「取材の権利は主張するけれど、聞きたいことはない」高校1年生のドルーリー朱瑛里選手に殺到する報道への疑問
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「注目されてつらい思いを…でも」ドルーリー朱瑛里をめぐる過熱報道に思うこと…異様な雰囲気だった全国女子駅伝、記者発表の舞台ウラ
1月14日に京都市で開催された全国女子駅伝大会は、脅威の19人抜きの走りを見せた田中希実選手や、高校1年生ながら8人を抜き区間5位を記録したドルーリー朱瑛里選手の活躍で盛り上がりました。
その一方、大会の直前に行われたオンラインでの記者発表での一部報道陣の異様な姿勢を、NumberWebが1月18日配信したスポーツライター・及川彩子さんの記事が取り上げています。
そもその今回の大会では、昨年の3区を走り、17人抜きで区間新を出したドルーリー朱瑛里選手に取材が殺到することが 懸念されていました。
そこで主催者側が、個別取材を禁止し、その代わりに共催社(テレビはNHK、ペンは京都新聞)が開会式、閉会式後にそれぞれ別室で代表質問をするという説明をしました。
それに対し、メディア側から「質疑応答は確実に共有されるのか」、「代表質問をする社以外も別室に入れてもらえるのか」といった質問が相次いだというのです。質疑応答のほとんどがドルーリー朱瑛里選手のものでした。
その後、全社から事前に質問を受け付けるということになったのですが、実際に質問を送ってきたメディアはわずか。ペンに関しては陸上専門誌1社、岡山の地元紙、Number、そして共催社の4社のみだったというのです。
及川さんは「我々には取材する権利がある、と言わんばかりに権利を主張する一方で、質問がないというのは矛盾しているように感じられた」と厳しく指摘します。
メディア側からすると安易に取材を規制されたくないという意識から、代表取材への質問が多かったのかもしれません。しかし、一人の高校生に取材が殺到するような状況は異常です。
先輩であり、メディアで取り上げられる機会もこれまで多かった田中選手が「私が中学生の時に区間賞を取った時はドルーリーさんほど注目されませんでした。メディアによる取り上げ方が私の時よりしんどいと思います」と、取材の圧力を心配するほどでした。
みんなが関心があるから報じるだけではなく、なぜ取材をするのか、殺到する取材は必要なのか、これまでのやり方を漫然と繰り返すのではなく、あらためて自問する必要が問われています(瀬)