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教員や児童数を過大に申請「補助金もらいすぎ」東京都内の私立校が次々と発覚

スローニュース 熊田安伸・岩下明日香

プロジェクト「オープンデータウオッチ」。今回も東京都の補助金がテーマです。

補助金を交付した後になって問題が発覚し、「返還しなさい」と東京都が交付先に請求するケースがあります。しかしこれ、東京都はほんの一部しか発表していません。

今回、返還を求められたケースを、オープンデータと情報公開請求を合わせて調べてみたところ、さまざまなケースが発覚しました。このうち、私立学校に渡されている補助金で返還を求められているケースが、続々と明らかになったのです。

有名私立に渡されている高額の補助金が

実は東京都の補助金の中で、例外的に支出先の名称と金額を完全にオープン化しているものがあります。それが「私立学校経常費補助」や「私立幼稚園教育振興費補助」などです。生活文化スポーツ局のホームページからダウンロードできる資料の中で、このように校名と支出額を明らかにしているんですね。

東京都生活文化スポーツ局の公開資料より

このデータと別の資料を突き合わせて検証してみたところ、平成25年からこれまでに、少なくとも55校で過大申請などによる「もらい過ぎ」が判明し、合わせて1億3000万円余りの返還を請求される事態になっていることが分かりました。

補助金の返還を請求したかどうかは、この文書でわかる

補助金の過大申請が発覚し、返還を請求する際、東京都は「返還請求書」を作成します。これは情報公開請求で入手が可能。今回テーマにしている学校関係の補助金で、最も高額だったのは平成26年度から30年度の5年間にわたって教員数を過大に申請して、948万円余りの返還を請求された品川区の幼稚園のケースでした。

ただ、東京都は情報公開に対して、ご覧の通り学校名を全て黒塗りにして不開示としました。「法人に関する情報で運営上の地位などが損なわれる」というのがその理由ですが、税金の返還を求める重要な事案であり、なぜ学校名を伏せるのかは疑問です。

東京都の返還請求書

というのも、2019年に杉並区の商店街が同じ平成26年度から30年度の5年間に1925万円余りの補助金を不正受給したことが発覚し、返還請求をした際、このように名前を出して発表しているんですよね。

東京都のホームページより

杉並の商店街の場合は、領収書を偽造するという「不正」の度合いが強いのに対し、この幼稚園の場合は、過大申請はあくまで「過失」ということで差をつけたのかもしれません。

幼稚園を割り出して理事長兼園長に事情を尋ねたところ、平成31年度の補助金を申請した際、「幼稚園教諭として免許を更新していない人物がいる」と東京都から指摘を受けたということです。このため遡って調べると、5年度分が支給対象ではないことが判明し、返還することになったといいます。

ただ、過去に国の主要な官庁に返還命令や返還請求を情報公開請求した際には、名前が不開示になったケースは、ある一つの役所を除いて、今のところありません。(この問題、いずれ書きますね)東京都の非公開ぶりが際立っています。

私たちの税金が原資の補助金を1000万円近く過大に受け取っていたわけですから、「ミス」だとしてもあってはならないもの。東京都は納税者に開示して、二度とそのようなことが起きないように警鐘を鳴らすべき事案だと思いますがどうでしょうか。

実はこの校名の「黒塗り」、この幼稚園にコメントを求めていることから分かるように、どこの学校なのか、スローニュースは割り出すことに成功しました。どのようにして割り出したのか、そして学校側の説明はどのようなものだったのか、なぜ校名の公開が重要なのかを『東京都が「黒塗り」で非公開にした学校名、こうして割り出せる』として明らかにしています。