見出し画像

沖縄自民議員の政党支部への企業・業界献金は3億円超!しかも80%以上が選挙期間に…脱法的な“迂回献金”か

【10秒要点チェック】

  • 沖縄の自民党国会議員5人の政党支部が2021年までの11年間に集めた企業・業界献金は総額3億1190万円に上っていた

  • 政治家本人と政治団体への企業献金は法律で禁じられているが、多くは政党支部から候補者側に渡り、脱法的な“迂回献金”となっている

  • 個別のケースを調べると、選挙のない年は企業・業界献金がゼロという議員も。選挙イヤーに企業マネーが集中

取材・執筆 フロントラインプレス


総額3億円余りが選挙期間中に。そして多くは政治家側へと…

前回(2月6〜8日)の記事では、沖縄県選出の衆議院議員4人と、沖縄県ゆかりの参議院議員(比例代表)1人の受けた政治献金について、公職選挙法で禁じられた、国と契約関係にある者が国政選挙に関する寄付(特定寄付)に当たるものがないかを明らかにした。特定寄付の疑いがある献金は、少なくとも35社から総額2040万5000円に上っていることが、フロントラインプレスの調査で判明した。

今回は「特定寄付」にとらわれず、5人が代表を務める自民党支部が受け取った企業や政治団体などからの献金を1件ずつすべて調査し、企業・業界からの資金がどのようにして政治家側に流れ込んでいるのかを調べた。

その結果、2021年までの11年間に集めた企業献金は総額約2億2735万円に達し、その82.4%が国政選挙の期間に集中していた。

これとは別に、「沖縄県医師連盟」「沖縄県石油政治連盟」といった各種の業界をバックに抱える政治団体も総額8455万円を寄付しており、99.2%が選挙期間に集中していた。

この結果、企業・業界側からの献金は総額3億1190万円に達し、選挙期間への集中度は87.0%という高い割合だったことが明らかになった。

しかも、こうして集金された企業・業界側からのカネの多くは、政党支部(代表者は政治家本人)から選挙に立候補したその本人の陣営に寄付する形となっていた。

本来、企業・団体献金は禁止

1994年に実施された政治改革では、政治とカネの関係をクリーンにするためとして新しい法律をつくって政党助成金制度を導入。同時に、政治資金規正法を改正し、企業および団体(労働組合や公務員による職員組合など)が政治家本人と政治団体に寄付することを禁じた。

その際、政党・政党支部への企業団体献金は、将来の見直しを前提として禁止されずに残った経緯がある。企業・団体の献金を全廃に向かわせ、その代わりに巨額の国費を助成金として政党に渡すことで政治をクリーンにする狙いだった。

ところが、沖縄の現実はこの理念と全く異なる現実を浮き彫りにしている。

企業のカネは、寄付を禁じられた議員本人・その政治団体を避けたうえで、いわば例外的に寄付を許された政党支部に献金され、そこを経由して選挙の際に議員側にたどり着いているのだ。「政党や政党支部は寄付を受けてよい」という“抜け穴”をつくって温存。かつての政治改革の理念を根こそ骨抜きにする“迂回企業献金”が長く続いてきた。その一端が、今回の独自調査で見えてきた。

宮崎政久議員が代表を務める自民党沖縄県第二選挙区支部(企業献金可)の住所は、宮崎議員の資金管理団体「ミヤザキ政久後援会」(企業献金不可)の住所と同じだ。両方の看板が並んでいる。(2023年3月撮影 ©Google)

選挙運動を支える資金は可視化されてこなかった

しかも、政治家が選挙後に提出する選挙運動費用収支報告書では、寄付者として登場するのは「自民党●●支部」という政党支部の名称だけである。選挙に合わせて集中的に資金を提供する企業の名前は一切出てこない。選挙運動を支える資金は企業や業界がつくる政治団体からのカネであるにもかかわらず、それが可視化されてこなかった現実もある。

フロントラインプレスは自民党派閥の裏金事件をきっかけに、政治資金パーティーの裏金化を東京地検特捜部に刑事告発した上脇博之・神戸学院大学教授の監修を得ながら、沖縄の自民党国会議員を対象に政治資金の調査に取り組んでいる。

上脇博之・神戸学院大学教授

今回明らかになった「企業・業界からの献金の8〜9割が選挙期間に集中」という事実について、上脇氏は次のように指摘する。

「企業は公職の候補者個人に寄附することが政治資金規正法で禁止されています。しかし、自民党の公職の候補者は企業の利益代表であり、選挙資金を企業に頼っているので、選挙区支部長として選挙区支部で企業献金を受け取っている、つまり、選挙区支部をトンネルにして公職の候補者個人が事実上の企業献金を受け取っている、ということがこの度の調査で判明しました。予想されていたことですが、徹底した調査に基づく結果は極めて重要です」

沖縄だからこそ浮き彫りになる「自民党のカネ」

フロントラインプレスが沖縄を調査対象に選んだのは、辺野古での新基地建設や北部振興などに巨額の国家予算が継続的に投じられていることが大きい。かつ、現在は比例復活も含め衆院小選挙区のすべてに自民党議員がいることから、「自民党とカネ」の関係を象徴的に浮き彫りにできるのではないかと考えたからである。

キャンプシュワブ(2019年4月 撮影:フロントラインプレス)

対象は政治家の政党支部で、衆院議員は1区の國場幸之助氏、2区の宮崎政久氏、3区の島尻安伊子氏、4区の西銘恒三郎氏(直近の2021年10月総選挙の結果に基づく。國場氏と宮崎氏は小選挙区で敗れ、比例復活)。参院・比例代表の比嘉奈津美氏も沖縄にゆかりがあることから対象に加え、全体で5人を対象とした。

取材班は、手元で確認できる2011年〜2021年の11年間分の政治資金収支報告書、この間の国政選挙に関する選挙運動費用収支報告書、公共事業の契約状況などを調査した。

結局、企業のカネは5人にどう流れたのか。調査結果を詳しく見ていこう。

選挙のない年は企業・団体献金がゼロ!選挙イヤーに突出して資金集め

先に記したように、沖縄の国会議員5人の政党支部は2021年までの11年間で総額2億2735万円の企業献金を、医師会や産業界をバックにした政治団体からは総額8455万円を受け取っていた。

双方を合わせた総額ベースで見ると、受領額が最も多かったのは西銘氏の8474万円。最少額は宮崎氏の4101万円だった。5人の金額はそれぞれ下表のようになる(島尻氏は2016年まで参院沖縄選挙区選出。比嘉氏は2017年まで衆院沖縄3区)。

年ごとの傾向はどうだろうか。

実は議員5人は、毎年似たような額を同じように集めているわけではない。企業や業界団体をバックにした政治団体からの献金は選挙のあった年に集中し、それ以外の年は献金ゼロというケースも珍しくないのである。一例として、総額が最も少なかった2区の宮崎氏について、年ごとの状況を見てみよう。

選挙のなかった2015年、16年、18年、20年は献金がゼロだった。選挙のなかった年の最高額は2013年で、金額は90万円に過ぎない。いかに選挙の年に突出して企業や業界をバックにした政治団体から資金を集めていたかがよく分かる。

現在配信中のスローニュースでは、企業からのカネがいかに選挙時期に集中し、いかに選挙資金として使われていくかを詳報。さらに、調査対象とした沖縄選出の自民党議員5人について、各年の献金受領額や選挙期間への集中度がどの程度だったのかを示す一覧表を、ダウンロードできる形で掲載している。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!