大気汚染は過去の問題じゃない、毎年数百万人が亡くなる現実を可視化したデータビジュアライズ
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
大気がよどみやすくなる冬場、東京都をはじめ9都県市では11月から1月を「冬季大気汚染対策」実施期間として、大気汚染対策を呼びかけています。
そういえば、北京の大気汚染が最高レベルになったというニュースも出ていました。
というわけで、きょうのおすすめはこちらの3本です。
Pollution Action Note – Data you need to know(公害アクションノート~知っておくべきデータ)
世界では毎年数百万人が大気汚染が原因で亡くなっているということです。そこで国連環境計画は、さまざまな報告書や研究データをもとにダッシュボードを作って可視化しています。日本を含めた各国でどのような問題が起きているのか、それが一目瞭然になっているデータビジュアライズです。
世界人口の99% がWHOのガイドラインを満たしていない場所に住んでいるというデータはショッキングですね。それぞれの国や地域でどれだけの人が大気汚染で亡くなっているかや、国の政策についてもどこが積極的かなどが、視覚的に分かるようになっています。
Smoke, Screened: How a little-known pollution rule keeps the air dirty for millions of Americans(煙、遮断:何百万人ものアメリカ人があまり知られていない規則のせいで汚染にさらされている)
The California Newsroom、MuckRock、Guardianの共同調査によると、アメリカの環境規制当局が、法律のあまり知られていない規定を使うことで、山火事を含む自然や「制御不能な事象」による汚染を、記録から除外していたことを明らかにしています。
この問題を明らかにするために、どのようにデータを収集し、分析したのかも、別記事の形で詳しく紹介しています。冷徹な分析のその裏に、人々の健康に影響が出る状態を放置していいのかという憤りさえ感じられる骨太の調査報道ですね。
Why the haze has reached Singapore’s shores again(再びもやがシンガポールの沿岸に到達した理由とは)
インドネシアでの泥炭や森林の火災が原因で、ヘイズ(もや)が国境を越えてマレーシアやシンガポールにも流れ込み、大気質が悪化しているというシンガポールの日刊紙『The Straits Times』による報道です。
風と火災のデータを分析してもやがどこにどう到達していくかをアニメーションで可視化。これは視覚表現としてレベルが高いですね。
日本では工場や鉱山から排出される煙や光化学スモッグが大きな社会問題になったあと、様々な対策が取られてきました。ただ、大気汚染というのは越境してくるもので、世界規模で考える必要があり、これからのも不断の努力が必要だと思い知らされるそれぞれの報道でした。(熊)