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選挙マネー「公費の使い方」から浮かび上がる自民・共産それぞれの党派性とは

選挙ポスターの印刷や事務所看板の制作などの費用を公費で負担する公営選挙制度は、「お金のかからない選挙のため、また、候補者間の選挙運動の機会均等を図るために採用されている制度」(総務省)と言われてきた。

ただ、前回の記事でも取り上げたように、規定の限度額を使い切る候補者が続出。2021年の衆院選では、公費請求できる資格を得た候補者711人のうち、実に83人が「満額請求者」だった。

前回の記事はこちらから

全候補者の選挙運動費用収支報告書を分析した結果から浮び上がる姿からは、「お金をかけない選挙」「節税意識」は感じられない。どうしてこんなことが起きるのだろうか。「選挙運動費用データーベース」のプロジェクトを進める日本大学法学部の安野修右専任講師に、じっくりとインタビューした。

フロントラインプレス


公費請求額に見る「商店街的」「企業的」な党派性

――公費請求者のリストを見ると、「税金であっても使えるものは全部使え」とばかりに、候補者がどんどん請求している実態が透けて見えます。ただ、83人を数えた満額請求者は、自民党だけではありません。調査結果からは、どのような傾向が読み取れるのでしょうか。

安野 全ての候補者が高額請求をしているわけではありません。まずは、その点を抑えておいてください。

そのうえで、政党別の請求状況を示す表を見ると、候補者1人あたりの平均請求額は、多い方から少ない方へ「自民党→日本維新の会→立憲民主党→日本共産党」となっています。その背景には、「政党の組織構造の違い」という事情が横たわっているのでは、と考えています。

――組織構造の違い……ですか?

安野 いきなり、難しそうな話でごめんなさい。でも、重要なポイントなので続けさせてください。政党の組織運営の態様は、長らく政治学の研究テーマでした。議論の力点は「分権的な組織か」「中央集権的な組織か」です。分権的な組織構造をもつ「幹部政党(名望家政党)」は、有力政治家の連合体としての側面が強く、処罰や規律に根差す強固な基盤を持っていません。

逆に集権的な「大衆政党(組織政党)」は、支部組織による恒常的な運動の展開、党費収入や機関誌の発行といった事業活動を軸としながら、垂直的な命令系統を有しています。

前者は「商店街的」で、その典型が自民党です。後者は「企業的」で、代表例は日本共産党とされてきました。

安野修右・日大専任講師(撮影:鈴木祐太)

――確かに、自民党と共産党はそれぞれの主張だけでなく、組織のありようも対照的な気がします。

安野 そうなんです。自民党は、総裁選における議員票の優越にも示されるように、議員主導の側面が強い。また「派閥」や「党四役」のように重要な影響力を持つファクターが、出自の異なる幹部議員間で分散して保有されています。

一方、日本共産党は、『しんぶん赤旗』の事業収入や党費によって、日本の国政政党で唯一補助金(政党助成金)がなくとも組織運営が可能です。また党規違反による除名処分問題などを見ても、共産党の組織は垂直的で、かつ強力な命令系統を持っていると言えるでしょう。

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