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汚染水の抜本的な削減策は「断念」されていた【スクープ連載『デュポン・ファイル』第7回】

国際機関から発がん性を指摘されている有機フッ素化合物、「PFOA(ピーフォア)」。三井・デュポンフロロケミカルの清水工場(静岡市)で半世紀以上にわたって使われ、工場の内外を汚染していた。その工場内の極秘データが収められた「デュポン・ファイル」を入手。5万ファイルに及ぶ膨大な資料を紐解きながら、「地下水汚染」「排水汚染」「大気汚染」「体内汚染(従業員)」の実態を4週にわたって描く調査報道シリーズの連載第6回。

前回は汚染水が「事実上、垂れ流していた」という証言を裏付けるため極秘資料を検証。ずさんな管理により、全く処理されていない水が一般排水として流されていたことを明らかにした。一方、処理されているはずの汚染水の方にも、そもそもの処理工程に問題があったことが浮かび上がる。

フリーランス 諸永裕司


PFOA処理の工程にそのものに問題が

前回、高濃度に汚染された排水を処理しないまま、「一般排水」として工場の外に流すルートがあることを明らかにした。

一方で、PFOA(工場内の通称ではC-8)を取り除く処理が行われる排水のルートでも問題が起きていた。「デュポン・ファイル」には、処理工程に欠陥があったことが記されている。

それを理解してもうらため、清水工場でどのようにフッ素樹脂を製造していたかを簡単に説明しよう。

フッ素樹脂の原料と薬品を混ぜる「重合」という工程の際、化学反応で高熱になり、爆発する危険がある。PFOAは、その爆発を防ぐために使われる。原料を投入する水にあらかじめPFOAを加えておくと、原料が水に溶けやすくなるのだ。それによって温度の上昇を抑え、爆発を防いでいた。

「PFA & FEP 製造工程」(2009年)より。APFOとは化学変化を経てPFOAになる化学物質のこと。重合工程で使用される

出来上がったフッ素樹脂製品は、牛乳のように白濁した液状のものだ。水分を分離して乾燥させると、チーズのような塊や粉になる。清水工場では液体、粉体、固体という3種類のフッ素樹脂製品をつくっていた。

このような工程を経るため、製造に使われた排水にはPFOAが含まれている。そのままでは排出できないので専用の回収設備に送られ、PFOAを取り出していた。取り出されたPFOAにはさらに処理が施され、再利用されていた。

しかし回収設備そのものに、トラブルが起きていた。「C-8回収設備泡立ちの件について」と題された2002年のメールには、そのことが記されていた。

ここから先は会員限定です。PFOAの回収設備ではどんなトラブルが起きていたのか。そして回収設備による「抜本的削減策」は「断念」されていたことも明らかになりました。その理由とは。

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