【少子化対策に新観点】「奨学金の負債」が女性の結婚時期や子どもの数に影響を与えているという慶応大学の研究
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「貸与奨学金の利用は女性の結婚に負の影響を与える」 慶應義塾大、奨学金負債が若者の家族形成に与える影響を検証
貸与型奨学金の受給が、女性の結婚の時期や子どもの数に影響することを、慶応大学の研究チームが明らかにしました。
奨学金負債が若年世代に与える影響の計測は、日本だけではなく他国でも注目されています。
アメリカでは、奨学金負債者の急増につれて、滞納などが社会問題になっており、若者の就職や転職、結婚、出産、車や住宅の購入などに及ぼす影響の実証研究が数多くあります。
しかし、同様に貸与型奨学金が多い日本では、その影響についての調査は注目されていませんでした。
今回調査に取り組んだのは、慶應義塾大学経済学部附属経済研究所の王杰特任講師(教育社会学)、同学部赤林英夫教授(応用経済学)らからなる研究チームです。奨学金負債が若者の家族形成に与える影響の検証は下記です。
今回の研究では、
・貸与奨学金の利用は男性の結婚確率には有意な影響を与えていないが、女性の結婚、とりわけ 2 年制高等教育を受けた女性の結婚の時期に影響を与えていること。
・同様に、女性の「持つ子供数」、 とりわけ 2 年制高等教育を受けた女性の子供数に負の影響を与えていること。
ーーが明らかになりました。
これまで日本では貸与型が中心である奨学金が若者世代に負担になっていることが、問題になってきました。
それに加えて、日本の最大の課題である少子化対策の観点からも、奨学金制度の改善を議論していく必要があることが、今回の調査から浮き彫りになったともいえます。(瀬)