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報道は「中立」であれば「公平・公正」なのではない、なぜ「独立」が重要なのか、奥山教授が学生たちとの対話を交えて論考

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

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報道機関に求められる「公平・公正」は中立ではない ~Z世代と探るジャーナリズム(5)

上智大学の教授でジャーナリストの奥山俊宏さんが、テレビや新聞など、報道機関にとっての「中立」について、学生たちとともに議論した内容をなどを交えた論考を発信しています。

まず、公正・公平であることと中立であることは別の概念であり、中立なら公正・公平であるというわけではないことを明示し、中立はジャーナリズムの基本原則ではなく、「独立」こそが重要だということを指摘しています。

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そして実例としていくつもの具体的なケースを挙げています。

たとえば、ナチス支配下のドイツで、あるいは、対米開戦前後の1941年暮れの日本で、中立の報道というのはどのようなものになるのだろうか。ユダヤ人の迫害に賛成する意見と、ヒトラー総統を批判する意見を等量で扱った場合、そんな中立が公正と言えるだろうか。現在の私たちの当たり前の価値観をあてはめたとき、ユダヤ人迫害をわずかでも正当化するような言説をまともに取り上げるのは、とうてい公正とは言えないだろう。

奥山さん自身が新聞記者時代から取り組んできた調査報道についても、記者は独自の調査で事実を認定するのだから、おのずから局外中立にはいられないと述べています。

そのうえで学生たちと議論を深めていくのですが、現在のメディアを「偏向」とする批判がネット上にあふれている風潮の中で、「中立のポジションをとることで自己保身につながるのではないか」という鋭い指摘が学生の側から上がります。そして「マスメディアは中立であるべき」という考えが当然だと考えていた学生たちも思考を深め、お互いに触発されていきます。

そして最後に取り上げられているある学生の文章の一部を引用しますが、まるでプロのジャーナリストのような優れた一文であり、ぜひ記事の方で全文を読んでいただければと思います。

世の中全体の「フェアネス」という観点からすると、この番組はむしろ「不自由を強いられている人」と「究極の特権者」との間にある社会的条件の大きなひずみを調整していることになる。

「けしからん番組を取り締まる姿勢」の為政者は、日本の民主主義にとってよいものではないという指摘はまさにその通りで、何度もうなり、頷きながら読まされる論考でした。(熊)

奥山さんは東京電力・福島第一原子力発電所の事故についても発災以来、取材を続けています。去年は事故深刻化の引き金になった『扉が開きっぱなしだった』という新事実をスクープ。スローニュースではNetflixドラマ『THE DAYS』で隠れてしまった事故の真因について独自の調査に基づいて指摘しています。

(奥山俊宏note 2023/12/30)

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