「いじめによる自殺」が警察庁の統計に反映されず、なんと実数の半分以下!構造的な問題を西日本新聞が指摘
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いじめ自殺、国の統計に漏れ 翌年以降の認定分を反映せず 2013年から10年間、実数の半分
おととし、国土交通省による統計不正が大きな問題になりましたが、またしてもあってはならない統計の問題が明らかになりました。
警察庁の自殺統計のうち、いじめが「原因・動機」の児童生徒の自殺について、2013年からの10年間で少なくとも小中高生44人が計上されていなかったことを西日本新聞がスクープしています。統計では子どものいじめ自殺は42人となっていたことから、半分以下しか計上されていなかったということになります。
なぜこんなことが起きたのか。その理由は、自殺の翌年以降に学校などの調べでいじめが原因と認定されたケースが統計に反映されていなかったためでした。警察庁は「統計は捜査で把握できた範囲の情報」と説明していますが、西日本新聞は、構造的な計上漏れだとしたうえで、「実態を正確に把握できていないのに有効な防止策を採ることはできない」という識者のコメントを紹介しています。
九州のブロック紙である西日本新聞が、なぜこの全国的な統計の問題に気づけたのか。それは去年の秋から「いじめ問題を追う〜防止法10年」というキャンペーン報道を展開してきたからです。スローニュースでも以前紹介しました。
今回のスクープと同時に、2017年4月にいじめを苦に自殺した長崎市の私立海星高2年の男子生徒のケースが、統計では「ゼロ」とされた遺族の嘆きの声が紹介されています。こうしたケースでの統計への疑問が、今回の取材につながったのでしょうか。
このキャンペーン報道、現在は今回のスクープのような「いじめ問題対策のエアポケット」に焦点を当てていて、先月には「未就学児がいじめ防止対策推進法の対象になっていない」問題なども取り上げています。
4月には、福岡市立のある小学校で「いじめに関するアンケート」の結果が、3年間の保存が義務付けられているにもかかわらず、一部しか保存されず破棄されていたこともスクープしています。
やはり問題が顕在化する現場は地方にあると改めて思うことになった今回の報道、この先も続けていってほしいと思います。(熊)
(西日本新聞 2024/6/3)