「いじめられた側にも謝罪させる」「町長が無断介入」いじめの現場から根底にある課題をあぶり出すキャンペーン報道
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
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福岡・筑豊の高校で下着姿の盗撮動画拡散…抗議した被害生徒にも謝罪させ不登校に
西日本新聞は「いじめ問題を追う 防止法10年」として、「いじめ防止対策推進法」の課題を考えるキャンペーン報道を展開しています。
具体的ないじめの事例を独自に追いつつ、何が問題の根底にあるのかを突き詰めて報道していくスタイルをとっていて、中にはこんな酷いことが起きているのかと目を覆いたくなるようなケースも。
筑豊地区の16歳の男子高校生のケースでは、着替え中の下着姿を盗撮されてSNSでクラスメートに拡散されるという、とんでもないいじめを受けていました。ところが学校は男子生徒と盗撮した生徒の双方による「謝罪会」を開くという首をかしげたくなるような対応。結局、いじめられた男子生徒は、ほぼ登校できない状態になっているといいます。
識者も指摘していますが、「大人の都合で終わらせようとするけんか両成敗」に見えて仕方ありません。
町長、学校に無断で介入「加害者側は知人」 福岡・吉富町のいじめ重大事態
「大人の都合」的な事例としては、こんなことも。
福岡県吉富町の女子小学生がいじめを受けたケースで、花畑明町長が学校に無断で加害側の同級生の保護者から話を聞いて、被害側の女児の保護者に話をしに行くという「不適切な介入」をしていたというのです。
町長は加害側の知人で、「穏便にすませたかった」としていますが、そんな介入をすれば、それこそいじめが無かったことになりかねない事態。女児の保護者も「問題を大きくするなと求められているように感じた」と話しているということです。
いじめ「重大事態」福岡県が初動ルール化 学校の報告書は1週間以内に
こうした一連の報道を受けてか、福岡県が新たないじめ対策に動きました。
いじめが原因で心身に重大な被害などが生じた疑いのある「重大事態」が起きた際の初動ルールを策定したということです。一報を受けたあとの情報の共有方法や、報告書の提出などについて定めています。
いじめを完全に根絶することは難しいですし、「いじめを認めたがらない学校」も各地で問題になっています。そうした中で、本質的な課題を丁寧な取材で炙り出して提示していくこのキャンペーン報道が、少しずつでも行政や教育現場を改善に向かわせていく。報道というものの一つの大事な役割も教えてくれているとも思います。(熊)