30年後の公開が原則の外交文書、米側が開示しているのに黒塗りにしてしまう外務省の拙劣さ…何が書かれていたのか?
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
作成後、30年が経過したら公開されることが原則の「外交文書」。知られざる歴史の内幕を紐解く第一級の公文書です。
毎年、年末に公開され、メディア各社はそれを読み解いて記事にしています。去年の場合は、「初の天皇中国訪問」の裏側が大きな注目点で、当時の宮沢総理大臣が「ぐらぐらしている」と不満を漏らしていた外務省幹部の話なども明らかになりました。
当時の駐中国大使が報道を問題視して、共同通信の社長に「社として、天皇訪中に反対なのか賛成なのか」と直接詰め寄ったことをはじめ、読売新聞やNHKなど各社への工作の実態も明らかに。こんな露骨なメディア対策が行われていたとは驚きです。
当時は「極秘」とされてきた文書も公開されるのです。そんななか、今年になってこれはいかがなものかと、外務省の対応に首をかしげたくなる報道がありました。
北朝鮮関連、米側開示部分を外務省墨塗り 92年日米首脳会談の記録
1992年の日米首脳会談での北朝鮮に関するやり取りが記された外交文書。外務省はその内容の多くを「墨塗り」で非公開としたのです。
確かに原則30年で公開のルールがあっても、現在の外交に影響を及ぼすものは例外とされることがあります。
ところがこの記録、会談をした相手のアメリカ側だと、開示されているのです。外務省はそんなことも把握していなかったのでしょうか。そして、そんなに都合の悪いことが書かれてあったのでしょうか。
黒塗りの向こうに何が書かれてあるのか、気になりますよね。朝日新聞の記事の有料部分になりますので、ここでは明らかにできませんが、正直、「外交に影響を及ぼす」かと言われると、疑問を抱かざるを得ない内容です。
むしろ、この黒塗りの判断を誰がどういう理由で行ったのかを知りたいぐらいですね。そうだこれ、外務省に「この外交文書を黒塗りにした理由が分かる文書やメール」の情報公開請求をしてみましょうか。(熊)
(NHK 2023/12/20)
(産経新聞 2023/12/20)
(朝日新聞 2024/1/4)