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ジャニーズ性加害報道問題を戦った弁護士が書いた「メディアはなぜ報じなかったのか」

メディアはなぜジャーニー喜多川の性加害を報じなかったのか。

この問題を、週刊文春の顧問弁護士とジャーニーズ事務所と裁判で争い、勝利した喜田村洋一さんが正面から問い変える書籍「報道しないメディア ジャニーズ性加害問題をめぐって」(岩波書店刊)は、短いブックレットですが、報道に関わる人、いまの報道に疑問をもつ人には必読です。

裁判の詳細がわかる前半も興味深いですが、第二部で喜田村さんはなぜジャニー喜多川問題が報じられなかったのか、メディア側もふくめて巷間いわれている下記のような理由が本当なのかを徹底的に分析します。

  • 報道したかったが必要な事実を確認できなかったのか?

  • そもそも報道する価値があると思わなかったのか?

  • 最初に報じたのが週刊誌だったからか?

  • みんなが報道をしていないから、うちも報道しない?

  • 芸能界でおきた出来事だったからか?

  • 少年に対するハラスメントだったからか?

  • 報道すると不利益が生じるから報じなかったのか

たどり着いた結論はなにか。ブックレットなのですぐ読めますからぜひ御覧ください。

一方で喜田村さんは、「メディアの沈黙」としたジャニーズ事務所の第三者委員会報告も強く批判します。「ジャーニーズ事務所が自浄能力を発揮できなかったのか、報道がなかったかからだ」といわんばかりの姿勢はおかしいのではないのか、と。

最後に、喜田村さんはあるジャニーズメンバーが起こした事件をめぐる報道において、毅然とした態度をしめしたTBS報道局の例を引き合いに、ひとりひとりの行動に期待をします。

なにがニュースか。なにを報じるべきか。これまでの慣習や組織のルールや雰囲気に流されるのではなく、それを批判的に検証する冷徹な目を持ちながら、報道していくことこそが、重要であることを指摘します。

この短い本の中で喜田村さんは「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するつき、重要な判断の資料を提供し、国民の『知る権利』に奉仕するものである」という最高裁の認識を何度も引用します。これは政治報道だけではなく、あらゆる報道に通じている役割であり、それが報道に携わる人の責務であることをあらためて、当事者は深く認識する必要があることを確認する本です(瀬)