御用邸に居座って巨額を手にした旧皇族の実像を描いたスクープは、皇位継承のあり方への「危うさ」を指摘する
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発掘スクープ 皇族首相、東久邇宮は御用邸居座りで「45億円」を手にした! 社会学的皇室ウォッチング!
東久邇稔彦(ひがしくになるひこ)という名前は歴史の教科書で知っているという人もいるのではないでしょうか。戦後に首相も務めた、旧宮家につらなる人物です。
元毎日新聞の皇室担当記者で、現在は成城大学の教授と務める森暢平さんが、その皇族首相の「ほとんど知られていないスキャンダル」を掘り起こす記事を発信しています。
この人物、皇室の財産である御用邸に居座り続け、立ち退き料として4億5000万円を手に入れたのだとか。現在の金額にすると45億円に相当する巨額だとのことです。
こうした主要なエピソードの他にも、次々と繰り広げられる破天荒な行動。「ダーティ・ロイヤル(汚れた皇族)」の姿を描いて「旧皇族が決して清廉潔白の生活を送っていたわけではない事情をよく示す」としています。資産は今も子孫に引き継がれているとか。
あえて旧宮家皇族のこうした実例を挙げている理由は、皇位継承のために自民党が皇室典範改正を視野に旧皇族の復帰を目指す案を検討しているためです。必ずしもクリーンな人物ばかりではないことから、本当に国民が受け入れられるのか。そして「品格の審査」のような人物検討が行われれば、激しい個人へのバッシングなどが起きてしまうのではないか。そんなこの案の持つ危うさを指摘しています。
坂口安吾が『堕落論』で書いたように、権謀術数のためにも大義名分のためにも天皇という存在が必要となる権力があれば、皇室復帰する人物を利用する者さえいつかは出かねないのではないか、そんなことも想像しました。(熊)
(週刊エコノミストOnline 2024/1/18)