災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ④オープンデータで危険な場所を検証する
スローニュース 熊田安伸
津波の浸水域や土砂災害の危険区域など、いざ発災した時に危険な場所を示した「ハザードマップ」。これを使うことによって、「避難弱者である高齢者や子どもがいる施設が危険な場所にある」などが浮き彫りになってきます。今回は災害「前線」ではありませんが、未来の「前線」になる場所を事前に検証した報道の実例をご紹介します。
ハザードマップ、実は未完成
洪水や土砂崩れ、津波などが発生した場合、被害が出る場所はどこか。それを地図で示したのが「ハザードマップ」です。まずはそれについて、どんなものがあるか説明しましょう。
国が発信しているハザードマップのサイトはあります。こちらの「重ねるハザードマップ」と、「わがまちハザードマップ」が使える「ハザードマップポータルサイト」です。
「重ねるハザードマップ」の場合、住所などを指定すると、洪水・土砂災害・高潮・津波といったリスクがある場所が表示されます。例えば、私の母校である岐阜北高校の住所「岐阜市則武1811-11」で検索してみると、以下のように地図で表示されます、
複数の災害のリスクを選んで表示させられるので、洪水と土砂災害を選んでみました。(内陸なので高潮や津波は関係ありません)
一級河川の長良川がすぐ南側を流れているだけに、3~5mの洪水のリスクがあるようです。1階が水没して2階も浸水ということなので、いざとなったら3階以上か、校舎の屋上に避難すれば大丈夫ということでしょうか。(いつも3階の図書館にこもっていた私は安心ですね)金華山からは離れているので、土砂災害のリスクは無さそうです。
一方、「わがまちハザードマップ」は、自治体が作ったハザードマップが入手できるよう、掲載されている市町村のサイトに遷移する仕組みになっています。
なぜメディアがハザードマップを作るのか
ところがこの「重ねるハザードマップ」は「未完成」。実は河川の浸水想定区域を、全ては載せ切れていないのです。詳しい事情はこちらのNHKの記事で解説されています。
この記事にあるように、市町村では主に紙でハザードマップを配っているので、いざ地元ではないところで被災してもハザードマップを確認できないことや、国も十分に情報発信できていないという課題感から、NHKは自ら役に立つデジタルのハザードマップを作ってしまおうと、こちらのような発信をしています。
NHKが作ってしまったのだから、他のメディアはもう作る必要はないかというと、そうでもありません。