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「災害前線報道ハンドブック」と災害関連リポート

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大災害は突然にやってきます。その時、何を取材するべきでしょうか。記者たちに的確な指示が出せるでしょうか。ありそうで存在していなかった「災害時の取材マニュアル」ジャーナリストのプレ…
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#新潟県中越地震

なぜ被災地ではパチンコ店に行列ができるのか。そして「被災地に来てもらっては困る」人たちの正体とは『災害前線報道ハンドブック』第4章 復興フェイズ⑦

スローニュース 熊田安伸 復興フェイズの最終回です。復興が進んで行くにつれ、被災地では支援とは逆行するような、思わぬ現象が表面化することがあります。今回はいくつかの具体例を挙げていきます。 被災者がどこに行ったか分からなくなる!?最初に異変に気づいたのは、震災の取材応援でNHK名古屋放送局から派遣された記者でした。 東日本大震災の発生から1年半後の宮城県気仙沼市。市民に送ったはずの「がん検診」の申込書が、なぜか「転居先不明」として次々と気仙沼市役所に送り返されていたので

災害前線報道ハンドブック【第4章】復興フェイズ①復興の「空白地帯」を見つける

スローニュース 熊田安伸 今回から第4章「復興フェイズ」です。復興計画・復興事業のチェックは、まさに「調査報道」そのもの。拙著『記者のためのオープンデータ活用ハンドブック』とかぶるテクニックやツールも多いですが、災害報道に特化した形でご紹介していこうと思います。 復興の現場を何度も歩くと…新潟県中越地震の発生から1年が経過した2005年の小千谷市。復興予算の規模は350億円で、本来なら既にかなりの復旧工事が進んでいるはずでした。 しかし小千谷市を担当しているNHK新潟放

災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑦施設の損壊の「本当の原因」を検証する

スローニュース 熊田安伸 前回、第4章の復興フェイズに移るとお伝えしましたが、検証フェイズでまだやるべき話が残っていました。地震や津波で被災した施設や建造物がなぜ壊れたのか、その「本当の原因」を調べることも重要です。今回も実例をもとに解説します。 なぜ地震のたびに天井は落下するのか災害で被災した施設は、なぜ壊れたのか。いやいや、あれだけ大きな揺れや津波に襲われたら被害を受けて当然、などと思っていないでしょうか。しかしそこで思考停止に陥ってしまうと、本当に検証すべき大切なこ

災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ②命を守る情報がなぜ伝わらないのか

スローニュース 熊田安伸 検証フェイズの第2回は、情報伝達についてです。災害の発生時、命綱となるのがまさに情報。でも、被災者に伝わらないこともよく起きています。何が問題で、取材のポイントはどこでしょうか。 防災行政無線は本当に役に立つのか自治体が住民にいちはやく避難を呼びかけるためなどに使っている重要ツールの一つが、「防災行政無線」です。屋外にあるメガホン型のスピーカーを見たことがある人も多いと思います。 ところが、いざ災害が発生した際に、「聞こえない」というケースが多

災害前線報道ハンドブック【第2章】避難フェイズ⑥被災者や遺族への取材

スローニュース 熊田安伸 災害報道で最もハードルが高いものの一つが、被災された方や、亡くなった方の遺族などへの取材です。相手への十分な配慮が必要なことはもちろん、場合によっては取材する側のメンタルにも強く影響することがあります。どのようにするのが一番いいのか。 結論から言ってしまえば、他のあらゆる取材と同じでケースによって判断するしかないので、「答えはない」のです。とはいえ、参考になる実例はいくつもあります。今回は、そうした例を紹介したいと思います。 それまでは取材がで

「山古志にたどり着くんだ!」泥まみれになり、恐怖に耐えながら記者はなぜ山道を登ったのか…19年前に見たあの日の惨状、そして最初に伝えた言葉とは

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。 きょうのおすすめはこちら。 [新潟県中越地震19年・山古志再訪ルポ]<上>足を震わせ命がけで歩いた「あの道」 余震、土砂崩れ…激震に孤立したムラ、よみがえる惨状の記憶突然の、経験したことがない激しい揺れ。最も揺れが大きかった場所から80キロ以上離れた新潟市のオフィスにいるのに、まるで