ギャング集団に監視され、マクドナルドで「奴隷労働」を強いられていた!日常の裏に潜む邪悪を暴いたBBCの調査報道
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イギリスのマクドナルドと大手スーパー、奴隷労働を見過ごす BBC調査報道
現代の「奴隷労働」は、実は身近な日常の中で人知れず起きていました。
イギリスのマクドナルドと、スーパー向けのパン製品の製造工場で、ギャング団の監視のもと、16人の被害者が「奴隷労働」とも言えるような状況で働かされていたことを、BBCが調査報道で明らかにしました。
被害者のほとんどはホームレスや何らかの依存症で、賃金のほぼ全額をギャングに奪い取られ、小屋やトレーラーハウスなどでの暮らしを強いられていたということです。逃亡した人もいましたが、探し出されて連れ帰られていたといいます。
実はこの事件自体は、ギャング集団が摘発され、有罪判決を受けているので2019年には解決済みなのです。
それをなぜいま報道するのか。BBCがこの記事で問うているのが、ギャングによる邪悪な行為以上に、マクドナルドのような企業が強制労働を知り得たはずなのに、見過ごしていたという点だからです。
被害者のうち4人の賃金が同じ口座に振り込まれ、9人が同じ住所に住んでいました。被害者たちはチェコ出身で英語も話せず、十分に「危険信号は出ていた」と指摘しています。連続30時間のシフト勤務もあったということですが、そもそもそれ自体が問題です。
過去の裁判の資料をもとに、知られざる問題の本質を深く掘り下げる。それがこの調査報道の優れたところであり、重要なポイントです。
実際、「奴隷労働」的なものは、偏在しています。
ギャングは介在しないにしても、アメリカの調査報道メディア「プロパブリカ」は移民の酪農労働者が劣悪な住環境で働かされていることや……
ミズーリ州では、障害者を極めて安い賃金で働かせることがいまだに合法のままである問題などを報じています。
また、グローバル化した労働市場では、こうした問題が起きやすいという指摘もあります。
日本でも過去に外国人技能実習生が劣悪な環境で働かされていたことなどが伝えられています。
今回のBBCによる報道は、マクドナルドのような世界的な大企業でも、人知れず「奴隷労働」のようなことが起きてしまうということに、警鐘を鳴らしています。(熊)