自衛隊基地の専用水道のPFAS汚染、厚労省が報告求めるよう通知。知られざる実態が今秋にも判明へ
スローニュースのスクープで、陸上自衛隊・小平駐屯地(東京・多摩地区)や、航空自衛隊・岐阜基地(各務原市)でのPFAS汚染が次々と発覚している。
そんな中、厚労省がある通知を修正していたことがわかった。自衛隊基地など国設の専用水道(大型井戸)で目標値を超えた場合には報告するよう、改めて「念押し」する内容になっている。
これまで実態が伏せられてきた自衛隊基地内でのPFAS汚染、その全容が明らかになるとみられる。
フリーランス 諸永裕司
専用水道とは
専用水道とは、100人または1日2万リットルを超える量の水を提供する独自の水道施設(大型井戸)を指し、おもに地下水を水源としている。ただ、水道法にもとづく水質管理の規定は適用されず、汚染が確認されても飲むかどうかの判断は井戸の設置者に委ねられている。
自衛隊の基地内にある専用水道では昨年、飲み水に含まれるPFASの目標値(PFOSとPFOAの合計で1リットルあたり50ナノグラム)を超える事例が相次いだ。
陸上自衛隊・小平駐屯地(東京都小平市)では昨年8月、260ナノグラムが検出され、航空自衛隊・岐阜基地(岐阜県各務原市)でも昨年3月に85ナノグラム、同11月には55ナノグラムが検出されていたことがスローニュースの取材で明らかになった。
防衛省は、みずからが汚染源であることを示す証拠になりかねないためか、専用水道のPFAS濃度を公表していない。高濃度を検出した際、小平駐屯地は対処方法について厚労省に相談したものの、岐阜基地は報告していなかった。
消火水槽に残る高濃度の汚染水
自衛隊基地では、過去の消火訓練でPFASを含んだ泡消火剤を使ってきたため、消火水槽には高濃度のPFASを含んだ水が残っている。防衛省が2022年に全国62の自衛隊施設・地区で調べたところ、約8割にあたる48カ施設・地区にある144の消化槽で目標値を超えていた。
たとえば、陸自では宇治駐屯地(京都)で870万ナノグラム、北熊本駐屯地(熊本)で180万ナノグラムとなっているほか、海自では那覇基地(沖縄)で370万ナノグラム、岩国基地(山口)で250万ナノグラム。空自では鹿屋基地(鹿児島)で330万ナノグラム、那覇基地で160万ナノグラムとなっている。最大で目標値の174万倍が検出されているのだ。
地上にある消火水槽から高濃度のPFASが検出されたということは、訓練で使われた泡消火剤が土壌などを通じて地下水に染み込んでいる恐れがあり、地下水を汲み上げている専用水道もまた汚染されている可能性が疑われる。
スローニュースでは、なぜ厚労省が「事実上、防衛省を名指ししたも同然」の通知を行ったのか。自衛隊基地で何が起きているのか。その背景について詳しく報じています。
諸永裕司(もろなが・ゆうじ)
1993年に朝日新聞社入社。 週刊朝日、AERA、社会部、特別報道部などに所属。2023年春に退社し、独立。著者に『葬られた夏 追跡・下山事件』(朝日文庫)『ふたつの嘘 沖縄密約1972-2010』(講談社)『消された水汚染』(平凡社)。共編著に『筑紫哲也』(週刊朝日MOOK)、沢木耕太郎氏が02年日韓W杯を描いた『杯〈カップ〉』(朝日新聞社)では編集を担当。アフガニスタン戦争、イラク戦争、安楽死など海外取材も。スローニュースで『諸永裕司のPFASウオッチ』を毎週連載中。(https://slownews.com/m/mf238c15a2f9e)
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