【決定的証拠を入手】『国のお墨付き』を偽装し「がん患者」に説明した品川美容外科のエクソソーム点滴の「大ウソ」
ノンフィクション作家 伊藤喜之
全国39院を展開する大手美容外科グループの品川美容外科(品川本院・東京都港区)がステージ4のがん患者に対し、幹細胞上清液(エクソソーム点滴)を投与する「モニタリング」をしていた問題で、とんでもない大ウソの決定的証拠を入手した。
国のお墨付きがあると患者に信じ込ませた
今回、品川美容外科が患者から治療への同意を取るインフォームド・コンセント目的で作成した説明・同意書の写しを入手した。
その説明文には、「本治療は(中略)臨床研究計画書を厚生労働省へ提出した上で行われています」と記載している。しかし、実際には同省に計画書を提出しておらず、虚偽記載をしていたことがわかったのである。
事情を知る院内関係者は「『国の臨床研究』のお墨付きがあると信じ込ませて、患者から同意を容易に得ていたのです」と明かす。
複数の品川美容外科関係者によると、綿引一理事長の号令のもとで昨年からがん患者への幹細胞上清液(エクソソーム点滴)投与のモニタリングが始まった。
美容外科ががん治療に新しい方法で挑むという、この大胆なプロジェクトを持ち込んだのは幹細胞上清液の研究用試薬などを販売するバイオミメティックスシンパシーズの漆畑直樹会長だった。近年、美容医療業界の競争は激しく、新たな「売り施術」を模索していた品川美容外科にとって、うってつけのプロジェクトと見込まれた。
被験者になったのはステージ4のがん患者4人。医療スタッフの母親ら院内関係者の親族たちだった。
しかし点滴を繰り返していたところ、いずれも70代の男女2人に異変が起きた。70代女性はわずか1か月の間にがんが通常では考えにくい速さで肥大したのだ。70代男性にも肥大が見られた。
点滴前後のCTを比較し、2人について「がんの増悪がみられる」と評価した外部のがん専門医は、上清液投与とがん肥大の因果関係が否定できない限り投与は中止すべきと品川美容外科側に勧告した。
しかし、品川美容外科はその勧告をすぐには聞き入れなかった。その後もしばらく投与を続けたのである。その経緯は前回、『話題の「エクソソーム」投与で肺がんが急速肥大 中止勧告後も継続された有名美容クリニックの「極秘治療」』でスクープしたとおりだ。
専門家ならひと目でわかる不自然さ
そして、今回、そのモニタリング実施にあたって品川美容外科が患者に示し、同意のサインを得るために使った説明・同意書を手に入れた。
A4用紙4ページ分の文書で、タイトルは「幹細胞培養上清液を用いた難治性疾患に対する諸症状緩和点滴治療 説明・同意書」と記されている。
<はじめに>に、問題の記載がある。
「本治療は、医療法人社団翔友会(筆者注:品川美容外科を運営する医療法人社団を指す)倫理審査委員会の審査を経て、臨床研究計画書を厚生労働省へ提出した上で行われています。本研究の目的は、当該治療がもたらす効果、副作用、リスク等を確認することが主旨で、得られたエビデンスは国の機関に登録し、広く国民の福祉の向上に寄与することです」
はっきりと厚生労働省に臨床研究計画書を提出していると記されている。臨床研究の手続きについて知識がある患者でない限り、そのまま信じてしまうだろう。
しかし専門家ならば、一目でわかる不自然なところがある。