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諸永裕司のPFASウオッチ

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「永遠の化学物質」として問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)。調査報道スクープや最新の自治体や企業の動き、取材の経過などをこちらで発信していきます。(取材:諸永裕司)
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2024年9月の記事一覧

がんで逝ったのは汚染された水を飲み続けたせいなのか…岡山県吉備中央町、全国初の自治体による血液検査を前に

8月31日午前4時すぎ、あたりはまだ薄暗かった。 和室に敷いた布団の中で、池本睦子さん(65)は目を覚ました。襖をはずして隣り合う八畳間のベッドには、末期がんの夫、武志さん(65)が横になっている。おはようと声をかけたが、反応がない。 あわてて2階にいる息子(42)を呼び、夫の手首に血圧計を巻いた。「E」。エラーを示す文字が出て、計測不能という。もう一度試すが、変わらない。口元に耳を近づけると、もう息づかいは聞こえなかった。 1カ月前、がんの進行度を示す腫瘍マーカーは正

実は絞り込まれていた千葉、神奈川の「汚染源」…自治体研究所のPFAS調査はなぜ黙殺されたのか

「汚染源の99%はわからない」 環境省がこうした見解を示すなか、興味深い動きがあった。 千葉県が7月末、周辺の川や井戸から高濃度のPFAS(有機フッ素化合物)が検出されている海上自衛隊・下総航空基地(千葉県柏市)に立ち入り検査をした。 県環境生活部は「PFOS・PFOAの使用履歴があるかどうかを、流域にあるすべての事業所に聞いている」と言い、対象となる約50カ所の一つと説明するが、基地が汚染源である可能性はきわめて高い。 「汚染源」は17年前から絞り込まれていたじつは、