元自衛官・五ノ井里奈さん裁判で「ブラに触ったが体に触ったわけではない」 法廷もどよめいた元自衛官の弁明とは
スローニュース 岩下明日香
「どうして先ほどは、五ノ井さんの体を触ったことがないと言っていたのですか?」
「えっと、体ではなくスポーツブラだったからです」
法廷もざわつく奇妙なやりとり。陸上自衛隊郡山駐屯地に勤務していた元自衛官の五ノ井里奈さん(24)への強制わいせつの罪に問われている元自衛官の弁明だ。
9月25日に福島地方裁判所で開かれた5回目となる裁判で、被告人質問に立ったのは、木目沢佑輔(29)被告。しかしこうした裁判の内容は、なぜかメディアでは報じられず、被告が無罪を主張したというタイトルの記事ばかりだ。裁判で語られた証言の詳細を、スローニュースは明らかにする。
「腰を振ったかどうか」で前の裁判での証人と食い違い
事件があったのは2021年8月3日。木目沢被告は北海道矢臼別演習場の宿泊施設で、五ノ井さんに「格闘の技をかけたこと」は認めている。きっかけは、ろれつが回らないほど泥酔した上官・X1曹(懲戒免職)の言葉だったという。
弁護人:五ノ井さんに技をかけるきっかけは?
木目沢被告:X1曹と元上司(懲戒免職)が柔道の話をしている中で「首を制する者は相手を制する」という話をしていました。そこで「首ひねり、お前わかっぺ。五ノ井にかけてみろ」と言われました。
弁護人:あなたはその指示に素直に従った?
木目沢被告:いいえ、それは何度か断りました。
弁護人:断った理由は何かありますか?
木目沢被告:五ノ井さんがクレーマーだと聞いていたからです。
弁護人:クレーマーとはどういうことですか?
木目沢被告:五ノ井さんが2中隊に入ってから、五ノ井さんの同期から「五ノ井さんはクレーマーなんで気を付けてください」と聞いたことがありました。
弁護人:そういった事が理由で、技をかけたくないと断った?
木目沢被告:はい。
弁護人:最終的に五ノ井さんに対して「首ひねり」という技をかけた理由は?
木目沢被告:X1曹がしつこく言ってきたので、自衛隊では上官の言うことは絶対という環境がありましたので、断り切れず技をかけてしまいました。
弁護人:五ノ井さんに技をかけたときには、自衛隊格闘に従って正しい技をかけた?
木目沢被告:いいえ、違います。正式なやり方で技をかけると、五ノ井さんと距離が近くなってしまうので、距離を少し保った状態で技をかけました。
技をかけて五ノ井さんを2段ベッドの1段目に倒したが、「20~30㎝くらいは胸と胸の間に距離があった」とし、股間が五ノ井さんに接触したことは「絶対にありません」と、わいせつ行為を否定した。
しかし、第3回の裁判に出廷した現役自衛官は、食い違う証言をしている。
最初に別の被告が五ノ井さんに対し、「腰を振って正常位のような行為」を始めた際、木目沢被告ともう一人の被告が「次は誰がやるんだ、という会話をしていた」と証言。いったんタバコを吸いに出て戻ると、木目沢被告らしき人物が同じように腰を振っている姿を瞬間的に見た、と語っているのだ。
同じく証言に立った別の現役自衛官は、木目沢被告が五ノ井さんに覆いかぶさっている状態は目撃したが、腰を振っている様子は見ていない。
「ブラを触ったのは硬さを確かめるため」
弁護人が「五ノ井さんとは普段から話したりする関係性だったのか」と問うと、木目沢被告は、はっきりと「ありません」と答えた。職務上でも話をする機会はなかったと言い切った。
ところが、検察官による質問へ切り替わると一転する。
検察官:あなたは、五ノ井さんがクレーマーだったから技をかけるのを断ったと言っていましたね?
木目沢被告:はい。
検察官:その理由として、五ノ井さんの同期から「五ノ井さんはクレーマーなので気を付けてください」と言われたからと話していましたね?
木目沢被告:はい、そうです。
検察官:五ノ井さんが着隊したのはいつ頃?
木目沢被告:日付についてはわかりませんが、それを聞いたのは入隊して2中隊に着いてから2カ月後くらいです。
検察官:あなたとしては、そういう情報があったから、五ノ井さんへの接触には気を付けていた、というのですね?
木目沢被告:そうです。
検察官:2021年3年8月3日の事件以外にも、五ノ井さんの体を触ったことはありませんでしたか?
木目沢被告:ありません。
検察官:一度も?
木目沢被告:ありません。
検察官:2021年6月ころのことで何か思い当たることはありませんか?
木目沢被告:……はい。
検察官:なんでしょう?