東京都の補助金、1兆円が「どこにいくら渡されたか見えない」
スローニュースでは、プロジェクト「オープンデータウオッチ」を始めます。国や自治体がオープンにしているデータをもとに、税金の使われ方や事業が適正に行われているのかなどをチェックしていきますよ。まず最初に取り上げるのは、東京都の補助金です。
東京都の補助金は年間1兆8000億円の巨額
東京都がいろんなところに渡している「補助金」って年間1兆8000億円(令和4年度予算ベース)にも上る巨額だとご存じでした?もちろん、私たちの税金が原資です。都民じゃないから関係ない?いやいや、これ国の予算が東京都を通して払われているものもかなり含まれているので、元をたどれば全国の人が関係してますよ。他人事じゃないんです。
だからこそ、使い道をはっきりさせてほしいんですよね。ところが、全然わからないんです。これ、東京都にふつうに聞くと、「支出先は公開しています」って答えるんですよね。でも、それは事実じゃありません。
国の官公庁の場合、「予算執行等に係る情報の公表等に関する指針」(平成25年6月28日内閣官房行政改革推進本部事務局)のおかげで、どういう事業でどういう団体にいくらを交付したかについて、ネットで公表されるようになりました。例えば財務省ならホームページに『補助金等の交付決定についての情報の公表』とあって、そこで支出先と金額の一覧をエクセルファイルでダウンロードできます。
でも、東京都は……
自慢の「補助金サーチ」が使えない
先日、Yahoo!出身でデジタル化を推進している宮坂副知事がこんなツイートをしていました。
全国初のオープンデータ化と、華々しくうたっていますね。この「補助金サーチ」、支援を受けたい人などがどんな補助金があるのかを調べるには便利で、そのこと自体には大いに意義があります。それはいい。とってもいいんですが、東京都が支払った補助金が何に使われているか検証できるようにするという視点が欠落しているんです。見える化してない。
どこにいくら支払われるかは、一団体にだけ支払われる補助金なら支出先の名前が出ているので分かりますよ。でも複数に支払われる場合、このように「中小企業者等」としか書かれていないので、全く見えません。
過去の補助金は「出した総額さえ分かりません」
まあこれは予算ベースだから、実際に支払われた後はどこかに公表するだろう……と思うでしょ、違うんです。
去年、情報公開で「過去の支出先と金額が分かる文書」を請求したら、なんと「却下」されて、「開示請求却下通知書」なんてものが届きました。
こうしたホームページですでに公表しているから、っていうんですよね。ところがですね、実際に見てみると……
こちらもやはり支出先の数だけは出ているものの、具体的な名前が分からないものが多数。他にも、代表的な1社の名前だけ出して「他〇社」というパターンもあり、見える化していないんです。取材したところ、公表するかどうかは部局ごとに委ねられていて、完全な支出先一覧をネットで公表している事業はほんの一部でした。
補助金サーチには予算ベースでの支出先一覧があるので、開示を始めた令和4年度の内容から「1団体にだけ渡す補助金」「過去に支出先の名称と金額一覧をオープン化している補助金」を除いたところ、このままでは1兆8000億円のうち、約1兆円分がどこに渡ったか分からない状態になることが判明しました。
ただし、情報公開請求(有料)をかけると、支出先と金額は開示されます。しかしやってみたところ、開示まで1か月以上待たされることはざらですし、ワンストップ化していないので、多数の部局と交渉しなければなりません。そして、わずかですが開示しなかったケースもありました(このシリーズで取り上げます)。
情報公開課だと埒が明かないので、財政局にも取材しました。するとやはり「令和4年度以降は予算ベースでの一覧は開示することになったが、それより前は調査も大変なので作っていない。総額もわからない」とのこと。さらに決算ベースでどこにいくら支出したかを具体的な形で公表することについては、「まだ検討さえしていない」というのです……。
支出先が見えないと、正しく使われているか検証できない
もちろん、個人に直接支出しているケースで、DV被害者などの情報が洩れるとまずいという事情などもあるでしょうから、全てを公開できない場合があるのも理解はできます。しかし、それとはレベルが違う非公開ぶりです。
補助金がとんでもないところに支払われていないか、あるいはとんでもない使い方がされていないか、納税者は検証できてしかるべきですよね。宮坂副知事、ぜひその点、補助金サーチの改修をお願いします。
「オープンデータウオッチ」。東京都の補助金をさらに調べてみたところ、いろんな問題が浮かび上がってきました。現在配信中の「スローニュース」では、首都直下地震が発生した際の一時滞在施設を確保するのための補助金のうち、少なくと8億円以上がどこの企業や団体に渡ったのか不明で、無駄になってしまうかもしれない問題を、独自の調査で明らかにしています。
スローニュース 熊田安伸・岩下明日香