に違反する「特定寄付」と思われる献金を最も多く受け取っていたのは島尻安伊子氏(衆院・沖縄3区)の計695万円、次いで國場幸之助氏(衆院・沖縄1区、比例九州ブロックで復活当選)の計610万円。献金の件数が最も多かったのは、西銘恒三郎氏(衆院・沖縄4区)の24件だった。

献金企業の契約先は、防衛省が最も多く26件。2番目は、沖縄振興局を抱える内閣府の18件。その他では、環境省、法務省がそれぞれ2件、国土交通省(海上保安庁)が1件。

これとは別に、国(内閣府)からの補助金を受け取った企業が献金したケースも2件あった。

過去にも問題になってきた「特定寄付」

公職選挙法199条は、国と「請負その他特別の利益を伴う契約」を交わしている当事者は国政選挙に関する寄付をしてはならないと規定している(特定寄付の禁止)。違反した場合は、寄付をした者も受領した者も禁錮3年以下・罰金50万円以下の刑事罰に処せられる。

違反が疑われる同様のケースは、時折、発覚している。

例えば、萩生田光一政務調査会長(指摘された当時)ら自民党幹部および閣僚らの政党支部は2021年の衆院選直前、国の公共事業の受注業者からの献金を受けていたことが昨年明らかになった。萩生田議員は報道を受けて寄付を返金している。

ただ、沖縄という一地域で選出された国会議員が揃って献金を契約業者から受け取っていたことは、同様の出来事は散発的に起きているのではなく、全国で数多くの国会議員に根深く広がっている可能性も示している。

上脇教授の監修で巨額予算が投じられる沖縄の政治とカネを検証

フロントラインプレスは、政治資金パーティーの裏金化を東京地検特捜部に刑事告発した上脇博之・神戸学院大学教授の監修を得ながら、政権与党である沖縄選出の自民党国会議員5人を対象に2012年〜2021年の10年間分の政治資金収支報告書や官公庁のオープンデータなどを分析。「自民党と企業のカネ」の関係を調べた。

この間に行われた国政選挙は計7回。衆院選が4回(2012、2014、2017、2021年)、参院選は3回(2013、2016、2017年)だった。2019年には衆院・沖縄3区の補選もあった。

調査の地域を沖縄に限定したのは、米軍用の辺野古新基地工事や北部振興など巨額の国家予算が継続的に投じられる地域であり、「自民党とカネ」の関係が見えやすいのでは、と考えたためである。また、比例復活も含め衆院小選挙区のすべてに自民党議員がいることも理由の1つだ。

名護市辺野古への新基地工事のため土砂を運び入れるトラック(2019年4月 撮影:鈴木祐太)

米軍基地内での工事をしている最中、選挙公示後に献金

では、国と契約関係にある企業からの寄付はどのように行われたのだろうか。

民主党の野田佳彦政権が倒れ、自民党の安倍晋三政権の成立につながった2012年の衆院選挙を例にとってみよう。このときは11月16日・衆院解散、12月4日・公示、12月16日・投開票というスケジュールで進んだ。

防衛省が2012年に発注した「シュワブ(H24)管理棟造成土木工事」を受注した屋部土建(沖縄県名護市)はその選挙期間中の12月6日、沖縄3区から立候補していた比嘉奈津美氏(現在は参院議員)が代表を務める自民党の政党支部に50万円を献金した。

屋部土建

沖縄3区は名護市などを軸とする選挙区。地理的には基地建設が進む辺野古地区や米海兵隊の基地「キャンプシュワブ」もすっぽりと収まっている。

屋部土建はそうした基地関係の仕事も手掛けている。

防衛省沖縄防衛局の入札契約状況調書によると、屋部土建が受注したこの「シュワブ(H24)管理棟造成土木工事」は米海兵隊基地内の工事で、契約額は約2億6827万円だった。工期は2012年11月27日から2014年3月31日まで。つまり、国との契約を履行しているさなかの企業が、選挙期間中に候補側へカネを寄付した形だ。

45億円の請負事業の実施中にも100万円の献金

一方、屋部土建には2019年にも同じ形での献金があった。

同社はこの年の1月、防衛省沖縄防衛局発注の「陸自宮古島(30)隊庁舎(C)等新築工事」を45億9000万円で落札し、請負契約を結んだ。工期は2019年1月30日から2020年3月末。その契約期間中の2019年4月3日、屋部土建は沖縄3区の衆院補欠選挙に立候補を表明していた島尻安伊子氏(補選では落選)の政党支部に100万円を寄付したのである。その6日後、4月9日は公示。投開票も4月21日に迫っていた。

この選挙は玉城デニー氏が沖縄県知事に転じたことに伴う補欠選挙で、公示前から立候補予定者は激しい舌戦を展開。島尻氏はすでに3月初旬に立候補を表明しており、この寄付が行われた4月3日は本番さながらの活動を続けていた。

島尻安伊子議員が代表を務める自民党支部(2019年4月 撮影:鈴木祐太)

フロントラインプレスは屋部土建に対し、選挙期間中に献金した理由について質問状を送ったが、回答はなかった。ただ、同社が2011年以降に、沖縄の5議員側に寄付したのは、地元の沖縄3区に関するこの2件だけ。それ以外の政治献金はなかった。

上脇教授「選挙がわかっていれば寄付は禁止」

国と契約関係にある企業が政治家側に献金する実態をどう見ればいいのか。フロントラインプレスによる今回の調査を監修する上脇博之教授は次のように言う。

「公職選挙法199条は、国と請負などの契約の当事者が衆議院の選挙や参議院の選挙に関し寄附をすることを禁止しています。これを特定寄附の禁止といいます。したがって、国と契約をしている企業は衆議院総選挙や参議院通常選挙に関し寄附することができないのです」

上脇博之・神戸学院大学教授

「条文には『選挙に関し』という条件が付されていますが、これは、選挙運動のための寄附が禁止されているという意味ではありません。衆参の国政選挙がない時には寄附は禁止されませんが、国政選挙があるとわかっていれば禁止されます。

ですから、選挙期間中に禁止されることは当然ですが、選挙期間外であっても選挙があること分かっている場合は、選挙期間前でも禁止されます。選挙後でも選挙があったことを理由に寄附することも禁止されます

公選法のこの規定はなぜ設けられているのか。上脇氏が続ける。

「国会議員は国の公共工事に関して国会で発言権があり、公共工事の有無や工事額の増減に影響を及ぼす地位にありますから、公選法は国と契約をしている企業が選挙に関し政治献金する特定寄付を禁止しているのです。にもかかわらず、沖縄では公選法が禁止する特定寄付が横行していることが今回の調査で判明しました。沖縄では企業も自民党議員側も公選法を遵守する気がないことを客観的に証明した、とても貴重な調査結果です」

現在配信中のスローニュースでは、選挙をめがけて沖縄の自民議員への献金が集中していた実態や、業者が公示前日に2人の議員に同時に献金していて、1人は公職選挙法への抵触を認め、もう1人は認めていないことなどを明らかにしている。