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選挙マネーは正しく使われているのか?総選挙を前に前回衆院選すべての候補の「公費の使い方」を徹底調査!「もらえるだけもらう」がこんなにも…

石破茂首相の下で衆院が解散され、10月15日公示、同27日投開票のスケジュールで総選挙が行われることになった。衆院選は2021年10月以来3年ぶり、国政選挙としては2022年7月の参院選以来2年ぶりとなる。

国政選挙には膨大な費用が使われる。衆院選の場合、国や地方公共団体などの費用は220億〜250億円。そのなかには、候補者の選挙ポスターや候補者が出すハガキなどの印刷代を公費で肩代わりする制度もある。

ことし7月の東京都知事選ではポスター掲示場が実質的に「商業利用」されるなどの騒動が起きたことは記憶に新しいが、この公費負担の実態はどうなっているのだろうか。

選挙のカネを一発検索!2021衆院選前候補のデータをまとめたサイトはこちらから!

選挙制度と政治資金に詳しい日本大学法学部の安野修右・専任講師の研究室が2021年衆院選に出馬した全候補者を対象に調査したところ、ポスターやハガキなどの制作に関し、公費を上限いっぱいの満額で請求した候補者は、合計83人に達することがわかった。満額請求そのものは違法ではないが、少しでも安価に済ませようとする意識がほとんどないことが浮き彫りになっている。

公費「満額請求」に関する調査リポートをお届けする。

※この記事の人名や肩書などは2021年衆院選の届け出内容に基づいています

フロントラインプレス


選挙の「公費」負担額は、総額で14億円超にのぼる

今回の調査では、公営選挙制度の実態を全国レベルで明らかにするため、各都道府県の選挙管理委員会に情報公開請求を実施し、2021年衆院選の「選挙運動費用収支報告書」を落選者も含めて収集。854人分の報告書を集計・分析した。

※公職選挙法は選挙のあった日から15日以内に収支報告書を提出しなければならないと定めている。しかし、2021年の衆院選では全国の立候補者857人のうち、小笠原洋輝氏(埼玉4区、無所属)、亀井彰子氏(島根1区、無所属)、矢島秀平氏(広島3区、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)の3人は報告書を提出していない。

選挙公営制度は、資金力の有無にかかわらず選挙に立候補できる機会を設けようと、ポスター代などの一部を行政が肩代わりする狙い。対象は以下の6項目。

  1. 選挙ポスター

  2. 選挙ビラ

  3. 選挙ハガキ

  4. 選挙事務所用の看板

  5. 選挙カー用の看板

  6. 個人演説会用の看板

運用の細目は公職選挙法や関係法令、条例で定められている。

候補者は、供託金没収点(衆院小選挙区の場合は相対得票率10%以上)をクリアした場合にこれらの費用を選挙管理委員会に請求できる。

各候補が選管に提出した選挙運動費用収支報告書には、各資材の①作成単価 ②作成数 ③総額 ④業者名 ⑤業者の住所が記載されている。

そうしたデータを集計したところ、公費の負担額は全国で総額14億4382万円になった。これは2021年総選挙の『結果調』にある記述(14億4905万円)ともおおむね一致している。総選挙は1回あたりの公的経費が220億〜250億円とされており、候補者から請求される公費負担額はその10%に満たない。しかし、ポスター掲示場の設営など公営選挙を前提として支出される項目も多く、公営選挙を支える費用の割合は実際にはもっと大きい。

上限いっぱいを請求する候補が次々と

2021年衆院選で法定得票率を満たすなどして選挙運動費用の公費負担を認められた711人のデータを分析したところ、「使えるものはすべて使え」とばかりに候補者が上限いっぱいの金額を請求しているケースが続々と見つかった。ポスターやハガキ、選挙カー看板など6項目のすべてで満額請求した候補者は前出の通り83人を数えた。

具体的に見ていくと、自民党では、総務大臣として今回入閣した村上誠一郎氏(愛媛2区)や、前総務大臣の武田良太氏(福岡11区)がいる。言うまでもなく、総務省は選挙を所管する役所だ。このほか、前経済安全保障大臣で今回の自民党総裁選にも立候補した小林鷹之氏(千葉2区)、元防衛大臣の浜田靖一氏(千葉12区)、官房副長官の経験を持つ木原誠二氏(東京20区)、党選挙制度調査会長や衆院予算委員長も務めた逢澤一郎氏(岡山1区)など党の要職や閣僚を経験した顔ぶれが並んだ。

野党側にも「満額請求者」はいる。

立憲民主党では、“キングメーカー”として現在も君臨する小沢一郎氏(岩手3区)、鎌田さゆり氏(宮城2区)、この秋の党代表選に唯一の女性候補として出馬した吉田晴美氏(東京8区)らが満額請求者だった。

このほか、日本維新の会では金村龍那氏(神奈川10区)、住吉寛紀(兵庫11区)らが該当。国民民主党代表の玉木雄一郎氏(香川2区)や、れいわ新選組の多ケ谷亮氏(千葉11区、比例復活当選)らも、制度の上限いっぱいを請求した。

公費負担の上限額は選挙区内の有権者数や地域事情によって異なるため、満額請求してもその金額は選挙区によって違いが生じる。今回のケースでは、こうした候補者の請求額はおおむね250万円前後だった。

ここで満額請求者83人のうち、金額の多かった上位20人の氏名や項目ごとの金額などを一覧表で示しておこう。

ここから先は会員限定です。上位20人だけでなく、83人の全員の一覧表を公開。また、チェックできない制度の欠陥や、同じポスター代でも単価に大きな差がある実態を明らかにします。

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