独立系メディアとNHKのコラボ報道でこそ見えた「アプリ」によるおぞましい性加害とプラットフォーマーの重大な責任
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
きょうのおすすめはこちら。
調査報道・新世紀 File3 子どもを狙う盗撮・児童ポルノの闇
調査報道を掲げたNHKスペシャルのシリーズ、今回のFile3は異色作にしてかつこれまでの中では最も唸らされたものでした。
テーマはSNSによる子どもへの性的搾取。前後編からなる番組の前編では、コミュニティーへの潜入取材によってどのようなグループがうごめき、性加害へとつながっているのを明らかにしています。
実はこの報道、ベースになっているものがあります。それがスローニュースでも以前取り上げた、「探査報道」を掲げるNPO法人「Tansa」によるスクープです。
この時取り上げた報道は去年10月のもので、極めて優れた報道だったので、Tansaのメンバーから報道の経緯や手法もいろいろと聞かせてもらいました。
その時にNHKとコラボする計画も聞かされ、期待して待っていたところ、半年以上たっての今回の発信となったわけです。
コラボした成果が遺憾なく発揮されたのが、後編の報道です。TansaとNHKの取材班が海外に飛び、アプリの運営者を直撃。問い詰めていきます。
見えてきたのは、やはりプラットフォーマーの重大な責任です。
こうした児童ポルノが流通される原因になっているのが、一見無害そうに見えるアプリ。それが名前を変えながら開発者から別の運営者に次々と渡っていき、責任の所在が見えなくなってしまっているといいます。
それを許しているのは、Appleなど巨大プラットフォーマーの緩い監視体制で、こうしたアプリが跋扈する事態を招いていると番組では指摘しています。
いま、詐欺広告の問題でプラットフォーマーの責任が問われていますが、児童ポルノなどを流通させている原因になっていることも、強く責任と問わなければならない問題ではないでしょうか。
それにしても、独立系メディアと広いネットワークを持つ大手メディアのコラボが有効であることを、これまでもスローニュースで紹介してきましたが、今回もその好事例だと思います。(熊)
※後編はNHKプラスで6/22(土) 午後10:49まで配信