見出し画像

100冊程度の小さな本屋も!個性的な「独立系書店」の開業を促進するトーハンの試みへの期待

カフェやショップの一角をつかって、個性的な小さな書店を気軽にひらけるようにしたい。

街の書店がどんどんなくなっていく中、国内2大出版取次の一つである「トーハン」が、従来より大幅に少ない100冊程度の小規模な書店を開業できる取り組みを始めました。

大規模なチェーンもふくめた既存の書店がつぎつぎに閉店し、またコンビニからも雑誌の売り場がなくなる状況にあって、大きな町でも書店がない「無書店都市」が増えています。

出版文化産業振興財団の調査によると、全国の自治体のうち27.9%は書店が1店舗もありません。ゼロまたは1店しかない自治体は5割近くに上ります。社会課題ととらえた経済産業省は、今年3月、大臣直属の書店振興プロジェクトチームを設置し、書店減少の対策に取り組んでいます。

そんな中、注目されているのは、個性的な品揃えを売りにした「独立系」といわれる書店が、全国で少しづつですが増えていることです。

ただ、書店開業はハードルが高いのです。特に小さな書店をつくるのは、流通の仕組みから難しく、初期投資が大きくかかることが参入障壁になっていました。

出版流通の仕組みでは、書卸業者である出版取次を通して本を仕入れるのが一般的です。出版取次は、出版社から本や雑誌を倉庫に集約し、書店にトラックで運搬しています。ある程度の運搬量がなければ利益が出ません。小規模な書店を開きたいという人には対応できないというのが実情でした。

今回のトーハンの試みは、そうした小さな書店をつくりやすくするのが目的です。

市場の縮小が叫ばれる出版市場ですが、書店、あるいは出版社なども新規参入をするには、これまでは取次の仕組みもふくめてさまざまなハードルがありました。

独立系の小規模書店は日本だけではなく、イギリスなど海外でも注目されています。

新規参入が生まれやすい環境が整備されることは、本の世界の多様性を維持するためにも大いに歓迎したいです。

ぼく自身、「いつかはノンフィクションや好きな本を集めた小さな書店をやってみたい」というそこはかとない夢もあるので、とても期待したいニュースでした。(瀬)

このコラムは、あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしいという方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツなどをおすすめしています。

タイトル画像はトーハンのホームページから