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警視庁、しかも公安という組織の内部音声まで入手した前代未聞のスクープが凄すぎる! NHK「“冤罪”の深層」第3弾

とてつもないものを見せられました。警察の内部で交わされている会話を記録した音声を入手した報道なんて、見たことも聞いたこともありません。しかも厚いベールに包まれ、普段の取材も難しい「公安警察」の音声だなんて。

大川原化工機をめぐる冤罪事件、NHKはこれまで2本のNHKスペシャルとETV特集などで詳しく報じてきました。これまでの報道も素晴らしいもので、調査報道大賞をはじめ、数々の賞に輝いています。

その第3弾が、1月4日に放送されました。これまでも番組は、「冤罪」が作り出されていく構造的な背景をこれでもかという内部資料と証言で積み上げてきているのですが、今回の目玉が「音声」なのです。

外事1課内部での捜査員たちの会話は衝撃的で、当初から「無理筋」の案件を無理やり事件化しようとしていたこと、そして危機感を覚えた捜査員たちが「サボタージュしよう」とまで話している内容が記録されています。

さらに音声を捜査の進展と合わせて検証。なんとしてでも立件に持っていきたい幹部たちが捜査会議で発する言葉は、「あーこれ、上司が問題の本質を曖昧にしてプロジェクトを進めようとしているなー」と会社員、組織人なら誰もが一度は経験したようなシチュエーションを髣髴とさせます。

しかし事は、誰かを犯罪者に貶めようというもの。まさに権力の暴走そのものであり、戦慄さえ覚えます。

番組を見ると、この音声記録は2024年の夏には取材班が入手していたことが分かります。半年にわたって綿密な取材を積み重ねてきたからこそ、調査報道として結実したのでしょう。そして警察組織から取材源を守りつつ、よく報道ができたものだと舌を巻きます。

番組の最後に、捜査員の1人が個人として冤罪をかけられたまま亡くなった男性の遺族に謝罪に行きます。しかし警視庁はいまだ謝罪をすることはなく、裁判は続いています。この番組をどう見るのか。それをこそ今の警察の最高幹部には聞きたいところです。(熊)

このコラムは、あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしいという方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツなどをおすすめしています。