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ペットボトルのミネラルウォーターが汚染されていたことが発覚!1年以上販売されていたが神戸市は公表せず

ミネラルウォーターのPFAS汚染、情報公開請求で発覚

市販されているペットボトルのミネラルウォーターから、水質管理のための目標値の2倍の濃度のPFASが検出されていたことがわかった。しかも、高濃度が確認されたあとも、少なくとも1年以上販売されていた。(※サムネイルの画像はイメージ)

驚くべき事実は、兵庫県明石市の市議、辻本達也さんが情報公開請求をしたことによって明らかになった。

明石市では、水源としていた明石川から高濃度のPFASが検出され、活性炭による浄化に取り組んだものの、費用がかさむことから取水源の切り替えを進めている。このため、辻本さんは汚染源についての情報を探ろうと考えた。

隣接する神戸市に、「PFASへの対応について市の担当部局と市長が協議した内容と結果がわかる文書」などを求めたところ、想定していなかった文書が出てきたという。

<有機フッ素化合物(PFAS)が検出されたミネラルウォーターへの対応について>

辻本議員の情報公開請求によって開示された文書。商品名は「白塗り」され、開示されなかった

文書に書かれた、発覚までの経緯は次のようなものだ。

2022年12月、厚労省から神戸市の食品衛生課に連絡が入った。

「神戸市内で製造するペットボトルを検査したところ、PFASが1リットル中、57.6ナノグラム検出されました」

神戸市の担当者がミネラルウォーターの製造業者に連絡したところ、事業所内にある井戸から汲み上げた地下水を商品化しているという。ただ、PFASについて認識しておらず、測定もしていなかった。

翌年1月、市がミネラルウォーターを調べてみると100ナノグラムが検出された。水源として使っている地下水からは100〜270ナノグラム、6月には94〜310ナノグラムが出た。

ミネラルウォーターの水質にはPFASについての法的な規制がない

ミネラルウォーターは食品衛生法上の「清涼飲料水」に位置づけられるが、同法ではPFASについての基準はない。

厚労省から示された「PFOS及びPFOA対応の手引き」にも、

<PFOS・PFOAは暫定目標値等が設定されていることから、継続的に摂取する水は目標値等を下回ることが望ましい>

<PFOS 及び PFOA が目標値等を超えて検出された地下水等を水源としている井戸等の設置者等に対して、PFOS 及び PFOA の特性やこれらの目標値等が設定されたことについて情報を提供する>

と書かれているにすぎず、飲み水や食品に含まれるPFASについて規制はない。

開示された文書には目標値を上回る数値を検出したことが記されていた

飲み水について定めた水道法でも、PFOSとPFOAは、水質管理のために設けられた3分類で真ん中の「水質管理目標設定項目」に位置づけられており、遵守を義務づける「水質基準項目」ではないため、市はあくまで濃度を下げるように要請することしかできないという。

市は重ねて要請したものの、業者は「活性炭を導入するつもりだが、効果検証に時間がかかる」といい、対策がとられないまま時間がすぎた。

厚労省からの通知を受けてから1年後の昨年12月、ようやくPFASを取り除くためのフィルターが井戸につけられた。その後、市は目標値の50ナノグラムを下回っていることを確認したという。

汚染された水が市場に出回っていることは公表されなかった

汚染された地下水はいつから商品に使われていたのか。どれくらいの量が、どこに出荷されていたのか。そして、肝心の商品名はなにか。いまも明らかになっていない。

辻本さんの情報公開をもとに報道されるまで、目標値を超える濃度の水が市場に出回っていることも公表してこなかった。その理由について、神戸市の丸尾登・食品衛生担当部長はこう話した。

「先日、食品安全委員会が耐容一日摂取量(許容摂取量)を示したものの、食品に含まれる量についての基準はまだありません。また、ただちに健康に影響を及ぼすとは考えづらく、法令に違反しているわけでもない。時間はかかりましたが、事業者も濃度低減の対応を取っているため公表はしませんでした」

結果として、目標値を超える濃度のPFASを含んだ水が回収されないまま売り続けられていた。

イメージ(Steve Johnson/Unsplash)

発覚のきっかけとなった調査は、厚労省が2022年に行ったものだ。ただし、対象とした商品はミネラルウォーターだけなのか、ほかにも濃度を超えた商品があったのかなど、詳細は明らかになっていない。

業務は今年度から消費者庁に移管され、食品衛生基準審査課が担当している。担当者は「お答えできるかどうか時間を頂戴したい」と話し、締め切りまでに回答はなかった。

厚労省に情報公開請求をして結果が届いたら、あらためて報告したい。

スローニュースでは水質汚染の異常値が公表されなかった岡山県吉備中央町のケースについて、なぜ当初は公表されなかったのか関係者を追及する報道をしている。

諸永裕司(もろなが・ゆうじ)

1993年に朝日新聞社入社。 週刊朝日、AERA、社会部、特別報道部などに所属。2023年春に退社し、独立。著者に『葬られた夏 追跡・下山事件』(朝日文庫)『ふたつの嘘  沖縄密約1972-2010』(講談社)『消された水汚染』(平凡社)。共編著に『筑紫哲也』(週刊朝日MOOK)、沢木耕太郎氏が02年日韓W杯を描いた『杯〈カップ〉』(朝日新聞社)では編集を担当。アフガニスタン戦争、イラク戦争、安楽死など海外取材も。横田基地の汚染などについては、6月8日の「ビデオニュース・ドットコム」でも配信。
(ご意見・情報提供はこちらまで pfas.moro2022@gmail.com

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