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【スクープ】あの自衛隊基地の専用水道から高濃度PFASを検出、隊員にペットボトル配布の異例事態に!防衛省が全国の基地で水質検査へ

話題になったドラマ「VIVANT」で、自衛隊の秘密部隊として描かれた「別班」。そのモデルとなった部隊の隊員を養成する施設があるとされるのが、東京・多摩地区にある陸上自衛隊・小平駐屯地だ。

その小平駐屯地で、「専用水道」と呼ばれる大型の飲用井戸から、目標値の5倍を超える260ナノグラムのPFAS(有機フッ化化合物の総称)が検出されていたことがわかった。

PFASは国際機関から発がん性を指摘されている。基地では、隊員の安全を考慮して地下水からの取水を止め、一時はペットボトルを配布するなど異例の措置を取ったという。

今回の取材を受けた後、防衛省は全国の自衛隊基地にある専用水道の水質検査を2024年度に実施することを明らかにした。

フリーランス 諸永裕司


「陸軍中野学校の亡霊」小平学校とは?

ホームページによると、小平駐屯地内にある小平学校は「警務・会計・人事・法務・システム等の実務全般にわたる幅広い教育を担任する陸上自衛隊唯一の教育機関」陸上自衛隊唯一の教育機関だ。「国の安危を擔(にな)うべき身たるの修養」が謳われ、国を守る人材の育成が使命という。

『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』を著した共同通信編集委員の石井暁氏によれば、小平学校には、防諜部隊である情報保全隊員を養成する調査課程や、別班員などを養成する心理戦防護課程があるという。

とくに、後者の教育内容は、かつて秘密戦闘員の養成を担った「陸軍中野学校」のものと似通っており、石井氏は「中野学校の亡霊」と表現している。

自衛隊内部にある秘密組織は人気テレビドラマ「VIVAN」で描かれたことでにわかに注目を集めたが、その秘密工作員を実際に養成しているのが小平学校だ。同校を含む駐屯地内で飲まれていた水が、高濃度のPFASに汚染されていた。

石井氏によると、小平学校での訓練は数か月ごとで入れ替わるため、隊員がPFASに汚染された水を飲んでいた期間は限定的とみられる。ただ、駐屯地内には厨房があり、宿舎で暮らす隊員もいるため、長期間にわたって摂取していれば健康への影響が懸念される。

防衛省は「基地の勤務者における健康被害など、特異な事例は今のところ承知していない」として、血液検査や健康調査は予定していない。

また、毎年夏に開かれる納涼祭は、盆踊りや屋台で賑わい、一般にも開放されている。

小平学校(撮影:諸永裕司)

地下水から5倍、飲用水から4倍の濃度を検出

スローニュースでは昨年6月27日、「学校で汚染水が飲まれていた」との見出しで、東京・多摩地区にある大学や学校が所有する専用水道から高濃度のPFASが検出されていた、と報じた

同じ多摩地区にある小平駐屯地で翌月、専用水道の水質検査が行われた結果、地下水(原水)から、目標値の5.2倍にあたる、PFOSとPFOAの合計260ナノグラム、飲用水からは4倍の200ナノグラムが検出されていたのだ。

実力部隊が駐留しているわけではないものの、国民の安全を守るはずの自衛隊が、汚染された水を隊員に飲ませ続けていたことになる。

東京都は2019年から2020年にかけて、小平市を含む多摩地区の8市にある12浄水場が取水する計40本の水源井戸からの取水を止めている。そこには、小平駐屯地から約700メートル西に位置する津田2号水源も含まれる。昨年、PFOSとPFOAの合計で430ナノグラムが検出されている。

それでも、駐屯地内で高濃度のまま飲み続けられていたのは、専用水道は水道法に基づく水質管理が求められておらず、飲むかどうかの判断は井戸の設置者に委ねられているからだ。

汚染が確認されたことで、小平駐屯地のでは緊急の対応が取られることになりました。スローニュースではその詳細について詳しく報じています。


諸永裕司(もろなが・ゆうじ)

1993年に朝日新聞社入社。 週刊朝日、AERA、社会部、特別報道部などに所属。2023年春に退社し、独立。著者に『葬られた夏 追跡・下山事件』(朝日文庫)『ふたつの嘘  沖縄密約1972-2010』(講談社)『消された水汚染』(平凡社)。共編著に『筑紫哲也』(週刊朝日MOOK)、沢木耕太郎氏が02年日韓W杯を描いた『杯〈カップ〉』(朝日新聞社)では編集を担当。アフガニスタン戦争、イラク戦争、安楽死など海外取材も。スローニュースで『諸永裕司のPFASウオッチ』を毎週連載中。(https://slownews.com/m/mf238c15a2f9e
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